「第80回べネチア国際映画祭」で上映された新作『悪は存在しない』が審査員大賞を受賞した濱口竜介監督(C)KAZUKO WAKAYAMA
イタリア「第80回ベネチア国際映画祭」(8月30日~9月9日)で現地時間9日、コンペティション部門の授賞式が行われ、濱口竜介監督の最新作『悪は存在しない』(英題:Evil Does Not Exist)が、最高賞・金獅子賞に次ぐ第2席の作品賞にあたる審査員大賞(銀獅子賞)を受賞した。
同映画は、現地時間4日にワールドプレミアとして上映され、「第74回カンヌ国際映画祭」で脚本賞など4冠、「第94回アカデミー賞」で国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』(2021年)の濱口監督の新作のお披露目とあって、現地でも注目を集めていた。上映後は約8分のスタンディングオベーションに沸いたという。
『ドライブ・マイ・カー』でタッグを組んだ濱口監督と音楽を担当した石橋英子による共同企画。石橋から自身の音楽ライブで使う映像を依頼された濱口監督が、まず劇映画を作って、それを音楽ライブ用に再編集するという制作過程の中で完成した劇映画が『悪は存在しない』。制作の経緯も関心を集めた。
最高賞の金獅子賞に輝いた『哀れなるものたち』は、映画『女王陛下のお気に入り』(18年)のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが主演。日本でも2008年に翻訳された、スコットランドの作家アラスター・グレイ著の同名ゴシック小説(早川書房)を映画化。自ら命を絶った不幸な若き女性ベラが、天才外科医ゴッドウィン・バクスターの手によって奇跡的に蘇生し、平等と自由を知り、時代の偏見から解き放たれていく物語。
ソフィア・コッポラが監督と脚本を担当した映画『Priscilla(原題)』で、エルビス・プレスリーの元妻プリシラ・プレスリーを演じたケイリー・スピーニーが最高女優賞、ミシェル・フランコ監督の『MEMORY(原題)』で認知症に苦しむ男性を演じたピーター・サースガードが最高男優賞を受賞。
監督賞は『Io Capitano(原題)』のマッティオ・ガローネが受賞し、同作に出演したセイドゥ・サールがマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞。台湾の俳優リー・ホンチーの監督デビュー作『Love is a Gun(英題)』が、ルイジ・デ・ラウレンティス賞(新人監督賞)を受賞した。
また、ベネチア・クラシックス部門にて、相前慎二監督の『お引越し』(1993年)が、最優秀修復映画賞を受賞した。
■主な受賞結果
金獅子賞(最高賞):『哀れなるものたち』(ヨルゴス・ランティモス監督)
銀獅子賞(審査員大賞):『悪は存在しない』(濱口竜介監督)
銀獅子賞(監督賞):マッティオ・ガローネ(『Io Capitano(原題)』)
ヴォルピ杯(女優賞):ケイリー・スピーニー(『Priscilla(原題)』)
ヴォルピ杯(男優賞):ピーター・サースガード(『MEMORY(原題)』)
マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞):セイドゥ・サール(『Io Capitano(原題)』)
脚本賞:ギジェルモ・カルデロン&パブロ・ラライン(パブロ・ラライン監督『EL CONDE(原題)』)
審査員特別賞:『Green Border(原題)』(アグニエシュカ・ホランド監督)
ルイジ・デ・ラウレンティス賞(新人監督賞):『Love is a Gun(英題)』(リー・ホンチー監督)
ベネチア・クラシックス 最優秀修復映画賞:『お引越し』(相前慎二監督)