ガンダムシリーズの最新作となる映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』に出演する(左から)成田剣、古谷徹、古川登志夫、潘めぐみ (C)ORICON NewS inc.
ガンダムシリーズの最新作となる映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』が公開中だ。『機動戦士ガンダム』の第15話「ククルス・ドアンの島」にスポットをあてたもので、「ひときわ異彩を放つ」とファンの心に残る伝説のエピソードを安彦良和監督が映画化。ファンにおなじみのホワイトベースの仲間たちやモビルスーツが登場するほか、最新のアニメーションで描かれる大迫力のモビルスーツ戦が見どころとなり、壮大なスケールでよみがえるRX-78-02ガンダムとアムロ・レイの物語を見ることができる。ORICON NEWSでは、アムロ・レイ役の古谷徹、カイ・シデン役の古川登志夫、ブライト・ノア役の成田剣、セイラ・マス役の潘めぐみにインタビューを実施。古谷と古川の爆笑のやり取りや、成田と鈴置洋孝さん(2006年没)、潘と井上瑤さん(2003年没)の秘話が明かされた。
【動画】古谷徹&古川登志夫、レジェンド声優がお互いを褒め合い 潘めぐみ&成田剣も困惑!?
■テレビアニメ1話が長編作品に ドアンの印象も鮮明に「強くて優しくて理想的」
――完成した『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』の感想をお願いします。
【古谷】素晴らしい作品になりました。映像もステキですし、それぞれのキャラクターが表情豊か。特に、子どもたちがかわいいです。CGと手描きで描かれているんですが、モビルスーツの戦闘シーンも戦国武将の一騎打ちのような感じで、とても美しいんです。見どころ満載だと思います。
【古川】見どころというとすべてです。画も音も声優さんたちの演技も。自分をのぞいて皆さん素晴らしいな、と。安彦先生ご自身がおっしゃっているように、ガンダムというのは、大きな状況に巻き込まれる小さな者たちの愛する者を守る戦い。それが、あらゆるシリーズを含めての「ガンダム」という物語。それが凝縮された作品で、クオリティも高く仕上がっています。そう感じました。
【成田】『機動戦士ガンダムUC』から参加させていただいているのですが、今回が初めての『機動戦士ガンダム』。ようやく『ガンダム』の出演者の1人になれたような感動を覚えました。一人ひとりのキャラクターの個性も描かれ、「これがガンダムなんだな」と改めて思え、とてもうれしかったです。いい映画でした。
【潘】見終わった直後は受け止めるものが多すぎて、あまり言葉にできませんでした。ですけど、先輩方がおっしゃっていたように画も音楽も素晴らしく、ドラマそのものも今の時代に見ていただける意味があるものだなと感じました。セイラというホワイトベースの一員として携われたことをうれしく思います。
――テレビアニメ第15話「ククルス・ドアンの島」が長編作品になったことについての感想は。
【古谷】15話の30分の物語を、どうやって劇場版にするのか、最初は謎でした(笑)。でも、実際に台本を読んで「こんなふうに丁寧に描かれるんだ。こんなにいい話だったんだ」と驚きました。とても興味深く思いました。
【古川】今の時代、世界の情勢を考えても、そのまんまです。そういうところはスゴいなと思います。
【古谷】完全に先どりしてますよね。43年前ですよ!
【成田】43年前、私は15歳でした。不覚にも『機動戦士ガンダム』という作品を見ていなかった…。なぜ見なかったのかと改めて後悔しています。こんなに素晴らしい作品で、なんとタイムリーなんだと。より深く伝わるものがあると思います。
【潘】1話30分弱だったエピソードを長く描けることで、子どもたち一人ひとりの個性だったり、表情だったりがより愛おしく感じました。子役さんの声もグッとくるものがありましたし。ドアンと1人ずつ約束をするシーンを見て、あの子たちが守っている世界って尊いものなんだろうなと感じました。大人が忘れているような、大人ですらできていないこともたくさんありました。
【古川】15話は4人ぐらいだったのが20人ぐらいに増えたんだよね。保育園みたいな感じもしたね(笑)。
【潘】確かにドアン保育園みたいな感じでしたね(笑)。かわいくて、温かいシーンだったなと思いました。
――ククルス・ドアンというキャラクターにも新たな魅力が出たと思います
【古谷】ドアンは完成された大人。強くて優しくて理想的だなと思いました。
【古川】(武内駿輔の)ドアンの声もピッタリでしたね。
【潘】子どもたちのヒーローでしたね。
■古川登志夫、43年目初のダメ出し 古谷徹は明かす「僕の心にアムロはある」
――実に40年ぶりの『機動戦士ガンダム』の劇場版となります。演じる上で心がけたことなどがありましたら教えてください。
