JO1とサンリオで共同開発されたJOCHUM(ジェオチャム)(C)2023 SANRIO CO.,LTD. 著作(株)サンリオ
昨今、キャラクター界もさまざまな“コラボ”が当たり前となった。アーティストなど有名人はもちろん、アニメや官公庁、観光地、はたまたキャラクター同士…などなど、その幅は広がり続けている。人気上昇中のグローバルボーイズグループ・JO1とサンリオによって共同開発されたキャラクター・JOCHUM(ジェオチャム)もその一つかと思いきや、どうもその成り立ちはこれまでにないものらしい。サンリオ初のチャレンジとなった、この試みの舞台裏とは?
【画像】ちゃんとサンリオキャラになってる…! JO1と共同開発したJOCHUMの全貌
■JO1と「ゼロからキャラクターを共同開発」、タイでは人気投票3位に
今年6月、恒例の人気投票企画『2023年サンリオキャラクター大賞』で、意外なダークホースとして注目されたのが、昨年デビューしたばかりのキャラクター・JOCHUM(ジェオチャム)だ。総合14位という成績もさることながら、タイではなんと3位にランクインする快挙を果たした。このJOCHUMとは、人気上昇中の11人組グローバルボーイズグループ・JO1とサンリオが共同開発で生み出した11体のキャラクター群のチーム名だ。
アーティストとキャラクターのコラボといえば、2009年に誕生したyoshikitty(ハローキティ×YOSHIKI)が思い浮かぶ。そのほか、なにわ男子とサンリオキャラクターズのコラボや、モーニング娘。の応援キャラクターとなった『Caribadix(カリバディクス)』(がおっきー)など、アーティストと既存のキャラクターを掛け合わせた企画はこれまでもさまざま行われてきた。
JOCHUMがそれらとまったく違うのは、JO1のメンバーがそれぞれ自分の分身的なキャラクターを考案し、サンリオのデザイナーと意見交換をしながら「ゼロからキャラクターを共同開発」したという点だ。
「まずはメンバーのみなさんに『自由にキャラクターを考えてください』とお願いするところからスタートしました。正直、どんなものが上がってくるかドキドキしましたし(笑)、おそらくデザイナーが最初から最後まで作ってしまったほうがスムーズではあったと思います。ただそれでは“共同開発”の意義がブレてしまうので、『あくまでもメンバーのアイデアを尊重する』ことを一番大切にしながらプロジェクトを進めていきました」(JOCHUMプロジェクト担当/以下同)
「JO1×サンリオ新キャラ開発プロジェクト」を発案したJOCHUMプロジェクトメンバーのひとりは、そもそもJO1が誕生したオーディション番組『PRODUCE 101』の視聴者だったという。
「番組を観て応援していたときに、ある友だちがポロッと『JO1とサンリオがコラボしたら面白そう』と言ったんです。それまでサンリオにはアーティストと新キャラクターを共同開発するという経験はなかったので、新しい試みになるかもと思い、友だちと盛り上がったのを覚えています」
それから時は流れ、2021年のサンリオキャラクター大賞発表会でJO1とシナモロールがコラボステージをするという縁に恵まれた。「会社にこのアイデアをプレゼンするなら今だ! と思いましたね」と担当者は振り返る。
だが、社内では懸念の声もあがった。キャラクターは永遠の存在だが、アーティストはいわば生モノ。来年50周年を迎えるハローキティのように、長年愛されるキャラクターに育てていくにはさまざまな課題も想定される──。
「それでもなお『挑戦する価値はあります』と主張したのは、何よりJO1のファンダムの熱量を私自身が実感していたからでした」
有名人とのコラボというと、どうしても「ビジネス先行なのでは?」とうがった見方もあるだろう。だがこの企画は、担当者が「個人的には推し活に近い感覚」と振り返るとおり、意外にもピュアな部分からスタートしたものだった。
■キャラクター開発の舞台裏を初めて公開、「サンリオとしても勇気のいること」
