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「お風呂が沸きました」給湯器メロディ開発秘話 ノーリツが“国民的生活音”に込めた“あたたかい”想い

1997年、ノーリツは業界初となる給湯器のリモコンにお湯はり完了を知らせるメロディを搭載した。の画像

1997年、ノーリツは業界初となる給湯器のリモコンにお湯はり完了を知らせるメロディを搭載した。

「タララ~、タララ~、タララ~ラ~、タララ~ラララ~ラ~ラ~、ララララン♪」。お風呂が沸いたことを知らせる音として、すっかり定着したノーリツのお湯はり完了を知らせるメロディ。このメロディと「お風呂が沸きました」というアナウンスが、今年3月に、特許庁の音商標として登録を実現。さらに10月にはバンダイとコラボし、このメロディと音声を搭載したミニチュアの給湯器リモコンをカプセルトイとして販売すると、売り切れが続出し話題となっている。すっかり世間に浸透したこの“国民的生活音”は、どのように誕生したのか?販売元のノーリツに開発秘話とこのメロディへの思いを聞いた。

■メロディ開発のきっかけは家電の報知音を聞き分けるため

 ノーリツが業界で初めて給湯器のリモコンにお湯はり完了を知らせるメロディを搭載したのは、今から24年前の1997年。当時、玄関の「ピンポン」から始まって、冷蔵庫や洗濯機、炊飯器、エアコンなどなど、家の中には似たような報知音(ブザー)を搭載した家電がたくさんあることから、「聞き分けができるメロディにしたほうがよいのではないか」と考えたのが、そのきっかけ。さらに、「お風呂が沸きました」をはじめ、給湯温度や設定温度の変更などのアナウンスを搭載することで、目の不自由な人や高齢者に分かりやすく、安全に使用してもらえるよう開発に取り組んだという。

【動画】今や“国民的生活音”…ノーリツ公式「お風呂が沸きました」メロディ+アナウンス

「お風呂は一歩間違うと思わぬ事故につながる可能性もありますから、給湯温度などを声でお知らせすることは重要だろうと考えたと聞いています。発売後は、近視の方々からも、お風呂は曇ってしまって、メガネをはずした状態だと設定温度などの画面の数字が見づらくなってしまうので、音声案内は非常にありがたいというお声を多数いただいたそうです」(ノーリツ コーポレートコミュニケーション部 北前可奈子氏)

 実は、メロディが、ドイツの作曲家テオドール・エステン(オースティン)のクラシックのピアノ曲『人形の夢と目覚め』の第2部『夢を見ているところ』の一節に決定したのには、このアナウンスの開発が大きく影響していた。

■アナウンスもメロディもこだわった、人の「ぬくもり」

「(当時の)音声ICに入るデータ容量には限りがありますので、搭載するアナウンスを考えると、お湯はり完了を知らせるメロディと『お風呂が沸きました』の音声に使えるのは11秒くらい。その時間にきれいにおさまるメロディというのが必須条件でした」(北前氏)

 新商品の開発期間は限られており、このために新たにメロディを開発するのは現実的ではない。開発チームは、さまざまな音楽を聴くなかで、「1日の締めくくりに穏やかな気持ちになれる」という理由から、まずはジャンルをクラシックに限定。さらに、数多あるクラシックの楽曲のなかから「お風呂に入る高揚感と幸福感を感じてほしい」という思いのもと、「11秒の中で、テンポを速めることなく、ゆったりとキレイに収まる」と選んだのが、『夢を見ているところ』だった。

 開発にあたりもうひとつ重視したのは「ぬくもり」だった。当時、機械音が当たり前だったICのアナウンスにプロのナレーターの生声を採用した。

「当時のICの音声は今以上に、機械的な冷たい感じだったそうです。1日の終わりにリラックスして聞くのにあまり耳障りがよくなかった。人の声で『お風呂が沸きました』と言われた方が、ホッとするということで、こだわったと聞いています」(北前氏)

