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「主人公はなんでみんな細くてかわいいの…」プラスサイズだった作者が感じた、ルッキズムへの疑問と現実

『まぁるい彼女と残念な彼氏』より(C)Izumi Hayama・Yachiyo Okamura・una toon studio/LINE Digital Frontierの画像

『まぁるい彼女と残念な彼氏』より(C)Izumi Hayama・Yachiyo Okamura・una toon studio/LINE Digital Frontier

 エンタメ作品の中では暗黙の「美の基準」があり、その中に容姿の良さも含まれる。登場するキャラクターを見て、自分の容姿にコンプレックスを持った経験がある人も少なくないだろう。とはいえ、多様性の時代となり、ルッキズム(外見に基づく差別または偏見)にも変化が見られてきた。幼少期からずっとプラスサイズだった主人公が、恋愛を通して自分を見つめなおすLINEマンガのオリジナル作品『まぁるい彼女と残念な彼氏』。原作を務めた葉山いずみさんは、現代の「ルッキズム」について何を感じているのか。

【漫画】【漫画】「あの体型では貰い手がない」「デブ嫌い」、キツい一言に太め主人公の反応は?

■自身もプラスサイズだったからこそ「太っていてもポジティブに恋ができる子を描きたかった」

 『まぁるい彼女と残念な彼氏(以下、まるカノ)』は、食べることが大好きな看護師の万莉子が主人公。幼少期からずっとプラスサイズで、恋愛とは無縁の人生と思ってきた彼女に、突如イケメンのとの出会いが。初めての男性からのデートの誘いに戸惑いながらも、少しずつ距離を近づけていく2人。見た目を茶化す行為に厳しい目が向けられる風潮の中、読者も嫌悪を抱かず読み進められる。

――今作では近年議論が広がっている「ルッキズム」がテーマになっていますが。

【葉山いずみさん】特別、「ルッキズムをテーマにしよう」という思いがあったわけではありません。正直今も意識していないんです。『まるカノ』の大元は10年前に作ったもので、当時は“ルッキズム”という言葉も聞かない時代でした。ただ、なんでマンガの主人公はみんな細くてかわいいんだろう、強くてかっこいいんだろう、っていう疑問をずっと持っていたんです。

――外見や容姿に対する誤解や偏見に苦しむ人もいると思います。

【葉山いずみさん】私は当時(今もですが)太っていて、「太っていたり外見に自信がなかったりする人は物語の主人公になれないのかな」となんだかモヤモヤした気持ちがあって…。そんな考えから、太っていてもポジティブに恋ができる女の子の話を描きたいと思ったんです。

■「みんなが価値観をアップデートできるわけではない」

 主人公の万莉子は看護師で、同僚や患者、たくさんの人に慕われている。万莉子の先輩にあたる里奈や萌香も、彼女の外見も内面もきちんと認め、理解をしてくれるものが仮の中でも重要な存在だ。

――読者コメントの中で、里奈や萌香について「友達2人がいい子すぎる」「友達の2人が主役級にかっこよくて素敵」という声が多く見られました。

【葉山いずみさん】特に意識したわけではありませんが、万莉子みたいな明るい性格なら職場で仲良しの友達ができるのは自然だと思って、萌香と里奈というキャラが生まれました。キャラ付けしていく中で、友人の体型を気にするような人はそもそも万莉子と仲良くならないんじゃないかな、というのがあったので、2人が万莉子の理解者のような立ち位置になったんです。

――一方で、1話で年配の内田さん(看護師)が「中身がよくてもあの体型では貰い手がない」「結婚して子どもを産み育てるのが女の幸せ」という発言があります。

【葉山いずみさん】内田も『まるカノ』に登場する「いろんな考えを持つ人たち」の1人です。今は世の中で「多様性を認めよう」という雰囲気が高まっていますけど、みんなが価値観をアップデートできているわけではないじゃないですか。仕方がないことだと思います。なので冒頭にあのシーンを入れたのは、「こういう人いるよね…」というくらいの意味合いでした。

――男女問わずですが、内田さんのような考えや世間の風潮に先生自身が思うところはありますか?

