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岸谷五朗&寺脇康文、30年間伝え続けるチャリティーの魂 2年ぶり『Act Against Anything』への決意

『Act Against Anything VOL.2「THE VARIETY 28」』に出演する岸谷五朗、寺脇康文の画像

『Act Against Anything VOL.2「THE VARIETY 28」』に出演する岸谷五朗、寺脇康文

 俳優・岸谷五朗の呼びかけで、1993年から2018年まで開催されていたエイズ啓発ライブイベント『Act Against AIDS』。そして、極上のエンターテイメントショーの中にチャリティーを根づかせるという同イベントの意思を受け継ぎ、2020年からスタートしたのが『Act Against Anything』で、来たる11月26日に2年ぶりとなる『Act Against Anything VOL.2「THE VARIETY 28」』が開催される。

【写真】『Act Against Anything VOL.2「THE VARIETY 28」』への意気込みを語った岸谷五朗、寺脇康文

 ORICON STYLEではこのほど、岸谷と盟友・寺脇康文の2人にインタビューを敢行。前編となる本インタビューでは、前身イベントを立ち上げたきっかけから、苦渋の決断となった前回の無観客開催と待望の有観客開催になる今回について話を聞いた。

■主に伝えたかったのは中高生や大学生 だからこそ冠された『THE VARIETY』

――チャリティーイベント『Act Against Anything VOL.2「THE VARIETY 28」』が11月26日に開催されますが、まず同イベントについて改めて教えていただけますか?

【岸谷】1993年から2018年まで続けた『Act Against AIDS』というイベントから始まったものですね。

――『Act Against AIDS』を始めたキッカケは?

【岸谷】あるとき、AIDSを患っている中学生の女の子から手紙をいただいたことがキッカケで。当時は「まだAIDSって何だろう?」という時代で、海外でも有名なアーティストを含めたくさんの方が亡くなっていたんですが、どの方も“謎の死”という扱われ方だったんです。それで、病気の正体が分からないからみんな怖くて、次第に“人間同士のつながり”とか“絆”とか“信頼”といった人が一番大事にしなきゃいけないものを壊す病気になっていった。つまり、差別が起きたんです。結果、「AIDSは“知ること”がワクチンになるんだ」ということで、“知るワクチン”という言葉も生まれて。こういう背景がある中で最初に言った手紙がキッカケになり、AIDSの啓蒙・啓発をしようとイベントを立ち上げました。

――当初から現在のようなエンターテインメント色を持ったイベントにしようと考えていたんですか?

【岸谷】いえ、最初はそれこそ大学の先生方をお呼びしてシンポジウムのようなものを開いたんです。でも、来てくれたのは専門家の方ばかりで、一番届けたいと思っていた中高校生とか大学生の方たちがほとんどいなかったんですね。

――学生に届けたいと思ったのはなぜでしょう?

【岸谷】中学生の男の子が食卓で両親に「AIDSって何?」と聞いたら、「ご飯の最中にそんな話やめなさい!」と怒られた、という話を聞いたんです。そのとき、食卓で普通に話せるようなものにならなければ、この病気の真実は広がっていかない。そんな怖さや焦りがあったからなんですよ。

――しかし、シンポジウムのような形態だと学術的な話が中心になってしまい、学生まで届かない。

【岸谷】はい。これはまずいぞということで、一番みんなが入ってきやすい“バラエティー”という名前を付けて、『Act Against AIDS「THE VARIETY」』を始めました。最初は何のイベントなのか分からなくても良いと思ったんですよ。お客さんが劇場に来てくれて、帰り道に「楽しかったね」「いろんなアーティストが出てたね」「チャリティーなんだよね?」「何のチャリティー?」「あ、AIDSだって」と。そこから啓蒙・啓発が始まる…むしろそういうところから始めないと、伝えたい層には伝わらないと感じたんです。

■“子どもたちに笑顔を”というテーマは変えず、ピンポイントではない支援を目指す

――2020年にはイベント名を『Act Against Anything』に変えて再スタートしました。

【岸谷】イベントをスタートさせてからの25年間で、AIDSに対して大きな啓蒙・啓発ができたんですね。それはもちろん我々だけの力ではなく、世の中全体がAIDSに対して取り組み、知ろうと思ってくれたからですが。結果、始めた当時のような脅威はなく、『Act Against AIDS』は責任をはたせたなと。ただ、もっと大きな問題があることに気づいて…。そのキッカケが東日本大震災でした。あのときは2日間やったんだよね?

【寺脇】そうですね。2日間で半分に分けて。

【岸谷】1日目をAIDSのチャリティー、2日目を東日本大震災へ向けた支援にしたんです。そのとき、あらゆる“困窮”に対して1年に1度アーティストが集まってチャリティーを行うことの重要性に気づき始めたんですね。現在だったらウクライナの問題もそうですけど、笑顔を失ってしまった子どもたちへの寄付をもっと広く伝えたいと。ピンポイントなものではない支援をやっていくべきだと感じたんです。つまり、“子どもたちに笑顔を”という大きなテーマを持ちながら、そのときどきの問題に向き合うべきだと。それが4年前のことでしたが、コロナでやられっぱなしで…(苦笑)。

