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「大切だからこそ、愛猫に違う道を」病気の飼い主と猫のつらい別れ、最後に“家族”にできること

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うつ病の男性から託された猫、ミルク(写真:ねこけんブログより)

 どんなに愛する猫であっても、別れざるを得なくなるケースは意外と多い。飼い主の高齢化、経済的事情、病気など、さまざまな理由が挙げられるだろう。「人間の身勝手だ」「ならば飼うべきではなかった」と非難する人もいるかもしれない。だが、やむを得ない事情があり、猫を愛するがゆえの選択だったとしたら…。NPO法人『ねこけん』に相談に訪れた、うつ病の男性、そしてがんを患った中国人女性の話を代表理事の溝上奈緒子氏に聞いた。

【写真】「スタッフも号泣…」うつ病男性との涙の別れ、大事にされていたモフモフの猫

■一人きりの闘病、「このまま徘徊が続けば、猫を傷つけてしまうかもしれない」

 ある男性が『ねこけん』に持ち込んだ猫の名前は、“ミルク”。5年前にペットショップで購入された長毛種の猫で、とても大事に育てられてきた。それなのに、どうして『ねこけん』に引き取ってもらわなければならなかったのか? 飼い主だった男性は、自身の健康上の問題を告白した。

 「とてもかわいそうな飼い主さんでした。もともとうつ病で精神科に通っており、今では夜中に徘徊してしまうことがある、と。経済的にも厳しく、一人暮らしで頼れる人もいない。そうなると猫の安全面を維持することができず、手放すしかなくなってしまった。本当につらそうでした」。

 病と向き合い、愛猫を心の支えに頑張ってきた。しかし、このまま徘徊が続いてしまえば、気付かないうちに猫が外へ出てしまうかもしれない。傷つけてしまうかもしれない。5年もの間、一緒に過ごしてきた家族を手放す決断をするには、どれほど悩み、考え、勇気が必要だっただろうか。それが伝わってきたからこそ、ボランティアメンバーも話を聞いた際には号泣したという。

 「大切だからこそ、愛猫に違う道を作る」

 猫の安全と、幸せを守るための決断。どんなに寂しくても、飼い主にとっては猫が健やかに暮らせることが一番大事だった。この男性から猫を引き取ったとき、溝上氏は「この子を幸せにできる」と断言している。それが男性にとって、もっとも大切な言葉だからだ。

 『ねこけん』に連れてこられたミルクは、鳴きもせず、じっとしていたという。きょとんとした表情はしているが、もしかしたら飼い主の気持ちが伝わっていたのかもしれない。何度も頭を下げる飼い主は、「健康に戻っても、もう猫は飼わない」と言った。溝上氏が「あなたら飼えますよ」と伝えたが、「今回とてもつらいから…もう飼いません」と。愛するがゆえの離別だったからこそ、ミルクの将来は温かいものであってほしい。

 くるりと後ろに反った耳が特徴のアメリカン・カールのイェンナイは、初めて『ねこけん』にきたとき、愛らしい表情できょとんとしていた。イェンナイとは、中国語でココナッツミルクの意味。飼い主は、国を離れて日本に留学し、卒業後に日本で働いていた20代の中国人女性だった。いずれは国に帰り、日本での経験を生かして仕事に就きたいという夢を持ち、彼女は頑張っていた。イェンナイはそんな彼女を支える日本の家族だったのである。中国に戻るときは、イェンナイも連れて帰るはずだった。だが、そんな彼女を病魔が襲った。子宮頸がんだった。

 両親と相談した結果、中国の家族のもとで治療を行うこととなった彼女。コロナ禍で飛行機の直行便もなく、イェンナイを連れて帰るのは難しい状態。もし連れて帰ることができても、治療に専念するため自分で世話をすることはできない。「早急に治療を行わなければならない状況下で、彼女はイェンナイのもらい手をかなり探したそうです。でも、友人、知人は留学生が多く、引き取ってもらうことはできなかった」と溝上氏は状況を明かす。

 愛護センターにも連絡を取ったが、返ってきたのは「殺処分」という非情な言葉。『ねこけん』以外の団体にも相談したが、終生預かりのため高額な飼育費がかかるということだった。「何度も何度も帰国を引き延ばし、やっと『ねこけん』にたどり着いたそうです」。

 イェンナイをなでながら涙を流す彼女は、「すみません、これだけで…」と保護費として3万円を差し出した。病を患い、働くこともできなくなった彼女にとって、きっとなけなしのお金だったのだろう。当初、溝上氏はお金を受け取るつもりはなかったそうだが、このお金は彼女がイェンナイにできる唯一のこと。最後に愛猫にしてあげられることを探した結果の愛情のこもったお金だったからこそ、受け取った。

 病気を抱えながら、最後までイェンナイの幸せのために保護先を探した元飼い主。だからこそ溝上氏は、今後のイェンナイの幸せな生活を約束した。イェンナイの姿を見るためにも、彼女にはぜひ病気を完治させて、日本に戻ってきてほしいものである。

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