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“行き倒れ”に“余命宣告”、猫たちの過酷な運命に抗うボランティア「やれることはすべてやりつくした」

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『ねこけん』に救われた、いがちゃん(左)とあげお(写真:ねこけんブログより)

 NPO法人『ねこけん』は、日々さまざまな保護猫のエピソードをブログにアップしている。懸命に外で生きる猫、ケガや病気の猫、そして人間の手で救われた猫…。ここでは、2021年とくに反響の大きかった猫たちの物語をあらためて紹介する。『ねこけん』によって救われた“いがちゃん”と“あげお”は残念ながら虹の橋を渡ってしまったが、短い命を懸命に生きた。猫たちを見守った代表理事・溝上奈緒子氏のコメントとともに振り返る。

【写真】びしょ濡れ行き倒れ猫「いがちゃん」、愛され亡くなるまでの1ヵ月

■びしょ濡れで行き倒れていた地域猫、「もう治らない」向き合った“緩和ケア”

 「猫がびしょ濡れで倒れているんです」と、通りすがりの人が『ねこけん』に駆け込んできたという。その日は雨。「低体温になっている可能性があるので、温めるためにドライヤーを用意して事務所で待機していました」と、当時を振り返る。しかし、現場に赴いたメンバーから送られてきた猫の写真を見て、「もうダメだ」と半分諦めに近い気持ちだったそうだ。だが、かすかに息がある。事務所へ搬送して必死にドライヤーで温めるも、体温が低すぎて体温計でも測れない状態。痙攣が起きたためにタオルを口にくわえさせ、なんとか命の危険を乗り越えた。

 意識が戻ると、猫はヨロヨロしながらも美味しそうに“ちゅ~る”を舐めた。この猫は井頭公園近くで行き倒れていたことから「井頭(いがしら)12:50」、通称いがちゃんと命名された。

 一命を取り留めたいがちゃんだが、さらに過酷な運命が待っていた。「口の中に腫瘍があることがわかったんです。扁平上皮癌というもので、『もう治らない』と獣医師から言われて。あとは看取ることしかできませんでした」。

 いがちゃんの未来が判明してからは、「みんなにいがちゃんを覚えてもらうために」と、いがちゃんのいろいろな表情をブログに載せた。その名も、『いがちゃんチャレンジチェック』。そこには、口の周りをちゅ~るで汚して得意げな顔、メンバーに抱かれて楽しそうな顔、清潔なベッドでゆっくりと眠る顔など、様々ないがちゃんの写真がアップされた。

 「いがちゃんは本当にちゅ~るが大好きでした。もう治らないとわかってからは、栄養よりもいがちゃんが食べたいものをあげて、緩和ケアだけを考えたんです。最後は穏やかに亡くなりました」。

 いがちゃんを保護して、わずか1ヵ月後のことだった。

 そしてもう1例。茶白でおとなしい雄猫の「あげお」は、とても甘えん坊な猫だった。だが、『ねこけん』で保護する前は精神的に不安定で、分離不安症と診断されて向精神薬を飲んでした。実は、猫が精神病を患うことは決して珍しくない。分離不安症は飼い主と離れることで心が不安定になり、問題行動を起こす症状。あげおの場合、かなりひどく鳴いてしまうということだった。

 だが、『ねこけん』のシェルターにやってきたあげおを見た溝上氏は、「この子は何も問題ない」と判断。たしかに、最初こそ不安そうに鳴いていたものの、しばらくするとそれも収まり、同じく保護されていた猫たちと打ち解けた。ちなみに名前の由来は、あまりにおとなしい猫だったため、もっと猫らしくわがままに元気になってほしいという願いを込め、「アゲアゲで行こう!」という言葉から「あげお」と命名されたそうだ。

 『ねこけん』に来てからは安定した生活を送っていたあげお。薬を飲むこともなく、精神的にも問題ない。あとは幸せな家族ができることを待つばかり…のはずだった。ある日、あげおは体調を崩した。

 病院で血液検査を行った結果、慢性腎不全と診断。つかの間の安定した生活から一転、あげおは入退院を繰り返すようになる。投薬に点滴と、毎日のケアが必要な状態となり、ボランティアメンバーはお盆休みを返上し、自らの仕事もありながら、懸命にあげおに付き添った。だが、その甲斐なく、あげおの腎臓はもうほとんど機能していなかった。獣医師から宣告されたのは、「余命2週間」――。「今となっては、当初飲んでいた向精神薬が腎臓に影響したのかどうか、それはわかりません。でも、私たちもやれることはすべてやりつくしました」。

 余命宣告の2週間が過ぎても、あげおは生き続けた。そこで、2週間が過ぎた10月1日から、あげおの姿をYouTubeにアップすることにした。

 甘えん坊なあげおは、膝の上に乗ることが大好き。同じく甘えん坊のクロエと膝の上の陣取り合戦を繰り広げることもあった。「本当に膝乗りが大好きで、メンバーも他の仕事ができなくなるほど、ずいぶん占領されました」。『ねこけん』のYouTubeには、そんな愛らしいあげおの毎日が残されている。

 10月8日、余命2週間と言われたあげおは、息を引き取った。宣告を受けてから約3週間、がんばった。我慢強く、おっとりしていて、膝の上に乗ることが大好きだったあげお。一緒に腎不全と闘った『ねこけん』メンバーに見送られ、眠るように虹の橋へと旅立っていったという。あげおのために空けていた膝の上は、今も空いたままだ。

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