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1枚3億円? 価値高騰で犯罪も…熱を帯びる『トレーディングカード』市場の現実

『遊戯王』カード『青眼の究極竜』(「アジアチャンピオンシップ2000 一般部門」優勝商品※世界に1枚) 現在の推定価格:数億円 ※ARS TCG鑑定社内資料 画像提供/ARSの画像

『遊戯王』カード『青眼の究極竜』(「アジアチャンピオンシップ2000 一般部門」優勝商品※世界に1枚) 現在の推定価格:数億円 ※ARS TCG鑑定社内資料 画像提供/ARS

 昨今、日本だけではなく、世界中でトレーディングカード(以下/TCG)市場が熱を帯びている。その価格は例えば『遊戯王』カードで言えば、5~6年前に2~30万円だったものが現在3~400万円で取引されるなど、ここ数年では相場が跳ね上がっており、ものによっては言い値(実質数億円)ともいわれているカードもあるという。なぜここまで価格が高騰するのか? また、それによって起こるさまざまな問題点とは? 日本発の企業として初めて、TCGの真贋鑑定を行うグレーディングサービスの『ARS』のスタッフに話を聞いた。

【写真】こちらも時価数億円…世界的コレクター所有の幻のカード『真紅眼の黒竜』ほか、『遊戯王』カード激レアコレクション

■今や『トレーディングカード』は時計や美術品以上の投機対象に

 TCGが時計や美術品のように投資家たちの投機の対象になっている理由はいくつかある。まずTCGは一度発行されてしまうと、その後出回らない。その数は減ることはあっても増えることはない有限であるため、一定の価値を持ち続ける。また世界に1枚しかない限定品をはじめ、枚数が限られている超レアカードも存在。現行でも新たなカードが発行されているが、同じものが再生産されることはないため、一点物のような価値を持つのだ。

「特にコロナ禍は、家の中で楽しむ趣味という面で需要が高まりました。コロナ禍中でいえば、『遊戯王』カードの『シクブル』(シークレットレアの青眼の白龍=ブルーアイズホワイトドラゴン)はその価値が数年前と比較して2〜3倍に。カードゲームとして遊ぶ方々によってコンテンツが支えられているのですが、投機目的で稼げて、なおかつ昔の童心に返られる“陶酔投機”という楽しみ方をされている人も多い印象です」(同社スタッフ/以下同)

 以前はネット販売が多かったが、昨今は秋葉原を中心にTCGを取り扱う店舗が続出。コロナ禍で撤退した元飲食店をはじめとする空き店舗に進出したことにより、秋葉原はいまや「カードの街」へと変貌している、と同社スタッフは言う。

「TCGを取り扱う店が増えたことで、パイ(カード)の奪い合いが激化し、買い取り合戦のような状況。コレクションカードは先ほどお話した通り数が有限。発行枚数が少ないカードや人気のカードを多くの店舗で奪い合っている状況です」

 TCGの価格高騰の仕組みはこうだ。あるカードが人気で価格が高騰。そのカードをコレクターが手放さず、市場にカードが出回らなくなると、今度は別のカードに注目が行く。そしてまた価格が高騰。カード価格が300~400万円のレンジに相場が入ると、高すぎて買える人が限られ、価格が動かなくなる。するとまた別のカードに注目が生き、価格が高騰。3~400万円まで行くとまた止まるという繰り返しだ。ただし、本当に超希少なカードに関しては青天井で、これらは億を超える場合も度々あるという。

■高額カードの個人間売買に警鐘「犯罪に巻き込まれる可能性も」

世界最大級かつ年間最大のプロレスイベント「レッスルマニア38」では、念願のプロレスデビューを果たした人気YouTuberのローガン・ポールが『ポケモンカードゲーム』の中で最も希少とされるピカチュウのホログラフィックカードを首から下げて登場。その価格はなんと6億円以上と言われている。

「鑑定結果で非常にいい状態。鑑定がなければ4000万円程なので、鑑定はそれだけでカードの付加価値をつけられます」

 それだけの価値を持つコレクターアイテム故に、これらを狙った空き巣やネット詐欺も多い。現金で6億円となると重くて持ち運ぶのに苦労するが、TCG1枚でその価値があるとなると、不謹慎な言い方になるが“お手軽”なのだ。

