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『昇龍拳』出せなくても離脱しない? 『スト6』開発者に聞く“格ゲー”復権への道筋

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『ストリートファイター6』より(C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

 今年6月にカプコンから発売となる『ストリートファイター6』(以下/スト6)。断片的に発表されている情報からも、さまざまな新たな要素が詰め込まれ、格闘ゲーム(以下/格ゲー)ファン以外からも大きな期待を集めている。1990年代、社会現象になった『ストリートファイターII』(以下/ストII)から30年余りの時を経て、その進化版である『スト6』は、“格ゲー復権”の旗手となれるのだろうか? 『ストII』に魅せられ、同社に入社した、『スト6』のディレクター・中山貴之氏に話を聞いた。

【画像】リュウ、ケン、春麗、ダルシムら『ストII』おなじみメンバーもグラフィックがこんなに進化…『スト6』キャラクター紹介

■対戦格闘ゲームとして“完璧すぎた”『ストII』の存在

 1990年代、『ストII』を筆頭に大きなブームとなっていた格ゲー。中山氏は、リアルタイムでそのムーブメントを体感。この原体験は、「ストリートファイターシリーズを作りたい」という思いにつながったと話すほど、強烈なものだった。

「当時は家庭用ゲーム機よりアーケードゲーム機の方が、性能もビジュアルもすごいものを体感できました。特殊なコントローラーや特殊な筐体もありましたね。なので、ゲームセンターに行けば最先端のゲームが遊べるぞという感覚がありました。そして、ゲームセンターはみんなが集う場だった。コミュニケーションをとりやすく、友人たちを誘いやすい場であった、ということが重要だったのかなと思います」

 さまざまなゲーム機が集まるゲームセンターのなかでも、なぜ『ストII』をはじめとする格ゲーが注目されたのだろうか? 「当時はユーザーだった」と前置きをしたうえで中山氏は次のように分析する。

「グラフィックの美麗さや、仲間とのコミュニケーション以外に、1プレイ100円という体験が大きいです。さらに対戦格闘ゲームの『勝ち残り』というのがすごい発明だったと思います。勝った方は遊び続けられる。少しでも長く遊びたければ強くならざるを得ない。少しでも長く遊びたいので、最初は1人プレイでCPU戦をして、負けそうになった瞬間に友人に乱入してもらう、といった事もやっていました。当時はインターネットもないので、上達するためにうまい人のプレイを見に行こうと言った文化もありました。(家庭用ゲーム機で出る前は)『ストリートファイター』はゲームセンターでしか遊べないから、学校でもずっと考えるんですよ。『ガイルにはどうしたら勝てるんだろう』とか。友達ともそういう話をする。ゲームをやりたいと考える時間が増えることで“練度”が上がっていき、より深く好きになっていったのではないか思います」

 多くの人々を夢中にさせた格ゲー人気だったが、2000年代に入ると、陰りを見せるようになっていく。その要因は複数あったのではないかと中山氏は言う。

「ひとつは家庭用ハードのスペックが上がり『バイオハザード』や『ファイナルファンタジー』など、グラフィックや体験が豊かなゲームが登場したこと。また優れた移植でアーケードゲームが家庭用に移植されたこと。そしてもう少し時間が経つと、モバイル端末の発達と所持率が上がったことで、ゲーム的な体験が身近に手軽に出来る様になったことなどが挙げられると思います。
 あと、『ストII』がめちゃくちゃおもしろかった上に完成され過ぎていて、派生のさせ方が難しかったというのもあると思います。さまざまな手法で『進化』させようと挑戦、努力をされてきましたが、それを『難しさ』として感じてしまったり、とっつきにくさを感じてしまったりしたのだと思います」

■『スト6』の出発は、「自分は無理かも…」と思わせずに楽しめること

家庭用ハードの進化と、“完璧すぎた”『ストII』の存在。それ以外にも、ライトユーザーの格ゲー離れについて論じられる際によく言われるのが、その操作性の難しさ。波動拳はなんとか出せるけど、昇龍拳のコマンド入力が難しく、そこで諦めて離脱してしまう、というような熟練者とライトユーザーの差がよく挙げられるが、中山氏によるとそこに対する施策をメーカーも打っていたという。