【葉山いずみさん】私はフリーランスでシングルマザーなんですが、周りの人から「家で遊んでいないで外で働け」とか「再婚するべきだ」というようなことも言われます。どんなことを思うのもその人の自由ですが、押し付けるのはよくないですよね(笑)。

■不器用な2人の恋愛模様 お互いの心情の変化にも注目

――万莉子が恋をする凪。高校時代のトラウマを引きずって、ふくよかな女性が苦手になってしまいますが、万莉子との出会いで徐々に変化を見せます。

【葉山いずみさん】凪にとって、ストーカー事件以降「太っている人」=「危害を加えてくる人」というイメージが拭えなかったと思うんです。でも、万莉子の底抜けの明るさやパワフルさが、そのイメージを吹き飛ばしてくれた。凪はイケメンであるものの少々残念な子なので乗り越える強さがほしくて過去にちょっとしたトラウマを持たせました。

――凪は万莉子によって、トラウマを克服できるのでしょうか。

【葉山いずみさん】今は初恋のテンションで有耶無耶になっている感じもあり、本当に乗り越えたと言えるのか…。今後の凪がどう成長していくのか見守ってあげてください。

――理解ある人たちも多いですが、作中ではそれ以外の“周囲の人”による偏見も描かれています。現実社会でも「容姿で人を判断しない」という風潮になってきてはいますが、これがリアルのように思えます。

【葉山いずみさん】そうですよね。冒頭でも言ったようにすべての人がそれを受け入れるのは難しいので、仕方ないことだと思います。太っていたら「そんな体型じゃ病気になる」なんて言われますし、痩せていても「そんな体型じゃ子どもが産めない」と言われることがあるじゃないですか。すごくキレイなアイドルのSNSにも、容姿を揶揄するようなリプライはたくさんついています。今はまだこれが現実だし、容姿でジャッジされる機会はなくならないのかもしれません。

――どんな外見・容姿であっても、生きやすい社会になってほしいですね。

【葉山いずみさん】マナーやルールを守っていればどんな見た目でもいいと思うんですよ。太っていようが痩せていようが、髪をピンクにしようが鼻にピアスをしようが。ないとは思いますが、アンチルッキズムの風潮が強くなりすぎて、見た目をキレイに維持したい人が叩かれはじめちゃったら怖いなとは思います…。

――と言いますと?

【葉山いずみさん】キレイでいたいと思って努力する人も、体型なんて気にせず美味しいものを食べたい人も、みんな、自分の好きな体型で好きな見た目で自由に生きられる、そんな社会になってほしいです。

■プラスサイズの読者が勇気を持つきっかけに

――作画を担当された丘邑やち代さんとは、初めてのタッグですよね。

【葉山いずみさん】絵はもちろん見せ方が上手なマンガ家さんだなと思っていました。優しい、柔らかいだけではなく悲しそうな表情や怒っている表情、いわゆる負の感情と呼ばれる表現もとても上手で、キャラクターの心情を文字を読まずとも視覚だけの情報でわかるというのが魅力かと思います。

――連載中ではありますが、読者からの声で印象的だったものは?

【葉山いずみさん】万莉子に共感してくださる人が多くて嬉しいです。なんというか、太っているヒロインが思ったよりも受け入れてもらえるんだなって。タイトルやサムネからも「太っている女の子が主人公」というのは、大抵の方はわかった上で読んでくださると思うので、当然と言えば当然なのですが…。

――今後、万莉子と凪の恋愛模様がどんどん描かれていくかと思います。少し教えていただけたりしますか?

【葉山いずみさん】それは…読んでからのお楽しみにしてください。ただ、萌香や里奈の恋愛にもスポットを当てていきたいなとは思っています。恋愛って十人十色ですから。みんなそれぞれ悩みがあって、思うことがあって、理想があって、でも現実もあって…。もちろん、万莉子を中心にまわるお話なので深くは掘り下げませんが萌香、里奈、和樹、康平あたりの恋愛だけでなく、人生っていうか生き様にも注目してほしいです。

――本作を通して伝えたいことは?

【葉山いずみさん】『まるカノ』を読んで、少しでも「見た目が全てじゃないよ」という考えを持ってもらえたら嬉しいです。とはいえ、読んでくれている人って、そもそもが太っている人を受け入れてくれている人だと思うので、今更そんなことを伝えなくてもいいのかなって思います。ただただ感謝していますし、読者の方がいるから私たちは『まるカノ』を作れるので。ネガティブな太ってる方がいたとしたら、この作品が少しでも勇気を持つきっかけになってもらえると嬉しいです。

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