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『ほんとうのピノッキオ』“悪童”を演じた子役は“神童” 毎日4時間の特殊メイクに耐えたプロ意識

映画『ほんとうのピノッキオ』ピノッキオを演じたのは撮影当時8歳のフェデリコ・エラピ。木目はCGではなく特殊メイクcopyright 2019 (C)ARCHIMEDE SRL - LE PACTE SASの画像

映画『ほんとうのピノッキオ』ピノッキオを演じたのは撮影当時8歳のフェデリコ・エラピ。木目はCGではなく特殊メイクcopyright 2019 (C)ARCHIMEDE SRL - LE PACTE SAS

 5日より劇場公開された映画『ほんとうのピノッキオ』。ピノッキオといえば、“嘘をつくと鼻が伸びる”エピソードを思い浮かべるかもしれないが、無邪気な操り人形に見せかけて、実は行く先々でトラブルを巻き起こす、“悪童”だった――というのが『ほんとうのピノッキオ』で描かれる。

【動画】ピノッキオができるまでの過程を大公開

 原作は、1883年に出版されたイタリアの作家カルロ・コッローディの児童文学「ピノッキオの冒険」で、これまで数々の映像化作品を生み出してきた。1940年のウォルト・ディズニーのアニメーション映画『ピノキオ』が広く親しまれ、日本ではそのディズニーアニメに影響を受けた手塚治虫が「ピノキオ」を漫画化(1952年)した。いまだ世界中の多くのクリエイターたちの創作意欲を掻き立て続け、2019年公開の本作のほかにも、『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年)でアカデミー賞4部門受賞したギレルモ・デル・トロ監督によるストップ・モーション・アニメ、ウォルト・ディズニー製作のロバート・ゼメキス監督による実写映画の新作企画も進行中だ。空前の「ピノッキオ」ブームと言ってもいい。

 本作は、原作者と同じイタリアのマッテオ・ガローネが(『ゴモラ』『五日物語 -3つの王国と3人の女-』)が、丸太棒が変身したピノッキオの奇想天外な大冒険の原点に回帰して、斬新にビジュアライズ。旅の途上に登場する世にも奇妙な生きものたち、人生の不条理や社会風刺を盛り込んだ寓話的なストーリー展開を、圧倒的な映像美で描き出した。本国イタリアでは2019年に公開され、その年公開のイタリア映画No.1の動員を記録した。

■ピノッキオ役の撮影当時8歳の子役に脱帽

 貧しい木工職人のジェペット爺さんが丸太から作った人形が、命を吹き込まれたようにしゃべり始めた。ピノッキオと名付けられたやんちゃな人形は、ジェペットのもとを飛び出して、森の奥深くへと誘われる。道中、ターコイズ・ブルーの髪を持つ心優しき妖精の言いつけにも、おしゃべりコオロギの忠告にも耳を貸さない。なおも命からがらの冒険を繰り広げるピノッキオは、はたして「人間の子どもになりたい」という願いを叶えられるのか…。

 物語の主人公ピノッキオを演じるのは、撮影当時8歳だったフェデリコ・エラピ(2010年、ローマ生まれ)。木目フェイスはCGではなく、特殊メイクによるものだ。「観る者を魔法の世界に入り込ませ、キャラクターと一緒にいるような気持ちにさせなくてはいけない」と、ガローネ監督がこだわり、一番苦労したというのがこのピノッキオの特殊メイクだった。

 担当したのは、『ハリー・ポッター』シリーズや『ボヘミアン・ラプソディ』など多くの話題作で特殊メイクを手がけ、ウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブダペスト・ホテル』、さらにメリル・ストリープ主演の『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』で2度のアカデミー賞に輝いたマーク・クーリエ。

 初期段階の構想イラストから、粘土や彫刻などを使用して数えきれないほどブラッシュアップを重ねた後、ピノッキオを演じたフェデリコ・エラピの輪郭に合わせて調整。最終的な造形にたどり着くまでに約1年もの月日を要したという。

 デザインが固まった後は、ピノッキオを構成する鼻や耳といったパーツひとつひとつを制作していく。イメージしたピノッキオを忠実に表現すべく、木目の溝や年輪の一本一本など、その細かいニュアンスを驚くほど緻密に仕上げていった。しかも、特殊メイクのマスクは一度しか使用ができない“使い捨て”。装着はもちろん、木目の色付けなど一回でも気の遠くなるような作業を毎回ゼロから実施した。それも3ヶ月の撮影期間中、毎日4時間かけて…。