「90年代中盤から、各メーカーさんの取り組みとして、コマンドを共通化・簡略化した様な作品も出ています。『技を出すことがすごいのではなく、それを使った駆け引きがおもしろいという風に回帰していかないと』という流れがあって。その一方で、難しいコマンド、隠し技、ゲームの展開のスピードアップなどもあったので、(ライトユーザーさんには)『なんだか難しそう』というイメージが先行してしまったのかもしれません。
 ただ本質はそこというより、経験が生きるゲームなので『これから始めてみよう』という人が対戦で負けてしまい『自分は無理かも』と思ってしまうこと。そして1戦1戦の勝敗が非常に重い点。これは格闘ゲームというジャンルにずっとある問題だと思っています。その分、努力が実った時の爽快感はすごいのですが、なかなかそこまで到達できません。負けることに対しての免疫はなかなかつかないので」

 初心者やライトユーザーにも「無理」と思わせずに、楽しんでできるゲーム。それは中山氏が『ストリートファイター』シリーズの制作にかかわるようになって一番考えていたことだった。前作『スト5』ではその原型になる要素を入れ、最新作『スト6』では、それをさらに進化させた。

「何かすごいことをするために、難しいコマンド入力が必要ではないと考えています。『ストIV』では、最大威力のウルトラコンボを出すのに、長めのコマンドを入れてボタンを3つ同時押ししないといけないのですが、大変じゃないですか。熟練の人たちは苦ではないし、出せたた時の達成感もあるのですが、『コマンドを覚える』『コマンド入力を強いる』というところがスタートっていうのは、現代的ではないなと思いました。
 当時、北米の開発メンバーやユーザーさんからも『コマンド入力が難しすぎるのは嫌だ』と言われました。完全同意です。あわせて、北米の開発メンバーからは『わかりやすい逆転要素があるべきだ』や『ラウンドが進むともっと盛り上がるようにしてくれ』『技をどんどん派手に』など、ドラマチックに感じるものを要望されました。そこは、さすがエンターテイメントの国だな、と感じました(笑)」

■コマンド入力の煩雑さを取り払った“モダンタイプ”の可能性「ニューカマーと古参が戦える」

最新作の『スト6』では、『モダンタイプ』、『クラシックタイプ』を導入。これまで通り、コマンド入力で技を出せる『クラシックタイプ』に対し、『モダンタイプ』ではコマンド入力の煩わしさなく、ワンボタンで必殺技を出すことができる。これも操作性を簡単にするための取り組みというよりは、対戦格闘ゲームの醍醐味を誰にでも味わってもらいたいという思いからだ。

「対戦格闘ゲームのおもしろさにおいて、『必殺技が出せる!』というのは1番ではないんです。もちろん出せたらうれしいですが、そもそも他のプレイヤーと対戦すること自体がおもしろいんです。そのためにはまず難しいと感じる必殺技のコマンド入力を取っ払いたかったというのはあります。必殺技がなくても対戦は成立するしおもしろい。その上で必殺技を出せると攻めのバリエーションが豊かになる。そのためにはコマンド入力が必要、というロジックを緩めたかったのです。
 自分の中では、マニュアルとオートマみたいな感覚です。『モダン』では、必殺技は簡単に出せますが、波動拳の強弱の撃ち分けができないと言った例があります。でも撃ち分けをしたかったら頑張って練習して『クラシック』を使っていけばいい、みたいな。そもそも『強弱で弾速が違うから、波動拳を撃ち分けたい!』と思ってもらえたら、もう立派な格闘ゲーマーです。これから始める人でも『モダン』を使って活躍していただきたいですし、古参のゲーマーの方々が『クラシック』で今までの技術を活用して、ニューカマーを倒してもいい。どっちが強いか決めたらいいじゃんって、ちょっと丸投げに聞こえるかもしれませんが、そこがおもしろいところかなって。
 もうひとつオンラインでは使えないのですが『ダイナミックタイプ』という操作がありまして、ボタンをガチャガチャやっているとキャラクターが良い感じに戦ってくれるという操作があります。シリーズを遊んだことがあるお父さんと、ゲームをあまりやらないお子さんでも楽しく対戦をしてみるきっかけを作りたいと思いました。ボタンを押すことで移動と良い感じの攻撃を繰り出すので『ボタンを押して闘う意思を提示する』という事を再現したかったのです。そこから『自由に動かしたい!』と思ってもらえたら次のステップへ、ということで」