【古谷】アムロに関して言えば、毎年のようにゲームとかコラボとかで、ずっとせりふを収録し続けていて、改めて役作りをしなくても僕の心にアムロはあるので引き出せる存在です。15話のアムロを見た時に、すでに戦闘慣れしていた。なのに必死で余裕がないイメージだった。この映画に関して言うと、もっと柔軟性があるイメージ。昔のアムロより幼いイメージがあった。でも、今回は日常的な会話が多いので、その方がいいのかな、と。ドアンや子どもたちと触れ合うことで、次第にアムロが変わっていって、家族の一員になっていくところが描かれている。あえて43年前のことは忘れて、新たにピュアなムロを演じてみたいと思いました。
【古川】カイ・シデンというキャラクターのメンタリティーで安彦先生からダメ出しを今回されたんです。子どもたちに対して独特のメンタリティーがあるというのを今になって言われました。恥ずかしかったけど、とてもうれしかったです。直接ダメ出しをされたのは43年やって初めてだったので。一言で言うと、カイの子どもたちへの優しさ。たった一言のせりふでも現れるような演じ方を求められたんだと思いました。ちょっと乱暴にしゃべったせりふに対して「もっと優しさ」を込めてくれ、と。非常に印象的なできごとでしたね。安彦先生の思い入れは今回は特別だなと思いました。
【成田】ブライトは責任感の強い人。ホワイトベースの艦長の責任を貫く人でした。彼は出てくる度に一途なキャラクターを貫いている。でも、今回は人間らしさが垣間見えるシーンがあります(笑)。うれしく思いました。
【潘】『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』から携わらせていただいていたんですけど、今回はホワイトベースに乗ってから日も経って、サイド7から地球に降り立っている関係性もできあがりつつあるところの作品。今回は皆さんと一緒に録ることができなかった。言葉の機微であったり、会話のやり取りで関係性を見せられるかを自分の中でも意識してやらせていただきました。愛され続けているキャラクターですので、皆さんが持たれているものも守らなきゃという思いもありました。できあがったものを観て、一緒に収録できていなくても、その関係性がホワイトベースの中にあって感動しました。
――テレビシリーズ第15話当時の思い出はありますでしょうか? テレビシリーズでブライト・ノアを演じた鈴置洋孝さん、セイラ・マスを演じた井上瑤さんの思い出も交えておうかがいできればと思います。
【古谷】15話をどうアフレコしたかは覚えてないですね(笑)。
【古川】覚えてないね(笑)。
【古谷】鈴置さんに関してはアフレコのあとシャア・アズナブル役の池田秀一さんと飲みに消えていったなというのが印象的でした。敵役だけど仲良しなんだな、という印象です(笑)。井上瑤さんはお料理が上手で、みんなで瑤さんのお家にカレーをごちそうになりに行っていましたね。
【古川】よくやったねぇ!
【潘】うちにもよく食材とかレシピとかを送ってきてもらいました(母がララァ・スン役の潘恵子)。
【古川】シーズニングにも詳しくて、棚に数が並んでたね。
【古谷】いろいろこだわってましたね。
【古川】鈴置さんは、お芝居をやられていて、自分も当時劇団をやっていたから客演してもらっていました。芝居で結構、話が合いました。僕はお酒を飲まなかったので、一緒に飲むことはなかったですけど。でも、あの2人は「2スタがある」なんて言って、よく行ってました。
【古谷】2スタは居酒屋のことです(笑)
【成田】鈴置さんは、何回かお仕事でご一緒したことはあるんですが、プライベートで草野球を一緒のチームでやらせていただきました。静かな方で、黙々と野球に打ち込んでいました。走る時も静かでした(笑)。
【潘】井上瑤さんは、3歳ぐらいの時に「潘ちゃん」と声をかけられたのを覚えています。母が声をかけられたんですけど。「娘さんなの?」と目線を合わせて、お話してくださった姿が印象的でした。
【古川】めぐみちゃんは、やっぱり小さいころから知ってます。潘さんがしゃべっている時に「この子の面倒をみていて」みたいな感じで(笑)。あの頃から思うと、レディーになってびっくり。
【潘】皆さん、お世話になってます(笑)。当時は声を引き継がせていただく未来は想像できていなかったのでビックリしました…。
【古谷】そりゃそうだよ(笑)。
【古川】でも『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でセイラは完璧に確立されている。スゴいですよ。
■いつまでも変わらない“アムロ&カイ” 古谷徹が苦笑い「何十歳若返るんだろう」
――本作はホワイトベースクルーの絆を感じます。別々に声を収録したそうですが、声優としても絆を感じた部分はありましたか?
【古谷】イメージ通りでした。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の方でも、アムロとカイは演じていますし。学生の時から、カイに引っ張られて流されるアムロでしたけど…。だから、どんなふうにお芝居をされるかは想像もつきますし、安心してやらせていただきました。
【古川】とにかく徹ちゃんが変わらないんでね。
【古谷】お互いさまですよ(笑)。
【古川】後を追いかけて僕も必死で一生懸命(笑)。でも、今でもやらせていただけるのはスゴいことで、ありがたいと思います。
【古谷】でも、何十歳若返るんだろうと思いますね(笑)。
【古川】徹ちゃんは、スゴいですよね!
