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「文春砲は好きじゃない」、生みの親が明かす『週刊文春』の矜持とベッキー騒動の寝覚めの悪さ

"文春砲"の生みの親といえる、『週刊文春』前編集長の新谷学氏 (C)oricon ME inc.の画像

"文春砲"の生みの親といえる、『週刊文春』前編集長の新谷学氏 (C)oricon ME inc.

 今、政治家や芸能人がもっとも恐れているもの…それは“文春砲”ではないだろうか。もともとはネット上のスラングに過ぎなかったが、テレビのワイドショーなどでも使われるようになって一般化。『週刊文春』が放つ数々のスクープは大きな影響力を持ち、炎上、活動休止、降板、引退など多くの悲喜劇を生み出してきた。だが、“文春砲”の生みの親ともいえる『週刊文春』前編集長の新谷学氏(現、『文藝春秋』編集長)は、「“文春砲”という言葉があまり好きじゃない」と明かす。その言葉の裏にある思い、そして『週刊文春』『文藝春秋』の矜持を聞いた。

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■ジャーナリズムの特権意識を疑問視、“文春砲”の裏にある人間賛歌

 ジャーナリズムというとどこか高尚な響きがある一方で、ネットやSNSでは「“報道の自由”という盾があれば何をしてもいいのか?」「偉そうだ」と、批判されることもある。とくに昨今では、新聞や雑誌の記者、報道番組のスタッフなどが問題行動を起こしたときの反発はすさまじい。そんななかで“文春砲”を定着させ、ジャーナリズムの最たるものと言えそうな『週刊文春』前編集長は、「特権意識や選民意識を持つのは違う。“言論の自由”とか“表現の自由”みたいなものを振りかざしても読者の共感は得られない」と、スタンスを語る。

 「だって、なんだか偉そうじゃないですか。上から目線で教えてやる、ではなく、読者の知りたい気持ちに応えるため、体を張って地べたを這いまわり、走り回る姿勢、そういった目線の低さが『週刊文春』のあり方だと私は思っているんです。“これがジャーナリズムだ!”みたいな偉そうな感じは好きじゃない」。

 とはいえ、“文春砲”と言われるようなスクープの多くは、取材対象者の進退を左右するだけに、「人道的に、倫理的にどうなのか」と報道姿勢を問われることもある。それに対し新谷氏は、「『文藝春秋』の社としての一線は守る」と述べる。

 「そもそも月刊『文藝春秋』は、作家・菊池寛がおよそ100年前に創刊した雑誌で、社のスタートもその時です。原点にあるのは人間への飽くなき興味です。『週刊文春』もそのDNAを受け継いでおり、人間のどうしようもない部分…性(さが)とか本能、カルマみたいなものも含めて、肯定的に捉えているんです。人間って浅ましいし愚かだけど、そこが面白い。“ビバ!人間”讃歌が根底にあるんです。ちなみに“ビバ!人間”は一橋ビジネススクール教授の楠木建さんの受け売りです」。

 取材対象を撃ち落としたいわけではない。“光”だけでなく“愚かさ”も含め、人間は愛しい。それを面白がりたいのも人の業。そう考えているからこそ、物騒な“文春砲”という言葉が「好きではない」のだという。

 だが、“ビバ! 人間”のつもりが、思わぬ展開を見せることもある。

 「たとえばベッキーさんの不倫報道の時も、彼女の芸能生活を否定しようとか休養させようとか、そんなことはまったく考えていなかった。もとの記事を読んでもらえればわかるのですが、これまでスキャンダルと無縁だった彼女が、道ならぬ恋をした。しかもその相手のバンド名が『ゲスの極み乙女』。事実は小説より奇なりですよね、そういう記事だったんです」。

 だが、これが別のメディアや一般の人に拡散される中で、行間や人間の面白味の部分が削ぎ落とされていき、「ゲス不倫」というファクトだけが暴走。世間の懲罰感情がコントロール不能なレベルに燃え盛った。さすがに「かわいそうだ」と寝覚めの悪さを感じた新谷氏は、その後、ベッキーの所属事務所と交渉を重ね、本人に手紙を書いてもらって彼女の偽らざる想いを掲載した。報じた張本人でもあるが、「記事ひとつでここまでコテンパンされてしまう世の中は、なんだかバランスが悪いな」と当時の風潮に疑問を持ったという。

 また、人道面でいうと、取材相手の生死にかかわるようなリスクもある。

 「例えば宮崎謙介さんの不倫報道の際は、妻・金子恵美さんが妊娠中だったため、母体や赤ちゃんに取り返しのつかない影響が及ぶリスクがあった。そのため、出産後まで報道を待ちました。コンプライアンスを重視しすぎると何も書けなくなってしまう側面もありますが、最悪の事態が起こった時に読者に胸を張って説明できるのか。私たちは常にそれを判断基準としています。ちなみに、もしも取材中に目の前で人が殺されそうになったら…それは助けますよ。報道よりも、人の生命、尊厳は守られるべきです」。

■小室哲哉の不倫報道、『イッテQ!』やらせ問題…炎上リスク背負いながらも「断罪しない」

 このように、確固たる信念がある『文春』だが、自身が“炎上”することとも無縁ではない。例えば、小室哲哉の不倫報道。闘病中の妻・KEIKOを献身的に支えてきたイメージのあった小室哲哉のスキャンダルは世に衝撃を与え、事態は彼の引退で急展開した。これに世間は、「『文春』が1人の天才を殺した」と大ブーイング。「つらかったですが、いい機会だと思ってユーザーのコメントを1つ1つ読みました。炎上から目をそらさず、批判の火元を見極めて教訓にしようと考えました」。

 しかし、そんな『文春』に対する炎上も時間が経つと落ち着き、ネットやSNSには冷静なコメントも増えたという。「本当に文春だけが悪いのか」「それを拡散するマスコミの責任は?」。さらに時間が経つと、「文春の記事を面白がっている自分たちにも責任があるのかも知れない」「ベッキー以降、同じことを自分たちは繰り返してきたんじゃないか」などの声も挙がるようになってきた。これを見たとき新谷氏は、「荒れ放題のネット上の言論空間も今後、成熟していくのかもしれないと思った」という。

 書く上で注意していることはほかにもある。『世界の果てまでイッテQ!』の祭り企画のやらせ問題では、完璧にファクトを固めつつ、炎上リスクも意識しながら慎重に進めた。「やらせはけしからん」ではなく、「家族で楽しむ教養番組的な側面もあるんだから、安心して観られるように心がけてもらいたい」という書き方にした。

 「リスクがあるから書かないのではなく、どうすれば書けるのかを考える。人間の営みは面白い。ゴシップを楽しんだり、ウサを晴らすのもひとつの文化。気をつけるべきは、人間への敬意を失わない、偉そうにしない、断罪しようとしないこと」。

 そう語る新谷氏の信条、『週刊文春』(最新号7日発売)や『文藝春秋』(最新号8日発売)の歩みやスタンスは、近著『獲る・守る・稼ぐ 週刊文春「危機突破」リーダー論』(光文社)にも詳しく述べられている。完璧な人間なんてどこにもいない。人は美しい球体ではなく、どこか欠損している。だがその欠けた“いびつ”な部分こそが個性だ。1人1人違うそれぞれの形に当たる“光と陰”を、余裕を持って愛でられる人間でありたい。

(文/衣輪晋一)

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