「しかも盗んだカードから同じ指紋が出ても、2次流通品の時点で、どこかでその人が触ったのではないかと言えば、それが通ってしまう。また実店舗と違ってネットでの画像表示では真贋が見極めにくい。悲しいことに、そういった犯罪があるのも現実です」

 ちなみにTCG販売企業では「オリパ(オリジナルパッケージ)」というものもある。各店舗がオリジナルで制作したパッケージで福袋的要素があるため「本当にレアカードは入っているのか」という疑惑もわくが、ユーザーも眼も肥えているため、重要なカードを入れない販売店は信用問題で自然に淘汰されていくという。一方で、個人売買には注意が必要だと話す。

「オリパを個人でネット販売してレアカードを入れずに詐欺を働いたり、そこから住所を割り出して空き巣につなげるというケースもあったと聞きます。購入は、信頼できるネットショップ、または実店舗をお勧めします」

 また投機目的になるのは『シクブル』のような限定品ばかりではない。

「いわゆる『レリブル』と呼ばれる市販カードは、約20年前の150円のパックから出てくるものですが、5年前は7~8万円程の値段で、現在は状態が良いもので約40万円と値上がりしております。つまり、現在では市販カードであっても、将来的に価格が高騰する可能性を秘めております」

 これほど注目され、そもそもの目的から離れ、投機目的として扱われているTCG。もともとコレクターだったという、同社スタッフはこの状況に憂いはないのだろうか。

「注目されるのはうれしいですが、値段が現実的ではないのでその辺りは複雑。持っている人にとっては価値が上がってうれしいという反面、持ってない方は『高くて買えない』状況ですので反感もあると思います。また、エンドユーザーの手に届かず、マーケットの中だけでぐるぐる動いている感もある。難しいですね…」

■贋作が流通することでその存在が注目される鑑定業「二律背反の想いがあります」

かようにTCGは現在、投機に有要であり、同時に“有限の金脈”でもある。一方で、贋作も容易に作られ、市場に流通しているという現状がある。『ARS』は、日本発として初めて、それらの鑑定サービスを行う企業。なぜこれまで、日本にはなかったのか、そしてなぜ起業に至ったのか。

「真贋ビジネスは誰にでも出来るものではありません。まずカードの知識が必要。弊社には高額カードの資料も数多くあり、また、コレクターとして確かな実績があり、知識を持った人間が真贋を見極めます。そして、『遊戯王』にしても『ポケモン』にしても元々、日本のコンテンツ。やはり日本人が一番詳しい。
 特に中国では(贋作が多すぎて)鑑定品の需要がとても高いといった背景もあり、鑑定需要はあると考え始めましたが、デザイン性及び保全性に優れたケースにTCGを封入することで、カードの魅力を引き立て、TCGを『芸術品』『Art』へと昇華させたいという理由が一番です。何より我々がそのようなケースやサービスを求めていたというのが企業理由となります」

 『ARS』では真贋を見極め、ケースに入れて超音波で蓋をする。鑑定番号を振り分け、そのカードの説明のプレートもつける。透明度や硬度にもこだわり、ビルから落として壊れないほど。

「ケースを作成するノウハウも尋常ではなく困難。この準備のために、多くの時間を割きました」

 現在の『遊戯王』カードには右下にコピーガード(1万円札の立体加工のような虹色の部分)があり、現行で贋作を作るのは難しい。だが過去の『遊戯王』カードには、それがない。

「贋作はごまんと存在します。例えば、前述のシクブルの場合、2~30枚あれば1枚は偽物といっても過言ではない。見分けるには専門知識が必要です。その見極めは、企業秘密なので明かせないのですが、細かな違いがあります」

 鑑定というビジネスである以上、偽物が流通することで、その存在が注目されるというのも事実。同スタッフは「偽物が多いということ、また犯罪は、業界全体の衰退に影響する。二律背反の想いがありますが、私たちは私たちのやり方で贋作撲滅に貢献していきたい」と語る。現在もコレクターである同社スタッフの、TCGへの愛がビジネスにつながったといえるだろう。

『ARS』には世界に1枚しかないカードの資料も存在するという。それらは2~3年前、数千万円と言われていたもの。今では2~3億円、またはそれ以上の価値と言われている。時代は移り変わり、投資・投機対象も移り変わっていく。今後、TCG市場がどこまで盛況を見せるか、注視しておきたい。

取材・文/衣輪晋一

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