【古谷】だって、カイ・シデンは17歳、18歳でしょ! 古川さんのほうがもっと若返ってますよ(笑)
【古川】徹ちゃんはバケモノですよ(笑)
【古谷】そっくり、そのままお返しします(笑)
【潘】ずっと、このやり取りを見ていたいですね(笑)
【成田】でも、カイ・シデンの声と古川さんのイメージが合わないんですよ!
【古川】よく言われるんです。引っ込み思案で内向的で女性の目を見て話せないぐらいの性格なのに…。
【古谷】それは表向きですから!
【古川】違う話になってきちゃった(笑)
【成田】古谷さんのアムロは特に息づかいがスゴくリアルでドキッとしました。声も、ますます若返っているような感じも。
【古谷】それは監督にも言われました(笑)。でも、今回の作品はそう描いてくださっているので。表情も豊かですし。映像の方で演技をしてくれているので、とても入りやすかったです。
【潘】私は、収録を皆さんの声が入っている状態でやらせていただきました。聞きながら臨めたのは安心感しかなかったです。「ありがとうございます!」という気持ちでした。
【古川】お母さまの声にちょっと似ているかな、と。言葉の端々に。なんせ小さなころから知っているから不思議なんですよね。
【古谷】成田さんに関しては、本当にブライト。鈴置さんじゃないかって思うぐらい。
【古川】本当に違和感がないのでビックリしました。よく研究されているなって思ったら、聞かないでだったんですって。
【古谷】成田さんも鈴置さんもルックスやキャラから来るイメージで演技されたんだと思う。たまたま演技のアプローチの仕方が一緒なんだろうな、と。
【成田】違和感ないと言われるのが1番うれしいです。「合わない」とかだったらツラい。ホッとしました。救われるような気持ちで、これからも頑張ります。
――最後にファンにメッセージをお願いします。
【潘】テレビシリーズの15話「ククルス・ドアンの島」が劇場版になる。皆さんの愛情で紡いできたもののが、こうして作品になったと思います。見どころはすべてです。劇場で観られるのはぜいたくな機会だと思いますし。今の時代だからこそ観てほしいメッセージ性もある。けれど、今の時代だけじゃなく、これから先ずっと観ていただきたい物語。人の変わらない思いや、分かり合えそうで分かり合えないことなど永遠と続くテーマがあるので、劇場に何度も足を運んでいただければと思います。今回はスレッガーさんとのやり取りが多くて、フフッと笑えるようなセイラさんのシーンもありますので、楽しみにしていただけたらと幸いです!
【成田】43年の月日と、改めて『機動戦士ガンダム』という作品の奥深さ、重さを感じて楽しんでいただけたら。ブライトの厳しいですが、とても優しいところ、後で反省しちゃうようなかわいらしいところも観ていただきたいと思います。どこを、どう取っても素晴らしい作品。全てのキャラクター、携わっている声優さん、スタッフさんが完璧なので何度も足を運んで楽しんでいただけたらと思います。
【古川】カイは、一言で言うと二面性が魅力。斜に見ていたり、皮肉っぽいけど、それは実はちゃんと物事を見ようとする批判精神や、のちのジャーナリストへの道につながっていく。その落差が魅力だと思います。アムロを探すという今回の物語も、そうとう強い思いを一言のせりふで表している。そういうところを観てほしいですね。作品については言うまでもありません。安彦先生はリアリストだと思う。SFではなく、非常に現実的だと思います。いつも犠牲になるのは弱い者であり、小さい者。そういう安彦先生の視点を楽しみに観ていただきたいと思います。
【古谷】40年ぶりに大きなスクリーンに帰ってきた15歳のアムロの魅力を堪能してほしいと思います。アムロは、ニュータイプでガンダムの操縦を1番上手にできる能力も持っているパイロット。ですけど、本来の純粋で潔癖症で本当は内向的な、どこにでもいる少年。そこが描かれているので味わってほしいです。安彦先生の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でシャアの過去編はアニメ化されましたけど、その後の一年戦争の部分に関しては今回の1つのエピソードだけ取り上げられました。そのほか、いいエピソードがたくさんあるので、できれば続きを全部アニメ化していただいて、もっとアムロを演じたいなと思いますので、ぜひファンの皆さんのお力をお借りしたいです。ぜひ、よろしくお願いします。
■『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』あらすじ
ジャブローでの防衛戦を耐えきった地球連邦軍は勢いのままにジオン地球進攻軍本拠地のオデッサを攻略すべく大反攻作戦に打って出た。アムロたちの乗るホワイトベースは作戦前の最後の補給を受けるためにベルファストへ向け航行。そんな中ホワイトベースにある任務が言い渡される。無人島、通称「帰らずの島」の残敵掃討任務。残置諜者の捜索に乗り出すアムロたちであったが、そこで見たのは、いるはずのない子供たちと一機のザクであった。戦闘の中でガンダムを失ったアムロは、ククルス・ドアンと名乗る男と出会う。島の秘密を暴き、アムロは再びガンダムを見つけて無事脱出できるのか…?