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B’z、プレミアム公演『LIVE FRIENDS』で示した音世界 新たな地平開く

「B'z presents LIVE FRIENDS」東京ガーデンシアター公演の画像

「B'z presents LIVE FRIENDS」東京ガーデンシアター公演

 松本孝弘が紡いだメロディーと、稲葉浩志の妖艶な歌声。これほどまでに、2人の“歌”が観客の心を大きく揺さぶったことがあっただろうか。そう感じてしまうほど、B’zの長いキャリアの中でも特筆すべきスペシャルなライブであった。そしてそれは、コロナ禍でも立ち止まることなく歩みを続けた彼らだからこそ、切り開くことができた新たな地平線だと言えるだろう。

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■ファンと“つながろう”アプローチし続けたコロナ禍の歩み

 11月16日、17日の2日間、東京ガーデンシアターで開催された『B’z presents LIVE FRIENDS』。これは、12月8日にリリースされる最新作『FRIENDS III』の楽曲をライブという場で初披露しようというもの。FRIENDSシリーズは1990年代に2作リリースされたコンセプト・アルバムで、映画のサウンドトラックのように全体を通して1つのストーリー性を持たせた『FRIENDS』(92年)と、1曲ずつそれぞれが独立したストーリーで構成された『FRIENDS II』(96年)が発表されている。しかし、彼らの代名詞でもあるハードロックなサウンドと作風が大きく異なるため、FRIENDSシリーズの楽曲は、これまでのライブではほとんど演奏されてこなかった。それもあり、本ライブは超プレミアムな公演として大きな注目を集めた。

 実際、非常に素晴らしいライブではあった。しかしながら、本ライブを単に「新曲が披露された」「激レア選曲だった」で片付けてしまっては、その本質が見えにくくなってしまう。そこでまず、ここに至るまでの、コロナ禍におけるB’zの歩みを簡単に振り返ってみたい。

 2020年春、あらゆるエンターテインメントがコロナ禍で一時停止せざるを得ない状況へと陥ってしまった中で、B’zはいち早く始動する。4月13日に公式YouTubeチャンネルで歴代ライブ映像作品を期間限定で無料公開。さらに4月27日には、松本と稲葉が各自宅スタジオで、いわば“普段着”で98年発表の楽曲「HOME」をリモート・セッションする動画『B’z “HOME” session』を作成。自宅で楽しめるエンターテインメントを大勢の音楽ファンに届け続けた。

 そして10月31日からは5週連続で、自身初となる無観客配信ライブ『B’z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820-』を開催。デビューした1988年から2020年までを「5つの時代=5 ERAS」に区切り、各時代の楽曲でセットリストを組むという実に意欲的な内容だった。そしてその映像の端々から伝わってきたのは、画面越しにしか会うことのできない全国各地のファンと“つながろう”という気持ちであった。彼らほどのビックネームであれば、演奏している姿を見せるだけでも、きっとファンを喜ばせることができるはずだ。しかし2人は、歌い、ギターをプレイし、そして全身全霊を捧げてオンラインの視聴者とつながろうとした。しかも全セットリスト・ステージセットを総入替えで、5週連続で行ったのだ。

 こうした独自のアプローチを横方向にも広げるべく、今年9月にはB’z自身がオーガナイザーとなって、Mr.Children(大阪/9月18日・19日)とGLAY(横浜/28日・29日)を迎えてロック・プロジェクト『B’z presents UNITE #01』を敢行。それは、前出の『B’z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820-』に続く新たな挑戦という側面だけでなく、同志とも言えるMr.Children、そしてGLAYとの奇跡の化学反応により、自らの未知なる可能性を拡張させていこうという貪欲な姿勢を強く感じさせるものであった。

 コロナ禍における挑戦と、そこで得た新たな経験値、そして長年のキャリアで培った高い音楽性。これらを携え、ファンのために満を持して開催したのが、今回の『LIVE FRIENDS』だったと言えよう。

■きらびやかさと重厚さをまとった“現在進行形”のB’zサウンドを満喫

 ライブが始まり、まず目を見張ったのは、通常のバンド編成に加えて、10人編成のストリングス・セクションと、3人のホーン・セクション、フルート、バックコーラス(稲葉はアンコール時に“バックアップボーカル”と紹介していた)を従えた、総勢20名のサポート・メンバーでの演奏だ。

