プレゼント・クーポンPRESENT COUPON

フェリアSNSSOCIAL

映画・アニメ

メディアミックスの中核を担う存在に 縦読みコミックは新たな商機

画面ワンシーンで縦にスクロールして読み進めるスマホ時代の新コミック“タテスク”の画像

画面ワンシーンで縦にスクロールして読み進めるスマホ時代の新コミック“タテスク”

 2021年の電子コミック市場は、前年比2割増となる4千億円突破と大きな成長をみせた(出版科学研究所調べ)。コロナ禍での巣ごもり需要で獲得したユーザーが定着したことや、『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『東京卍リベンジャーズ』など大ヒット作の電子版のヒットが市場をけん引。それに加え今、新たな商機として注目を集めているのが、WEB上で縦にスクロールして読むマンガの台頭である。スマホで気軽に読めることから、従来のマンガに接してこなかった新たな読者層を開拓してマーケットを拡大し、数百億円規模の市場となっている。昨年8月、この新たなスタイルに特化したレーベルを開設し、海外やメディアミックスも視野に入れた展開を行う、KADOKAWAの「タテスクコミック」編集部に、現状や今後の展望を聞いた。

【写真】ドラマ『梨泰院クラス』原作は韓国発のマンガWEBTOON

■マンガを読んでこなかった新規層を取り込んだ新カルチャー

 スマホ画面を縦にスクロールして読む韓国発のマンガWEBTOON(ウェブトゥーン)。Netflixでドラマ化され、現在、日本版の制作も予定されているヒット作『梨泰院クラス』をはじめ、今年1月に配信開始して、Netflix全世界のTVショー部門のグローバル視聴1位を獲得したゾンビドラマ『今、私たちの学校は…』など、グローバルに人気を集める映像コンテンツの原作を多数生み出し、エンタメ界における存在感を急速に増している新カルチャーだ。

 スマホで気軽に読める縦スクロール型のコミック(以下タテスク)は、ここ日本においても従来のマンガを読んでこなかったユーザーを新たに掘り起こして、市場規模を拡大している。この分野に早くから着目して市場の調査研究を続けていたKADOKAWAが、自ら制作も行うべく新レーベル「タテスクコミック」を立ち上げたのは昨年8月のこと。自社が版権を持つ既存のマンガの縦スクロール化をはじめ、新たにオリジナル作品の制作にも着手し、22年3月末時点で60作品を超す連載をスタートさせている。その手応えについて、タテスクコミック部部長の寺谷圭生氏は「新たなユーザー層の獲得を実感している」と語る。

「我々出版社がこれまで接してきたお客様というのは、紙の本であれば書店に足を運んでいただける方、電子コミックであれば電子コミックストアのユーザーが中心でしたが、“タテスク”の場合は、すき間時間にスマホでソーシャルゲームやSNS、動画などのコンテンツを楽しむ層に受け入れられていることを実感しています。マンガファンだけでなく、これまで我々が守備範囲とせず、リサーチも行ってこなかった層も獲得できる可能性のある市場ですし、まだまだ潜在読者がたくさんいらっしゃるのではないかと考えています」

 今年3月には、レーベル開始半年を記念した「ハーフアニバーサリーフェア」を2週間限定で開催。無料話数の拡大(3話→6話)、ポイント還元施策を電子ストアと連携して実施し、宣伝も山手線の駅ホームドアをはじめ、TikTokやYouTube、Instagram等のマンガ好きに限らない層のみなさまにも訴える施策を実施したところ、「フェア後も継続的に読んでいただけるような結果になっています」(寺谷氏)と、大きな手応えを感じている。

■オールカラー、縦スクロールがグローバル展開を可能に

 新たな層に訴求した背景には、タテスクが生み出した新しいマンガの読み方がある。日本のマンガが見開きのコマ割りで複数の場面を表現しているのに対して、コマを使わず、1画面ワンシーンで縦にスクロールして読み進めるスタイルは、言わば映画フィルムのような長い巻物といった印象だ。さらにフルカラーで臨場感や迫力が味わえるところも、マンガというよりは、アニメーションに近い。それを象徴するように、「ユーザーはタテスクを『読む』ではなく、『見る』と言う」と寺谷氏は語る。

