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“背徳”味わう「マリトッツォ」ブームは健康志向の反動? 日本のトレンドスイーツ変遷

今年多くの飲食店やメーカーで発売され、一大ブームとなったマリトッツォ(素材提供:笹木理恵)の画像

今年多くの飲食店やメーカーで発売され、一大ブームとなったマリトッツォ(素材提供:笹木理恵)

 イタリアで古くから親しまれてきた伝統菓子・マリトッツォ。日本では、今年各メーカーや飲食店が相次いで発売し、おはぎにクリームを挟んだ“はぎトッツォ”、魚をシャリで挟んだ“寿司トッツォ”など、派生スイーツも話題に。流行語にもノミネートされるほど、一躍トレンドスイーツとなった。一見味わいの新しさはないようにも思える“マリトッツォ”が、ここまでブーム拡大した理由は何だったのか。これまでのトレンドスイーツ流行変遷とともに、フードライターの笹木理恵氏に聞いた。

【画像】1週間で5000個販売、スタバのアレンジ加わった『マリトッツォ』

■伝統菓子・マリトッツォはなぜ今年流行ったのか?「シンプルさ」と「言葉の響き」

 イタリア・ローマでは、クリームの中に婚約指輪を入れて贈る風習もあるというマリトッツォ。日本では昨年から発売する店舗が続々登場し、その発祥は福岡のパン屋といわれているが、そこからブームを拡大させたのは、スターバックスが運営するイタリアンベーカリー『プリンチ』だと笹木氏は分析する。

「『プリンチ』で2020年に発売され、その後、イタリア食材専門店『イータリー』や輸入食品店『カルディ』、町のベーカリーや菓子店、コンビニ各社でも発売されるようになり、盛り上がっていきました」

 ブリオッシュ生地に生クリームというシンプルな仕立てながら、ここまで全国的なトレンドとなったのは、なぜなのだろうか。

「ヒットするスイーツに共通する特徴として“(おいしさが)わかりやすい”、“つくりやすい”ということがあります。作り方が難しい商品だと、提供する店舗が限られ、全国的な広がりにはならないからです。また昨今は当然“SNS映え”も、ヒットする商品に必須の条件です」(笹木氏、以下同)

 シンプルな仕立てだからこそ町のパン屋などでも真似がしやすく、マリトッツォを初めて見る消費者でも味の想像がしやすいこと、また、中のクリームや具材によってバリエーションが増やしやすく、売り場でも映える存在になったことから、年間を通して今年を代表するスイーツとなったのだ。

「マリトッツォは周りがパン生地なので、複雑なスイーツに比べると、比較的型崩れしにくく、パック詰めして売りやすかったことも新商品開発につながったと思います。例えば山崎製パンなどでは、常温帯の商品も出していたので。チルド、常温両方で展開できるというのは、強みかもしれません」

 さらに、地方スーパーの“はぎトッツォ”や弁当チェーン店・古市庵の“寿司トッツォ”も話題となり、“トッツォ”を多用した言葉遊びを楽しむかのようなムーブメントも、今年1年、SNS上で度々見られた。

 数年前には、“タピオカは名前に「ピ」が入ってるからみんなに好かれてるだけ。「ガボ玉」みたいな名前なら絶対に流行ってない”といったツイートが大きな反響を呼んだことがあったが、マリトッツォも同じく、「トッツォ」の言葉の響きを持って、さらなる莫大な拡散力を生んだのだろう。

■ティラミス、タピオカ、マカロン… SNSによりますます加速するトレンド回転率

 同じくイタリア発祥で、日本において一大ブームとなったスイーツといえば、ティラミスだ。平成初期、“イタメシ”ブームの流れから、1986年にデニーズがメニューに導入。その後、女性誌『Hanako』で紹介されたのをきっかけにブレイクした。女性誌がスイーツのトレンドを生み出すという流れを作り出すきっかけにもなった。

「当時、ティラミスの材料であるマスカルポーネチーズは、一般のスーパーで手に入らない代物でした。“家で作ってみたい”と思っても、材料が手に入らないため、外食時に食べる“ちょっと贅沢で、おしゃれなデザート”だったのです」

