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「世界で勝てない日本作品」現状打破への挑戦、『日本沈没』で見せる“地上波ドラマ”の矜持

日曜劇場『日本沈没ー希望のひとー』(C)TBSの画像

日曜劇場『日本沈没ー希望のひとー』(C)TBS

 日曜劇場『日本沈没ー希望のひとー』(TBS系)が、3話連続で視聴率15%を超えるなど、好調だ。折しも、初回放送3日前には関東で最大震度5強を記録する地震が発生。視聴者からは「すごくリアルに感じる」「怖い」という声が上がり、Twitterのトレンド1位に。災害が身近に迫るいま、なぜ本作をドラマ化したのか? その裏には、近年勢いを増す配信ドラマに負けない、“日本の地上波ドラマ”の矜持があった。

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■地震に噴火、災害続く日本でなぜ今?「今からでも遅くない」ドラマ化への思い

 地殻変動によって、日本が海に沈む…。そんな未曾有の危機に挑む人々を描く日曜劇場『日本沈没ー希望のひとー』(TBS系)。ところが、初回放送直前の10月7日には実際に地震が起き、さらに20日には阿蘇山が噴火するというニュースが飛び込んだ。これには、プロデューサー・東仲恵吾氏も驚きを隠せなかったという。

 「本作は、悲劇が現実に起こらないようにするにはどうしたらいいかを描いた作品。このニュースには驚きましたが、もちろん災害は起こらないでほしいと常に願っております」。

 原作は、1973年に小松左京が発表したSF小説。空前のベストセラーとなった本作は、相次いで映画・ドラマ化された。2006年には草なぎ剛、柴咲コウ主演で再び映画化、2020年にはNetflixでアニメ化もされている。このように何度も映像化されてきた名作を、なぜ今、地上波ドラマで描いたのだろうか。

 「東日本大震災から10年という節目で、この不朽の名作を読み返しました。そこで改めて感じたのは、環境の問題。人間が犯した行為によって災害が引き起こされるという壮大な仮説にシンパシーを感じたのと、大洪水や山火事など世界中で異常気象による災害が起こっている状況が結び付きました。今からでも遅くないから何か手を打てないのか、一人一人がやれることがあるのではないか。そんなテーマも感じ取り、大胆なアレンジをして映像化に踏み切りました」。

 日曜劇場が得意とするのが、「困難に流されるのではなく、諦めずに立ち向かう」というテーマだ。これまでのヒット作の根底にも流れるこのテーマは、多くの視聴者の胸を打ってきた。本作でも、日本が沈没するという未来がわかっているなかで、いかにして日本人を救うのかを描くため、主人公は環境省の官僚とした。演じるのは、小栗旬だ。

 「最初、小栗さんも『これを今、やるんですか』と日本沈没という設定の大きさにそのような反応をしていましたが、我々の思いを伝え、“今やる意義”に共感していただきました。小栗さんが日曜劇場に出演するのは、実に11年ぶり。生半可な作品にはできないし、エンタメとして楽しめつつ、深いテーマを探る内容にしたいという意図もありました」。

 このように、不朽の名作が原作であり、深い思いの詰まった本作。だが、制作が発表された時、ほんのりと不安を感じたのは筆者だけではあるまい。

 日本のドラマは、故・向田邦子さんや故・橋田壽賀子さんの脚本のような“4畳半のリアル”を描くのは上手いが、スケール感のあるエンタメ大作となると、チープな部分が目につくことが多い。これは映画でも同じだ。黒澤明や小津安二郎が、世界の映画に影響を与えたのも今は昔。とある映画プロデューサーから、「現在、多くの邦画はヨーロッパなどではほとんど相手にされず、フィルムが倉庫に眠っている。邦画というだけでビハインドがある」と明かされたこともある。

 特にNetflixなどのVODが台頭した今、スケール感のある大作は予算が潤沢な配信ドラマとして制作されることが多い。それをなぜ地上波ドラマで、日曜劇場でドラマ化しようと考えたのか。

 「本作も放送直後にNetflixで配信されます。つまり、“世界で戦える作品であること”が、そもそもの大命題としてありました。VODによって、地上波、配信ドラマ、映画が一つの端末で観られることから、今のユーザーはジャンルの垣根をあまり意識しなくなっている。大事なのは地上波云々ではなく、“作品として面白いかどうか”なのです」。

 実際、Netflixで世界配信された第1話は、さまざまな国で称賛を浴びた。ある外国人識者に反響を聞くと、「世界は“環境”をビッグイシューと捉えるフェーズに入っている。『日本沈没』は大元は日本人向けの作品だが、第1話の描かれ方に外国のユーザーもワールドワイドのスケール感を感じ、非常に話題になっていた」という。“世界で戦える作品”の第一歩としては、ひとまず合格点と言えるだろう。

 とはいえ、一つの端末で国内外問わず、すべてのジャンルの作品が観られるということは、“比べられる”ということだ。ユーザーの間では、海外ドラマと比べ、日本のドラマは卑下されることが多い。識者が語ったように、“世界で戦う”作品にしては、日本人だけの内輪向けであり、“日本のドラマ”の範疇は出ない。

 「ただ、世界におもねるように変える必要はないと考えています。以前、私はアメリカドラマ『グッドワイフ』の日本版に携わり、そこから多くを学びつつも、日本のドラマの良さも改めて感じました。それは、感情の描き方が繊細で、丁寧であること。だからこそ、地上波の連ドラの矜持として、その王道で描きたい。多くの人に観てもらえる日曜劇場という枠は、どこに出しても見劣りしないはず。海外でも“日本ドラマ”というジャンルが成立する日が来るよう、突き詰めていきたいのです」。

 世界と日本では、制作のスケール感も違う。何より、スケジュールに追われる日本のドラマでは時間に制約があり、それがクオリティを阻むこともある。例えばCGだ。しかし本作のCG表現はSNS上で概ね好評であり、日本のドラマ特有のチープ感はかなり薄れている。

 「CGは、映画『ピンポン』のクリエイター・曽利文彦さんが代表を務めるOXYBOTに依頼しました。OXYBOTさんもこれまで、“3日後に放送”というような厳しい条件の中で制作をせねばならず、100%の技術を発揮できなかったこともあったでしょう。本作はすでに3月に撮り終わり、CG制作にも多少は時間がかけられた。時間とお金をかけられれば、日本でもそれなりのクオリティを出すことはできるのです」。

 かように、日本の地上波ドラマの矜持を持って臨む本作。劇中では日本は沈没していくが、 “日本のドラマ”が今後、世界で急浮上していく未来を楽しみにしたい。

(文:衣輪晋一)

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