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イ・サンファさん、引退の小平奈緒へ「抱きしめたかった」 北京五輪での涙と不滅の友情

イ・サンファさんの画像

イ・サンファさん

 2018年平昌五輪のスピードスケート女子500メートル金メダリストで、10月の地元長野での全日本距離別選手権で引退する小平奈緒(35)。彼女の最大のライバルと言われたのが、2010年のバンクーバー五輪、2014年のソチ五輪と2大会連続でスピードスケート女子500メートルを制したイ・サンファさん(33=韓国)だ。2人は氷上で競い合うだけでなく、プライベートでも友人であることで知られている。また、サンファさんの夫で、韓国で活動するタレントのKangNam(カンナム=35)は日本出身で韓国に帰化した人物であり、日本に縁が深い。NHKの番組収録で来日したサンファさんに、10月のレースで引退する小平への思いを聞いた。(取材・文/徳重龍徳)

【写真】現在のイ・サンファさん 解説者としても活躍

■レース解説で思わず涙 北京五輪で見届けた盟友の姿

 サンファさんは2019年に現役を引退し、2月の北京では初めてテレビの解説者として五輪に臨んだ。現役時代からは選手が若返ったこともあり、事前に勉強はしたというが、慣れない面もあったといい「スケートを滑っている方がいい」と笑顔で振り返る。

 解説したレースの一つが、小平が出場した女子500メートルだ。サンファさんと小平とは中学時代から日韓の親善試合を通し、親交を深めてきた。良いレースをすれば互いに称え合い、スランプの時には励まし合う仲で、サンファさんは小平に大会前に「私がここにいるから頑張って」とメッセージを送ったという。

 平昌五輪に続く金メダルを狙った小平だったが、北京の氷上では振るわず、結果は17位に終わった。韓国ではこのレースの解説中、サンファさんが涙を流したことが話題となった。

 「奈緒は後半が強い選手なので、後半で挽回できるかもしれないと願いながら見ていましたが、最終コーナーでそれも難しいということがわかったので、思わず涙が出たんです」。

 小平はレース後のインタビューで、五輪の1ヶ月前に右足をねんざし、満足な練習ができない中で北京入りしていたことを初めて明かした。結果は残せなかったが、サンファさんは小平の走りを称えた。

 「けがについては、私もレースが終わってから知りました。簡単ではない決断だったと思います。私自身も現役時代けがをした経験があるのでわかりますが、けがをしてもなお挑戦したのは、奈緒だからできたと思います」。

 2人の友情を感じる場面はレース直後にもあった。ミックスゾーンで韓国のメディアの取材を受けた小平は取材陣に「サンファはどこ?」と英語で質問した。インタビューでは韓国語で「会いたかったよ」などサンファさんにメッセージを送ったのだ。

 「私はその時、泣いていて感情的になっていたので、奈緒が私を探してくれていることを知らなかったのです。もしそのことを知っていたら、すぐ奈緒のところに駆けつけて抱きしめてあげたかった」。

2人の友情が世界的にクローズアップされたのは、2018年の平昌五輪スピードスケート女子500メートルだった。金メダルを狙うライバル同士、先に滑った小平は五輪新記録を樹立する滑りを見せ、場内では歓声が上がった。だが小平は次に滑るサンファさんの集中の邪魔にならないよう、人差し指を口にあて、静かにするよう観客に訴えた。

 地元韓国での優勝、そして五輪3連覇を目指したサンファさんだったが、小平には届かず銀メダルに終わった。レースを終え涙するサンファさんを、小平はリンク上で抱きしめ「プレッシャーのなかよくやったね。私はあなたをリスペクトしているよ」とねぎらった。2人の姿はスポーツマンシップを伝えるものだとして世界中で賞賛された。ただサンファさんは、2人にとっては特別な出来事ではなかったと明かす。

 「奈緒と私はいつも互いに励まし合い、応援し合うことが当たり前だと思っていました。なので自然なことだったんです。メディアに取り上げられたことで、そのことがとても大きな影響を及ぼすことなのだと知り、私たちは本当によい関係なんだなと改めて実感した出来事でした」。

 そして北京五輪でも2人の友情を再び見ることができた。サンファさんが小平の北京での滑りに涙した理由の一つには、五輪で金メダルを期待されるプレッシャーを誰よりも知っているという点がある。

 「私はいつも1位をとらなければいけなかった。2位になった時に『イ・サンファはもう終わったな』というコメントを聞き、本当に大きな衝撃を受けました。現役時代は1位を必ずとらなければいけないというプレッシャーの中で生きていたので、本当につらかった。だけど、結婚をしてスケートとは違う人生もあるんだなとわかった」。

■夫・KangNamと歩む“アスリートではない生き方”

 サンファさんが、夫であるKangNamと出会ったのは、平昌五輪が終わり、引退するか決めかねていた頃に出演した韓国のバラエティー番組だった。メディアを通し見ていたイメージと違い、周りを気遣うKangNamの姿にサンファさんはひかれたという。この日の取材には、夫も同席していたが、「付き合う前、この人は私の好きだった気持ちをキャッチしてくれなかった」と話す姿からは、飾らない仲の良さが垣間見えた。

 サンファさんはけがもあり、2019年5月に引退を発表し、その年の10月にKangNamと結婚する。スケートに取り組み、プレッシャーと戦い続けたサンファさんにとって結婚は、“アスリートではない生き方”を取り戻す時間でもあった。

 「25年間、スケートに打ち込んできました。そんな私に彼は、これからはやりたいことをやってほしいと言ってくれた。今までは食べたいものも我慢してきたけれど、そうしたものを一緒に食べてくれたり。そうした小さなことを一つずつできるようにしてくれました」。

ことし4月、小平は会見を開き、10月に地元・長野で行われるレースをもって引退すると発表した。サンファさんにとっても驚きだったという。

 「奈緒のスケーティングを見ると、あと2年は現役でやれるのではと思っていましたので、私の友人の姿をリンクでもう見られないと思うと本当に寂しいです」。

 コロナなどの影響がなければ「長野の引退レースにはぜひ行きたい」と話すサンファさんは、自身も似たような境遇にいたことから、小平の気持ちがわかる部分もあるという。

 「私自身は現役続行か引退かに悩み、膝が耐えられずに最終的に引退したのですが、スケートへの名残惜しさがありました。その気持ちは奈緒も同じかなと思います。それでも、奈緒は努力を重ねて、五輪の金メダリストになるという自分の夢を達成しました。10月のレースも無事に締めくくれたらいいなと思います」。

 これまで「奈緒にはメッセージでよく『いつ時間がある?』と送ってました。彼女は現役だから、私は遊びたくても、待つしかなかったんです」と笑いながら話すサンファさんだが、これからは会う時間を作りやすくなる。友人が引退した後のプランについても目を輝かせた。

 「引退したら奈緒をソウルに連れていきたい。彼女は韓国料理が好きなので、スンドゥブやプルコギを食べながら、2人で次にどこへ行くのかを決めたいです」。

■番組情報
スポーツ×ヒューマン『あなたがいるから戦える〜小平奈緒×イ・サンファ〜』
・NHK BS1 6月6日 午後9:00~(再放送:6月10日 午後5:00~)

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