 サウンド的にも、ストリングスはFRIENDSシリーズの世界観を表現するために随所で重要な役割を担い、「Love is…」に続いて演奏された「恋じゃなくなる日」のインロトでは、原曲にはないホーンが加わることで、きらびやかさと重厚さをまとった“現在進行形”のB’zサウンドを満喫させてくれた。いずれも、この日の編成でなければ実現できなかった音世界だ。また、「傷心」では、フルート・ソロやバックコーラスを大々的にフィーチャー。まるでゲスト・ミュージシャンを招いてのセッション的な感覚をステージに取り入れており、これがまたとても新鮮だった。もしかしたら、コロナ禍で他アーティストと積極的にコラボレーションしてきたことがもたらした、ひとつの音楽的な変化なのかもしれない。

 視覚的には、ステージ上方にシャンデリアが吊り下げられ、サウンドのみならず、全体的にクラシック調の落ち着きある空間を演出。「ド派手でハードなスタジアム・ライブ」というパブリック・イメージとは一線を画す、とてもシックなステージであった。そして『FRIENDS III』から披露された「シーズンエンド」や「ミダレチル」などの新曲では、ステージ後方にスクリーンが現われ、新譜のジャケットをイメージさせる風景が絵画のような存在感で映し出された。決して歌を邪魔することなく、例えるならば、モノクロ無声映画のように聴き手の想像力を膨らましてくれる穏やかな映像で、各曲の味わいをより深めてくれた。

 音源のリリース前に、ライブで新曲を披露するというのは、ベテラン・アーティストであってもかなりの冒険だったと言えるだろう。しかし、あえてそれを選んだのは、話題性やイベント性ではなく、「今の時代に作った歌を、同じ時代を生きるファンに聴いて欲しい」という想いからだったのではないだろうか。

 新譜『FRIENDS III』は、コロナ禍の2021年だからこそ生まれた作品だと言って過言ではない。アメリカと日本を行き来する松本は、日本帰国時の隔離期間中に“1日1曲”という作曲ノルマを自らに課す。その中で生まれてきた楽曲たちが、25年の時を経て、自然とFRIENDSシリーズのコンセプトに導かれていったのだと言う。そして、提案を受けた稲葉が、「今このタイミングではないか」と意気投合し、このアルバムが完成した。

 つまり「シーズンエンド」や「ミダレチル」をはじめとする新曲は、松本と稲葉のコロナ禍の日常から生まれた歌と言える。誰しもがままならない日々を送っており、それはロックスターといえども例外ではない。言い換えれば、それだけ観客の日常と近いところから生まれた新曲たちを、生の歌声で、ダイレクトに観客に届けようと考えたのが、『LIVE FRIENDS』なのではないだろうか。

■「座って歌をじっくりと聴くライブ」着席・声出し禁止を逆手に取った粋な演出

 しかもこの日は、着席・声出し禁止のライブ。でもだからこそ、通常のライブ・スタイルならば大声援にかき消されていたかもしれない、稲葉が歌で表現する繊細な言葉のニュアンスや、松本の指先が生み出す多彩な音色のバリエーションまで、観客はしっかりと受け取ることができた。もし立ち上がって、踊りながら聴けたとしたら、楽しかったという想い出は残っても、新曲の印象は、「よかった!」くらいの薄いものとなっていたかもしれない。そうならないために、「立ってはいけないライブ」「歓声を上げちゃいけないライブ」を、「座って歌をじっくりと聴けるライブ」に変えたのだ。それは1年前、オンラインで視聴者とつながろうとした2人が、次に満員の観客と対峙した時に一番大切にしたいと感じた部分だったのかもしれない。

 新曲を初めて聴く行為は、一度きりのものだ。その貴重な経験を、松本と稲葉は、自分たちの歌声と演奏で、観客に直接手渡ししようとした。色気たっぷりな稲葉のハイトーンが、グラデーションのように松本のレスポール・トーンに溶けながら高揚していく珠玉のサウンドは、間違いなく観客の一生涯の宝物となったであろう。

 ただ、その場には6700人(2日間で13400人)しか立ち会えなかった。しかしB’zは、決して会場にいるリアルな観客だけを見ていたのではない。きっと、収録カメラの向こう側にいる大勢のファンともつながろうとしてたはずだ。そんな想いは、配信映像を見れば感じられるはず。

 全国各地のファンのために、本編最後に歌われた名曲「いつかのメリークリスマス」を含めたこの日の公演の様子は、まさにクリスマス・イブの12月24日(金)から配信がスタートする(~22年1月3日)。稲葉がMCで何度も口にした「本当に会いたかったです」という言葉は、この日の観客だけでなく、画面の向こう側にいる、すべての人に届くはずだ。

文・布施雄一郎

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