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“地上波的なもの”から解き放たれた音楽番組に フジ浜崎プロデューサーの新たなチャレンジ

浜崎プロデューサーが手がけるフジ音楽番組『MUSIC FAIR』『FNS歌謡祭』『オダイバ!!超次元音楽祭』(C)フジテレビの画像

浜崎プロデューサーが手がけるフジ音楽番組『MUSIC FAIR』『FNS歌謡祭』『オダイバ!!超次元音楽祭』(C)フジテレビ

 フジテレビ入社18年。これまで数々の音楽番組の制作に携わってきた浜崎綾プロデューサー。現在はレギュラーの長寿番組『MUSIC FAIR』や、フジテレビの誇る音楽特番『FNS歌謡祭』の総合演出などを手掛けている。名だたる番組を継承しながらも、昨年新たに、2次元や2.5次元などこれまで地上波の音楽番組とは縁遠かったジャンルのアーティストを集めた『オダイバ!!超次元音楽祭』も立ち上げた。若者のテレビ離れが懸念される今、これからの音楽番組の行く末を見据えて先手を打つ浜崎氏の目に、今の音楽シーンはどのように映っているのだろうか。

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■新時代のスターを地上波にフックアップ『オダイバ!!超次元音楽祭』

――『MUSIC FAIR』、『FNS歌謡祭』、『オダイバ!!超次元音楽祭』とカラーの異なる音楽番組を担当されていますが、それぞれのポジションを教えてください。

「1964年に始まった日本最長寿の音楽番組『MUSIC FAIR』は、“良質な音楽と良質な映像を届ける”をモットーにした、スタンダードな位置づけの番組です。『FNS歌謡祭』は、フジテレビの音楽番組の頂点、ハイブランド的な番組です。1年の総決算となるお祭りなので、私たちも「紅白に負けないぞ!」という気概で臨んでいます。一方の、20年にスタートした『オダイバ!!超次元音楽祭』は、アニソン、2.5次元、歌い手出身のアーティストなど、“地上波的でない”と言われてきた新時代のスターを地上波にフックアップすることをコンセプトとしています」

――その“地上波的”というのは、誰もが知っている、ということでしょうか。

「これまで地上波は、「世帯視聴率」を指標にしてきました。テレビの視聴時間は年齢と比例して増加する傾向にあるため、50代以上の年齢層の高い人に好まれるものが「視聴率が高い番組」となってきました。この層を中心に、お年寄りから子どもまで、家族全員に受け入れられる番組が“地上波的なもの”とされてきたのだと思います。そのため、10代・20代の限られた層に爆発的な人気があるものを、タイミング良くピックアップできてこなかったのです。でも昨年から、テレビの新指標が「コア視聴率」に変わってきました。松本人志さんがツイッターで言及されて話題になりましたが、フジテレビでは13~49歳を“キー特性”と呼び、この年齢層に向けた番組作りを行っています。局によってそういったコアターゲットの基準や呼び方は異なるのですが、企画やキャスティングが変わってきたと思うんですよね。これからは“地上波的なもの”から解き放たれて、長らく置いてきぼりにしてきた若者たちをもう一度テレビに引っ張り込まないと、テレビの未来は厳しい。テレビ業界全体が今、危機感を抱いている気がします」

――それを実行したのが、『オダイバ!!超次元音楽祭』なんですね。

「そうですね。若い方たちに好きなアーティストを聞くと、声優さんや歌い手、ボカロPの名前が真っ先に挙がります。彼らの世代のメインストリームなのに、「地上波に出ないのはおかしくない?」ということを問いたかった。テレビの常識にとらわれない新しいチャレンジを積極的にやっていきたいと思い立ち上げました」

――では今後は、『オダイバ!!超次元音楽祭』から『MUSIC FAIR』、『FNS歌謡祭』へステップアップしていく可能性もあるということですよね。

「実際に、宮野真守さんや、アニメ『呪術廻戦』で人気の声優の内田雄馬さんは、『オダイバ!!超次元音楽祭』から『MUSIC FAIR』『FNS歌謡祭』へと良い形で繋いでいけた事例かと思います」