 『スト6』ではこれら以外にも、プレイヤーがアバターを制作し、ストーリーを展開することで育成していく一人プレイモードの『ワールドツアー』や、他のユーザーとコミュニケーションを取れるゲームセンターのような空間『バトルハブ』などの新たな要素を追加。初心者や、かつて“脱落”しそうになった人たちも楽しめる要素となっている。

「以前からチュートリアルだけ体験して『はい、対戦格闘です。さあ遊んで』というのは、メーカーとしてユーザーさんに失礼かなと思うところがありました。対戦格闘ゲームのおもしろいと思える部分を、解説にあわせて体験し、覚えてもらうということを一番最初に考えました。私は対戦格闘ゲームが好きなので、もっとたくさんの人に遊んでいただきたい。あわせて『ストリートファイターにはこういうおもしろいキャラクターがいるんだよ』という世界観を体験してもらえるところを作りたかった、という感じです。
 それが入口としてひとりで楽しめるのが『ワールドツアー』です。そこで作ったアバターで、他のプレイヤーや友人とコミュニケーションをとったり、対戦もできるモード『バトルハブ』に行き、最終的に『ファイティンググラウンド』という対戦がメインのモードに行くという三段構造になっています。もちろん1つのモードに停滞してもらっても全然いいです。対戦が怖いという方は、ストーリーやキャラクター育成が楽しい『ワールドツアー』に滞在しても良いですし、ずっと対戦ゲームを楽しんできた方は、いきなり『ファイティンググラウンド』でガチの対戦に行ってもいい。幅広く対戦格闘ゲームを楽しんでもらうためのお品書きのような感覚です」

■ナンバリングは『6』でも格闘対戦ゲームで遊んでもらうための“入口”になりたい

これまであまりやったことのない初心者やライトユーザーに手厚い仕様に、「『(『ストII』ほどの)対戦格闘ゲームが、そこまでする必要あるの?』みたいな声もいっぱいありました」と話す中山氏。だがそこは、かつて社会現象にまでなった『ストリートファイター』シリーズを作り上げたカプコンとしての”使命”でもあると話す。

「自分は格闘ゲームを愛してやまないので変わらないんですが、世間でいう“ブーム”にしていくためには、やっぱり人に薦めやすいようにしないとダメですよね。それこそ90年代にゲームセンターに友達を誘うような感覚に近くて。勝った負けただけの“勝負論”の世界だけじゃなく、『ひとりプレイもできて、おもしろいキャラクターがいて、おもしろい世界を旅することも出来るからやってみない?』みたいな感じです。それで慣れたら『対戦してみようよ』と誘える世界にしたかった。ナンバリングでいうと『6』なんですけど、格闘対戦ゲームを手にとってもらいやすくする“入口”になったらいいなって感じですね」

 『スト6』をきっかけに新たなユーザーが参入し、90年代のようなブームの再来と“格ゲーの復権”については、「(期待は)もちろんあります。そのためにできることは全部やりたいと思ってます」と話す中山氏。さらに、入口を広げたことによって新たに入ってくる人たちの中から、新興勢力が台頭し、「“勝負論”の世界だけじゃない」と話しながらも、古くから活躍するプロゲーマーたちを倒し、勢力図に変化が現れることまでも見据えている。

「例えば、歴戦の強者が『クラシック』を使って『モダン』の若手を倒して行くのも見てみたいし、逆に新しい技術とテンションを持ったチャレンジャーが、ベテランをなぎ倒しているのも見てみたい。ただ、今までずっとプレイされてきた人たちには、絶対アドバンテージがあると思います。システムとか操作だけじゃなくて、技の読み合いとか経験値やメンタル的な部分も絶対優位に働く部分もある。だから今までやってきた人が、ゼロからスタートするかというと、必ずしもそんなことはないと思います。ただこれからくる“新たな武器”を持った人たちがどうやって戦っていくかっていうのは、楽しいと思うんですよね、強い対戦相手がいればいるほど燃えるはずなので。もちろん歴戦の強者が新たな武器『モダン』で戦うといった事もあり得ますよね。そうやっていろんなことが起こりながら、活性化につながったらいいなと思っていますね」

取材・文/衣輪晋一

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