【寺脇】1年に1日だけですけど、何か人の役に立てれば…という思いです。はじめはルーマニアの子どもたちに向けた支援をメインにしていました。ルーマニアの子どもたちは、たとえば注射針の使い回しだとか、ずさんな医療環境のせいでAIDSに罹患してしまうというケースが当時は多くて。なので、そういった子どもたちが安心して暮らせる場所を作ろうということを最初の目標にしたんです。

――1993年から2005年の主な支援先はルーマニアに暮らすHIVポジティブの子供たちで、「明日の家」の建設をはじめとした支援を行われていましたね。

【寺脇】僕も実際に施設へ行かせていただいたんですが、子どもたちが本当に慕ってくれるんですよ。でも、僕が帰国した何日後かにその子が亡くなったと聞いたこともあり…。「あなたたちの寄付がなかったら、今日この子たちが食べるご飯も用意できない」と言っていただけて、少しはお役に立ててるのかなと思いつつ、そういったことを目の当たりにしたときは本当につらかった。だから、忸怩(じくじ)たる思いがあるんですよ、「これしかできないのか。でも、やらないよりは良い」という。それで、僕はいつもお客さんに言っているんです、「できることを、できるときにやっていきましょう」と。僕らも微力ながらと言いますか…できる範囲でしかできませんが、「何とか日本の、そして世界の子どもたちのために少しでも役に立てれば」と、いつも五朗ちゃんと話していますね。

■立ちはだかった新型コロナウイルスの存在 葛藤の中で感じた観客への感謝

――コロナにやられっぱなしというお話もありましたが、前回の『Act Against Anything VOL.1「THE VARIETY 27」』が無観客開催となったときの思いは?

【岸谷】本当にしんどい決断でした。

【寺脇】ギリギリのタイミングでの判断だったもんね。

【岸谷】僕らがやっている地球ゴージャスという演劇ユニットの公演もことごとく潰れてしまって。無観客で芝居をしたときの衝撃はもう、忘れられないくらいのものでした。カーテンコールで頭を下げたとき、3000人の客席が静まり返っている。いやぁ…あれは戦慄が走りましたよ。そして、どれだけ観客のみなさんに助けられて芝居をさせていただいていたのか改めて痛感しました。

【寺脇】芝居の理念を根源から打ち砕かれてしまったような感覚でしたね。

【岸谷】それで、武道館も危険すぎるから…ということで決断したんです。

【寺脇】ちょうどその頃、他県への移動を止めてくれという要請が出始めた時期でもあったんですよ。そんなときに「来てください」とは言えないですし、言ってはいけないと。

【岸谷】誰のせいでもないとは言え、僕は頭に来てしまって…当日、客席で歌ったんですよ(笑)。キックボードに乗って客席まで行き、イベントの最初に客席で歌ったんです。

【寺脇】あれは悲しかったねぇ(笑)。閑散とした客席の中、1人で…。

【岸谷】そういう悔しさは出演者全員が持っていました。ただ、そこで何よりも感謝だったのが、お客様が配信で観てくれたことです。その結果、これまでのような規模感ではなかったものの、ちゃんと寄付金を送ることができたんですね。配信のお客様がいなければ、チャリティーコンサートなのに、ただただ大きな赤字を作って終わっていたんです。

【寺脇】チャリティーというのは利益になった分を寄付するということなので、赤字だったら当然寄付することもできず、やった意味がなくなってしまいますから。

――オンラインでもお客さんとのつながりを感じられたことが手応えにもなりましたか?

【寺脇】そうですね。もちろん、直接お会いしたいという気持ちは大きかったですけど、配信でもつながることができたのはすごく大きかったです。

【岸谷】配信という技術は、僕らにとって一つの救世主なんです。僕らは職業俳優なので、役者やスタッフが生きていく手段という意味でも、配信には本当に助けられました。あと、地理的な理由やスケジュールの都合で劇場に来られない人たちに、配信で芝居を届けられるようになったことも。

【寺脇】それは本当に大きい。良いところだよね。

――「行ってみたいけど、劇場まで行くことにハードルの高さを感じてしまっている」という方にとっても良い機会だったのかもしれません。

【岸谷】やっぱりそういう方も多いですよね。

【寺脇】劇場の空気までは分からないかもしれないですけど、何をやっているのか伝えられることはとても大事なことだと思います。

■“2年分の思い”を乗せて臨む『Act Against Anything』として初の有観客開催

――前回の配信を観て、「今回こそは現地で」と考えている方も多いと思います。11月26日に開催される『Act Against Anything VOL.2「THE VARIETY 28」』は、現イベント名義として初の有観客となるわけですが、実現が決まったときはどんな思いが込み上げてきましたか?

【岸谷】2020年の『VOL.1』を終えた後、みなさんお忙しい中でチャリティーに賛同してスケジュールを作ってくれているのに、あんなに寂しい思いはもうさせられないなと思ったんです。みんなの願いは、やっぱりお客さんと会えることなんですよ。でも、それを叶えてあげられないことに対する恐怖は、我々主催者にとって非常に大きなものでした。その結果、1年休もうと決めたんです。だから、11月の『VOL.2』には2年分の思いが込められていて。すごく思いが強いですし、僕らも楽しみです。

【寺脇】本当にその通り。実施を決めたのはまだ今よりも状況が見えない時期だったので、すごく悩みました。当日はマスクも着用していただきますし、感染対策もした上でなので“本来の形”ではないですけど、一歩近づいたなという感覚です。こうやって徐々に近づいていくしかないんですよね。

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