そしていよいよ、2022年6月12日にプロジェクトが始動する。まずはサンリオが一切の“手出し”をせず、メンバーのアイデアを第一に尊重。これをモットーとした上で、最もドキドキしたのが「果たして11人全員が可愛いキャラクターを考えてきてくれるだろうか?」ということだったという。
「一番びっくりしたのは、マイクのキャラクターでした。動物系やヒト型のキャラは想定内でしたが…。ほかにも複数のキャラクターを考案してくださったのですが、『マイクンが一押しです!』ということだったので、採用させていただいた経緯があります。そのほかのみなさんも、私たちの心配をよそにものすごく詳細な設定を考えてきてくださったり、かなり完成度の高いラフ画まで描いてきてくださったメンバーがいたりと、アーティスト活動でお忙しい中、真剣にプロジェクトに取り組んでくださったことに感動しました」
こうしたメンバーの素案をもとに、同社デザイナーが「11体のキャラクターに統一感を出す」「サンリオナイズする」といったブラッシュアップを加えた。プロジェクト進行の様子はYouTubeで随時公開され、多くのJO1ファンが見守る中でJOCHUMは完成されていった。
「キャラクター開発の舞台裏を公開したのも、今回が初めてでした。サンリオとしても勇気のいることでしたが、JO1が“お飾り”ではなく、全力でキャラクター開発に携わったことをお伝えする上で大切なことだったと考えています。視聴者の反応にもドキドキしていましたが、ファンのみなさんはとても温かくて、『サンリオの開発力がすごい!』『ありがとう!』というコメントを見たときには、やってよかったと思いました」
アーティストとサンリオがキャラクターを共同開発をするのは今回が初だが、実は他企業との共同開発は過去にも行われてきた。
たとえばアニメや玩具も大ヒットした「ジュエルペット」(2009年~)や「リルリルフェアリル」(2015年~)を共同開発したセガトイズとは、近年も「Beatcats」(2020年~)を開発。また、おぱんちゅうさぎなどで知られるコンテンツ企業・CHOCOLATE Inc.とは「がおぱわるぅ」「クマミレン」「ぽっきょくてん」(2022年~)が共同開発されている。
ハローキティが「仕事を選ばない」と言われるほど、あらゆる企業や団体とのコラボに積極的であることはよく知られているが、共同開発はコラボとどう違うのだろうか?
「セガトイズさんは玩具に高いノウハウをお持ちです。また、CHOCOLATE Inc.さんはSNSを軸としたプロデュースに長けていらっしゃる。そしてサンリオは、キャラクター開発力に一日の長があると自負しています。それぞれの企業の強みを持ち寄ってキャラクターを育てていく。それが共同開発のメリットであると考えています」
JOCHUMにも、この共同開発の考え方が取り入れられているという。
「JO1さんにはK-POPのエッセンスがあり、グローバルにもどんどん進出されています。中でもタイには大きなファンダムがあり、キャラクター大賞でJOCHUMがタイで3位にランクインするという結果にも表れました。今後JOCHUMも、もっと世界に飛び出していきたいですね」
もちろん国内でも人気は加熱中で、今年5月に東京駅で実施した初のポップアップストアは連日大盛況に。人通りの多い場所での賑わいに「あのキャラクターは何?」と足を止める通行人も多かったと いう。9月~10月にかけては東京と名古屋で、サンリオショップでの展開も決定した。
「中でも注目を集めているのが、マイクンなんです。当初は『大丈夫かな、カワイくなるかな』と一番心配だったキャラクターだったのですが、社内でもJO1をあまり知らない先輩社員が『マイクンいいな』と言っていたり(笑)。ジワジワ来るところがあるのかもしれないですね。サンリオだけでは発想できないキャラクターを生み出せたのは、まさに共同開発ならではの成果でした」
サンリオにとっても、新しい試みとなったJO1とのJOCHUM共同開発。多くのファンに応援される結果となったが、「今後、いちキャラクターとして愛されるように、さらに幅広い方々に知ってもらいたい」とのこと。JOCHUMがこれからどのような展開を見せるのか、注目したい。
(文:児玉澄子)
(C)2023 SANRIO CO.,LTD. 著作(株)サンリオ