 まさに“職人”と呼ぶにふさわしい、精密機械のようなメイク技術の高さはもちろん賞賛に値するが、そんな過酷な現場をやり通したエラピのプロ意識の高さにはさらに驚愕する。これには、多くの作品で特殊メイクを手がけるマーク・クーリエも「1週間や2週間ならまだしも、3ヶ月もなんて誰もやったことがない」と前代未聞の試みだったと明かしている。

 ガローネ監督もエラピについて「彼はピノッキオという役を完璧に理解していた。本人の性格自体は(悪童である)ピノッキオとは正反対だったけど、一方でエラピの純粋な部分も生きていた。現場は大変だったけど愛情込めて演じきってくれたんだ!」と、絶賛。エラピは本作でピノッキオ役を演じた後、『Tutti per 1 – 1 per tutti』(20年)、『Maledetta primavera』(20年)、『Non mi uccidere』(21年)などの映画に出演しており、今後が期待される。

■“悪童”への「忠告の一つ一つが沁みる」

 ガローネ監督は「久しぶりに原作を読んでみた。自分がよく知っている物語だと思い込んでいたけど、驚いたことにまったく知らないストーリーで、覚えていないエピソードもかなりあった。この本を映画化するなら、観客が驚くような方法を見つける必要がある。この物語を知っていると思い込んでいるからね。だから私にとって皆を驚かせる最良の方法は、原作に立ち返ることだった」と、語っている。

 6歳のときに初めて「ピノッキオ」のストーリーボードを描いた逸話を持つ監督が、幼少期に親しんだピノッキオの物語は、彼の故郷であるイタリアで生まれた原作の童話であり、本作は原作に忠実に、ディズニー・アニメーションでは描かれなかったピノッキオの真の姿を、美しくも残酷なダークファンタジーとして完成させたという。

 例えば、本作には1本の丸太が命を宿し、言葉をしゃべる人形に生まれ変わる瞬間のシーンがある。ジェペット爺さんが丁寧に削っていくと、不思議と鼓動を打ちはじめる丸太に、見る者は少し不気味に思いながらもひきつけられるだろう。そして、「パパと言ってごらん」とでき上がったばかりの人形に何度も語りかけるジェペットに、“その瞬間”は突如訪れる。たしかに「パパ」と発音した木の人形に、彼は驚き思わず飛び退くのだった。このシーンはディズニー・アニメーションでは描かれていない(既に人形と化した状態でピノッキオは映画に登場する)。

 ジェペットの手に負えないほどやんちゃなピノッキオが、「親に従わない子は、決して幸せになれないぞ」と自分のためを思い忠告をしてくれるコオロギに対して、「人に従うのは嫌いだ」「イライラするよ」「黙れ」と癇癪(かんしゃく)を起こしてハンマーを投げつける衝撃の展開も本作では描かれる。

 悪童っぷりをみせつけるピノッキオには災難も降りかかるのだが、そんなピノッキオを見ていると身につまされることも多く、「人のふり見て我がふり直せ」という気持ちにさせられるというか、「本当に大切なこと」を思い出すきっかけを与えてくれる。

 連続テレビ小説『おかえりモネ』に出演していた夏木マリは、劇場に掲出されている本作のポスターなどに、「おとぎ話はいつも残酷。主人公はいつも強か。このピノッキオは、不条理、その風刺が私達に大冒険を体現させる。そして兎に角美しい映画。最後に想うのは、ピノッキオは私なのかもしれない…」と、コメントを提供。

 同じくフリーアナウンサーの宇垣美里も「ダークファンタジーな世界を駆け抜ける悪童ピノッキオの冒険譚。無軌道な彼にかけられる忠告の一つ一つが沁みるのは私が大人になったからなのか。圧倒的な世界観に惚れ惚れした」と、感想を寄せている。

 原作が130年以上も世界中で読み継がれ、繰り返し映像化されるのも納得なのである。今まで知っていたようで、見たことの無かったピノッキオの本当の物語。ぜひ劇場で見てほしい作品だ。

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