「当時、アナウンスに『人の声』を使った商品は少なかったので珍しさがあったと思います。加えて、弊社の創業の原点は『お風呂は人を幸せにする』。そういったところも開発者の気持ちにも大きく関係していたんだと思います」(ノーリツ コーポレートコミュニケーション部 寺島喜芳氏)

 さらにあのメロディも、グループ会社の従業員が弾いたシンセサイザーの録音をデータ化し、搭載したものなのだという。

「決してお金がなかったわけではなく(笑)、アナウンス同様、人が弾いたほうがホッとする音になるだろうという考えからでした」(北前氏)

 こうして実現した業界初の給湯器のメロディ&ボイスリモコン。だが先のとおり、アナウンスは発売当初から高い評価を得たものの、メロディについての利用者の反応は薄く、同社が手ごたえを感じたのは、四半世紀近く経った最近のことだという。

「長年同じ曲を使い続けたのが大きかったのでしょうか。お客様から『給湯器を取り換えるんですが、音は変わっていませんか?』という確認のお電話をいただいたり、音商標の登録が実現した際には、『小さい頃から聞いているので、新聞で記事を読んでうれしかった』と言われるなど、ありがたいお言葉をたくさん頂戴しています」(北前氏)

■「『ノーリツのお風呂』と想起できる」と、特許庁も認めた異例の音商標

 こうした利用者からの声があったからこそ、今年3月にクラシック音楽を含む音声で初となる特許庁の音商標が認められ、10月にバンダイとのコラボでカプセルトイ『ガシャポンサウンド NORITZ 給湯器リモコン~お風呂がわきました~』が誕生したといえるだろう。音商標については申請から一度は拒絶され、登録まで実に3年半の月日を要したそう。

「商標は権利を守るために登録するものですが、弊社はみんなが愛しているメロディとアナウンスを『ノーリツのものである』と認知してほしいと思って申請しました。一度拒絶されましたがその理由は、クラシック音楽は通常視聴して楽しむもののため、音商標としての登録が非常に困難であり、『お風呂が沸きました』もまた、当たり前の言葉でありノーリツと紐づけるのは難しいと判断されてのことでした」(北前氏)

 拒絶されたあとも、同社はCMやテレビで著名人が話題にしていた映像や、お湯はり完了メロディについて記載した社内報など、このメロディ+アナウンスが長年にわたり広く使用され、ノーリツという企業名を容易に想起できる証明となるさまざまな資料を集め、再度審査官と面接し、説明。そして70周年の記念すべき今年、見事、登録が実現した。クラシック音楽を含むメロディが初めて認められたことはもちろん、社名も商品名入らない音商標は大変珍しく、その快挙は知的財産のまつわる注目のニュースを紹介する特許庁の広報誌にも掲載されたほどだった。

 約四半世紀の歴史を積み重ね、曲名は知らなくても“お風呂の音”として広く浸透したことについて、率直な感想を聞いてみると……。

「給湯器は一家に一台あって、屋外で雨にも負けず風にも負けず日々働いているのに、当たり前すぎて、故障するまでその存在をあまり意識されていません。ですから、メロディを通じて、愛着をもっていただいていることは本当にうれしいです。当時の開発担当者に話を聞くと、『“お風呂が沸いたといったらこのメロディ”というふうに馴染んでほしいと願ってはいたけれど、まさかここまでになるとは思っていなかった』と驚きつつ、非常に喜んでいます。これからも、弊社がミッションとしている『新しい幸せをわかすこと。』をもとに、商品やサービスを通じて幸せをお届けできる会社になっていきたいと思います」(北前氏)

「日本の生活者の音として認識されている以上、この音を変えるということは考えられません。次の世代にも“国民的お風呂の音”と思ってもらえるように、今後も大切にしていきたいと思います」(寺島氏)

取材・文/河上いつ子

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