 その後、フィリピン発祥のナタデココ、再びイタリア発祥のパンナコッタ、その場で手軽に食べられるベルギーワッフルがブームに。スイーツが“日常化”した2000年代に入ると、一工夫加えられた生キャラメルやマカロン、半熟カステラなどが話題に。

 世界中のあらゆるスイーツが出尽くされたと思われた2010年代にも、原宿や表参道を起点に新たなムーブメントがどんどんと生まれていった。パンケーキやポップコーン、かき氷など、これまで親しまれてきたシンプルなスイーツが“SNS映え”という強力な拡散力を兼ね備え、進化版として再び脚光を浴びるようになったのだ。

 それから「チョコミン党」によるチョコミントの再注目、タピオカの再ブーム、高級パフェ、バスクチーズケーキと、トレンドスイーツの回転率は年々勢いを増しているようだ。

 時代によって、ブームとなるスイーツの特徴や志向は変化しているのだろうか。

「その時代時代での特徴はありますが、やはり新鮮さを感じやすい海外から上陸したスイーツはブームになりやすい傾向があると思います。大きく分けて、アメリカ(ドーナツ、パンケーキ)、ヨーロッパ(バスクチーズケーキ、マリトッツォ、昔だとティラミス)、アジア系(タピオカ、台湾カステラ)に分けられるかなと思います。

 最近では、若者が集まる町や店舗だけに収束せず、コンビニ各社で発売されてブームが加速する傾向はあるかと思います(後者では、ピスタチオ、チョコミントなど)。今回のマリトッツォのように、“生地&クリーム”はショートケーキやシュークリームと同様、日本人が好きな組み合わせですし、近年は健康志向の反動として、“背徳スイーツ”なども一部で話題になっていたので、“クリームをたっぷり食べたい”というニーズにも合致したのかと思います」

■トレンドは“メーカー発”から“SNS発”へ 和菓子の世界的ブームなるか

 これまでブームとなったスイーツは、やはり海外のものばかりだ。日本の菓子が爆発的にヒットしたり、海外でブームとなったりしたものはあるのだろうか。

「和菓子以外は“海外のスイーツ”というくくりになるので、言ってしまえばほとんどが“海外のスイーツ”になるかと思います。和菓子でヒットした商品だと、最近ではクリーム大福でしょうか。近年は、純粋な和菓子よりも、クリームやバターなど洋菓子の素材を合わせたほうが若い層に売れやすい傾向もあり、和菓子離れが進んでいることも大きく影響しているかと思います。

 ただ、ショートケーキやシュークリームなどは、ルーツは海外ですが、日本で独自に進化してきたもので、日本人はそうしたアレンジは得意ですし、おいしさの面では海外より優れた商品はたくさんあるのかなと思います」

 今後、正真正銘、日本発のスイーツがブームとなることはないのだろうか。

「ファッションにしても建築にしても、海外への憧れが強く、“日本初上陸”的なものに弱い国民性があると思うので、昔ほどでないにしろ、海外発のスイーツがトレンドになりやすい傾向は今もあるのかなと思います。

 また現代は、世界中の情報にすぐアクセスできる時代です。日本のお菓子業界も成熟期を迎えており、ゼロから新しいスイーツを生み出すというのは、とても難しいことだと思います。ですので、海外の郷土菓子や、ヒットしている商品に着目して日本に持ってくる、というのは、メーカーにとっても自然な流れかなと思います」

 ティラミスしかり、タピオカにしてもマリトッツォにしても、グルメやファッションにおいて、もともと世の中にあったものが突如注目される現象は少なくない。これまでであれば、いわゆる“トレンド”はメーカー側の施策によるところが多かったかもしれないが、SNSがある今、誰しもが新たなムーブメントを起こせる時代となった。その分、情報の競争率は年々高まる一方だが、平仮名や漢字の名がついた日本の菓子が世界に名を轟かす日がいつきてもおかしくない時代だ。

 笹木氏曰くトレンドスイーツの条件である、“わかりやすさ”、“つくりやすさ”、“言葉の響き”、“見た目の華やかさ”を兼ね備えた和菓子が、世界的ムーブメントを起こす日をいつしか期待したい。

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