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緊迫の医療現場を癒した音楽の力 横須賀市立うわまち病院が導入したBGMサービスの成果

医療従事者の士気を高めるべくBGMサービス「Smart BGM」を導入した横須賀市立うわまち病院の画像

医療従事者の士気を高めるべくBGMサービス「Smart BGM」を導入した横須賀市立うわまち病院

「音楽はコロナ禍の医療現場を救えるか?」――新型コロナウイルス感染症拡大が長期化し、医療従事者への負担が増加する中、今年2月、公益社団法人地域医療振興協会 横須賀市立うわまち病院(以下、うわまち病院)は、医療従事者の士気を高めるべく、ユニバーサルミュージックの業務用BGMサービス「Smart BGM」を導入。その成果を先の題目で、9月に開かれた第62回全日本病院学会で発表し、「医療従事者が感じるストレスの軽減に大きく寄与し、様々な場面で医療者や患者を支えことができる」と総括した。海外では、音楽療法が認知症患者の行動・心理症状に効果があることも報告されるなど、“音楽の力”は今、エンターテインメントの枠を超え、その効果に期待が寄せられている。不要不急では決してないその“力”について紹介する。
 

【写真】横須賀市立うわまち病院が導入したBGMサービス「Smart BGM」操作画面

■退院セレモニーのサインミュージックとして流れたGReeeeN「星影のエール」

 うわまち病院がユニバーサルミュージックの業務用BGMサービス「SmartBGM」を導入したのは、「新型コロナウイルス感染症対策の最前線である医療現場で日々治療にあたる医療従事者を、音楽を活用することで勇気づけることはできないか」という同病院の企画課職員の想いが発端だった。著作権への配慮も含めて、実現に向けて何をすればよいのか。インターネットで検索し、BGMサービスを提供する企業何社かに連絡したところ、もっとも返信が早かったのがユニバーサルミュージックであったという。同社もまた、「医療従事者に対して何かできることはないのか」と考えていたところだった。

 開発本部の石井浩之氏とうわまち病院は話し合いを重ね、感染症病棟において無事回復し、退院する患者を見送る“退院セレモニー”の際に、患者や家族、医療スタッフ間で喜びの共有を行うために流す「サインミュージック」としての利用を病院からの希望などを含めて検討し、GReeeeNの「星影のエール」が採用されることになった。同時に、ナースステーションでは、病院専用のプレイリストを使用したBGM利用が今年2月より始まった。

 9月の学会で発表された活用事例によると、同病院感染症病棟勤務スタッフのうち97.8%の人が「病棟にBGMが導入されて良かった」と回答。その理由については、8割以上の人が「不安感や張りつめていた気持ちが和らぐ」と答えており、緊迫した過酷な医療現場における効果的なBGMの活用が高い効果を発揮したと報告されている。さらに、石井氏が今回の発表で「なるほどと気づかせられた」BGMの効果が、「無音時に比べ、スタッフ間でコミュニケーションが取りやすくなった」という回答だった。

「医療現場の最前線でハードな場面に接し、非常に多くの業務に追われる中、音楽が流れていることで、皆が集まるナースステーションの雰囲気がニュートラルな状態に戻りやすくなるのか、あるいは、同じ空間を共有している感覚が得られるからなのか、いずれにせよ空間づくりにBGMが寄与するところは大きいと感じました」(石井氏/以下同)

■店舗、工場、介護施設での活用から音楽の幅広い効果が立証

 これまで“お店をもっと感動する空間へ”をコンセプトに、個々のブランドイメージや店内の雰囲気の演出などに活用されてきた同社のSmart BGMだが、初となった病院での活用経験を通して石井氏は、「BGMは元来の目的である“働く人のためのもの”としても、日本における活用の幅を広げられるのではないか」とその可能性に期待を寄せる。実際、うわまち病院の発表では、音楽を流すことによって「仕事のモチベーションの向上につながった」という効果も挙げられているからだ。

「BGMの中には、免疫力向上に役立つとされるクラシックのモーツァルト療法に加え、プラシーボ(プラセボ)効果を利用するなどの方法がありますが、うわまち病院ではオルゴールのプレイリストが多く再生されていました。ある看護師の方からは、働く時間にはオルゴール曲を聴き、家に帰ったら自分が好きなジャンルの作品を聴く、というように“音楽で仕事のオン・オフがはっきりつけられる”という声もありました。同じ音楽でも内容に応じてスイッチが切り替わり、生活のリズムを生み出すことは誰にでもあるものだと改めて感じることができました」

 それを裏付けるこんなデータもある。Smart BGMを導入した工場でBGM効果測定を行ったところ、BGM導入前と導入後の比較で作業効率がアップしたことが確認されたのだ。

「BGMによって気分を切り替えられ、作業に集中できたと答えた人が7割以上で、単純作業であればあるほど作業効率を改善させる、というデータが得られました。また、終業5分前にサインミュージックを使用したところ、無音だったときは、終業時間になっても周囲の作業状況によっては切り上げにくい雰囲気があったが、音楽がかかることで終えやすくなったという意見もいただいています。これらは音楽が働き方改革の実現にも寄与することができる、という発想を後押ししてくれるものと思っています」

 他方、海外の文献では、音楽療法が認知症の行動・心理症状やQOL(Quality of Life)に対して効果があることが多数報告されており、日本でも高齢者施設等で積極的に音楽を活用する事例が増えてきている。しかし、「日本ではまだまだ認知が低すぎるし、音楽療法というとどうしてもスピリチュアルなワードに寄ってしまって誤解されるケースも少なくありません」と石井氏。そのために「こちらもしっかりとしたエビデンスを持って学術的に伝えることで、介護施設などでの活用にも積極的にアプローチしていきたい」と語る。

■BGMの価値を向上 ユニバーサルミュージック「Smart BGM」の挑戦

 このように、これまで感覚的な表現で語られていた音楽の効果が、エビデンスで示され始めたことは、音楽産業にとって新たな可能性を切り拓くうえで大きな一歩といえるだろう。その歩をさらに進めるべく、同社では海外の調査結果に頼らず、日本における実証データを増やしたいと考えている。今年10月からは大阪府泉大津市で、Smart BGMを市役所や市立図書館、ワクチン接種会場などに導入。来庁者や来館者に対するサービス向上や、職員の業務効率向上など、音楽がもたらす効果についての実証実験をスタートさせている。

「たとえば、窓口によっては職員が住民の方のプライバシーにかかわる質問をしますので、無音だと周囲に話の内容が聞こえてしまうこともあります。また、ワクチン接種会場では、音楽によっての緊張緩和が期待できます。そういったBGMが持つマスキング効果、イメージ誘導効果、行動誘導効果等を検証し、BGMの価値を、エビデンスを持って向上させることで、今後の事業展開につなげていきたいと考えています」

 最終的には「音楽がなかったところにSmart BGMを広げていき、音楽ってやはり大事だよね、という認識が浸透することを目指したい」と語る石井氏は、そのために「価値を見出していただけるような十分な資料を作って発表していきたい」と力を込める。

 エンターテイメントの枠を超え、様々なシーンで役立ち、生活の質や作業効率までも向上させる“音楽の力”。その効果がエビデンスによって示されることによって活用シーンがさらに広がり、人々の人生や生活に溶け込み、より豊かな社会となっていくことを切に願いたい。

文・河上いつ子

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