「第76回カンヌ国際映画祭」で「クィア・パルム賞」を受賞した『怪物』の是枝裕和監督(左から2人目)
フランスで開催中の「第76回カンヌ国際映画祭」で、現地時間27日午後8時半(日本時間:28日午前3時半)から開催される主要部門の授賞式に先立ち、是枝裕和監督の『怪物』が、独立賞の1つで、LGBTやクィアを扱った映画に与えられる「クィア・パルム賞」を受賞した。日本映画としては初の受賞となった。
「クィア・パルム賞」は、2010年に創設され、「第63回カンヌ国際映画祭」から授与されている。公式部門とは別に独立した審査員が組織され、映画監督や俳優、ジャーナリストや大学教授、各国のクィア映画祭のプロデューサーなど、毎年5~8人が審査員を務める。カンヌ国際映画祭のコンペティション部門、国際批評家週間、監督週間、ある視点部門に出品されたすべての作品が対象となる。
今回の審査員長ジョン・キャメロン・ミッチェル(『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』『パーティで女の子に話しかけるには』等の監督)は、「私たち審査員は、10日間で12本の映画を観ました。1本を選ぶのは大変な作業でしたが、ある作品が満場一致で選ばれました。その物語の中心にいるのは、ほかの子どもたちと同じように振る舞うことができず、またそうしようともしない、とても繊細で、驚くほど強い2人の少年です。世間の期待に適合できない2人の少年が織りなす、この美しく構成された物語は、クィアの人々、なじむことができない人々、あるいは世界に拒まれている全ての人々に力強い慰めを与え、そしてこの映画は命を救うことになるでしょう。登場人物のあらゆる面を、繊細な詩、深い思いやり、そして見事な技術で表現した是枝裕和監督の『怪物』に、私たち審査員は満場一致でクィア・パルム賞を授与します」と、選定理由を述べた。
それを受け、是枝監督は「ありがとうございます」と、感謝の気持ちを表した後、「(ジョン・キャメロン・ミッチェルさんが)お話してくださった映画の紹介の中に、この映画を通して僕が描きたかったことが全て語られていて、ここで僕が何か言葉を重ねることは何も必要ないような気がしています」と、映画が“届いた”という実感に感激。
続けて、「僕がこの映画のプロットを手にしたのは4年半ほど前なのですけども、その瞬間からこの主人公2人の少年が抱えている葛藤とどういう風に、それを演じる少年と同じように作り手であるプロデューサー、監督、脚本家がその葛藤と向き合うべきなのか、どうしたら向き合えるのかをとてもとても時間をかけてやってきました。映画がすべてを語っていると思うので、監督がここで何かをいうのは、おまけのような、いらない蛇足なのですが本当に、この映画を愛していただいて感謝いたします。ありがとうございました」と、語った。
映画『怪物』は、大きな湖のある郊外の町の小学校で起きた出来事をめぐり、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子どもたち(黒川想矢、柊木陽太)の食い違う主張が、次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。日本では6月2日より全国公開。