 さらに、この新スタイルは、グローバル展開する上での大きなアドバンテージにもなっている。これまで海外にも多大な影響を及ぼしてきた日本のマンガ文化だが、一方で、日本独自の慣習や様式ゆえに、海外のコミックとの相違点も多々あった。その代表例が文字組みの違いで、グローバルでは右開きながら文字は左から読むレイアウトなっているため、読みづらさがネックになっていた。また、モノクロであることから、完成版でないと思われる節もあった。

「アメコミはカラーですし、マンガを読む前にアニメ版の動画を見た人からすれば、買って本で読んだらモノクロというのはやや物足りない印象を与えることもあります。タテスクは最初からフルカラーなので、海外のお客様によりエキサイティングでリッチな読書体験を提供できます」(寺谷氏)

 フルカラーであることで、よりアニメに近いコンテンツとなっているため、その作り方もまた、アニメや映画に近い。また、昨今では、脚本家や作画者、彩色をするカラーリスト、ディレクターなど、アニメや映画のような分業・スタジオ体制で制作することも多く、KADOKAWAでもその体制を取り入れた作品づくりに挑戦している。タテスクコミック編集部課長・坂野聡氏は言う。

「1人の作家が話を作り、絵を書いて、色を塗ってというほうが作家性は発揮されやすいという面は確かにありますが、スタジオ制作だからそれがなくなるということはありません。まだ歴史が浅いだけに、何がヒットするのかわからない状態です。今、それぞれのスタジオが、少しでもヒットの確率を上げるために、それぞれの特性を発揮して試行錯誤している状態で、我々も日本で培われてきたコミックの作り方もリスペクトしつつ、アジアにあるグループ会社との連携も行うなど、いろいろな座組みでいろいろな作り方にトライしていきたいと考えています」

■今後はメディアミックスの中核を担う存在に タテコミのポテンシャルの高さ

 フルカラー、分業制などにより、従来のマンガ作品より3倍以上もの制作コストがかかると言われているが、国内の新たなユーザー層に加え、世界に市場が広がっているだけに、「コストをかけてでも取り組む意義はある」と両氏は期待を寄せる。今後5年間で300作品のリリースを目指すとともに、この新たな読ませ方・見せ方を実現するために、現在、オールKADOKAWA による『第2回タテスクコミック大賞』を開催しているほか、中国・韓国でも作家を募集するなど、新たな才能の発掘にも力を注ぐ。

「まだ日本では立ち上がったばかりですが、いずれ、韓国のようにタテスクで育ったという若手クリエイターが送り手や作り手となって、この市場はさらに盛り上がっていくと思っています。それまであと10年くらいはかかるかもしれませんが、挑戦し続け、広げ続け、継続し続けていく事が大事だと思っています」(寺谷氏)

 さらにその目は、メディアミックスにも向けられている。

 冒頭、述べたとおり、韓国のWEBTOONからは全世界でヒットしたドラマの原作が続々誕生しているが、ドラマ化だけでなく、今年2月には、LINEマンガがBTSとコラボしたオリジナルWEBTOONとWEB小説を公開。オールカラーで、ワンシーンごとに連続し、映像的な表現に近いタテスクは、音楽や音声とも相性がいいといえるだけに、今後、さまざまなコンテンツが考えられるのだ。

「音楽の付いたアーティストのフィルムブックができるかもしれません。発展途上にある分野ですので、いろいろなコンテンツに発展していける可能性があります。幸いにしてKADOKAWAはアニメも動画もゲームも手掛けておりますので、いろいろなことを実験しながら進めていきたいと思っています」(寺谷氏)

 マンガというジャンルはもちろん、出版というカテゴリーも飛び越えて、アニメやゲームなどスマホカルチャーの中の中間に位置しているともいえるタテスク。今後は、人気カルチャーの1つとしてだけでなく、メディアミックスの中核を担う存在としても、大きく成長していく可能性を秘めている。出版業界以外からの新規参入が増加しているのはその証左とも言えるだろう。このポテンシャルの高さにより、今後この新カルチャーがどのように発展していくのか興味は尽きない。

文・河上いつ子

ORICON NEWSは、オリコン株式会社から提供を受けています。著作権は同社に帰属しており、記事、写真などの無断転用を禁じます。

こちらの記事もどうぞ