■コロナ禍で実感するZ世代の視聴者、出演者の変化とニーズ

――「Z世代」の好む音楽は、近年どのように変わったとお考えですか。

「コロナ禍で、音楽に対する没入感が高まった気がしています。特に最近のヒット曲、例えば、DISH//さんの「猫」、優里さんの「ドライフラワー」、川崎鷹也さんの「魔法の絨毯」など、若い子たちが家で1人音楽を聴きながら、深く歌詞の世界に入り込んでいる様子がうかがえます。そういう、今皆さんに求められている曲を届けることが地上波の大きな役割だと思っています」

――「Z世代」視聴者が支持するアーティスト側にも何か変化はありますか。

「最近、強く感じているのは、YOASOBIさん、Adoさん、Eveさん、藤井風さんなど、今、活躍しているテレビを見ない世代のアーティストが、あまり番組に出演していただけないことです。テレビに出る必要性を感じない、もしくはそのほうがアーティストのブランド価値を高められるなど、理由はさまざまだと思いますが…。そんな彼らに、「出てよかった」、「たまには音楽番組に出ようかな」と思ってもらえる番組を提供したい。ネットを中心に活動していて、人前で歌ったり演奏したりする機会が少ない方たちも、いざやってみると、目の前のお客さんに自分の歌を届ける新しいコミュニケーションに興奮するし、ライブの良さに気付くことも多いと思うので、そういう体験をテレビでしてほしいですね」

――ところで、テレビ離れと言われる中でも、他局も含めて、音楽特番はすごく増えていますね。

「コロナ禍によるところが大きいと言われています。明確な根拠はありませんが、自宅で過ごす中で音楽に目が向いたり、もう一度音楽っていいなと思う人が増えたりして、音楽番組の視聴率も少し上向いているというか、需要が増えているのではないでしょうか」

――フェス感みたいなものが求められている表れでもあるのでしょうか。

「観る側にも、パフォーマンスする側にも、そういう意識はあると思います。特に、今まで自分の好きなアーティストの出演シーンだけ観ていた人たちも、広い音楽体験を求めているように感じています」

――コロナ禍で、番組自体の制作手法や演出などもかなり変わったのではないかと思うのですが。

「昨年は、スタジオにアーティストを呼べないという事態もありました。コラボもそれぞれの自宅で収録してもらった映像を分割して並べる、といったことも行いましたが、ある程度感染防止方法がわかってきた今年からは、あまり制作上の不都合みたいなものは感じていないですね。コラボする際に一定の距離を確保するなど、物理的な規制はありますが、特に困るとことはありません。マイナス面としては、お客さんをスタジオに入れられないということくらいでしょうか。とはいえ、ライブ業界のご苦労に比べると、テレビ業界の打撃は小さいと思っています」

――コロナが収束したら、やってみたい演出はありますか。

「以前『FNS歌謡祭』(15年)で、“女性アイドル99人大集合”みたいな演出をしたことがありました。今見たら「密だなぁ」ってなるけれど、AKB48グループや坂道シリーズ、ももクロからハロプロまで女性アイドルグループ・オールスターによるメドレーで、指原莉乃さん、白石麻衣さん、百田夏菜子さんらがずらりと並んでいるという、その迫力はすごかった。今はどうしても少人数で手作り感あふれるものになっているので、やはりダイナミックな演出をやりたいですね」

■『FNS歌謡祭』名物のコラボ その共演に「ストーリーがある」ことを強く意識

――『FNS歌謡祭』の目玉といえばコラボです。コラボを仕掛けるときに、大事にしている点を教えてください。

「その共演に“ストーリーがある”ことです。例えば声優の蒼井翔太さんが、ずっと憧れていた倖田來未さんと行ったコラボ(19年)、宮野真守さんと山崎育三郎さんが雑誌で意気投合して「いつか一緒にやりたいね」と語った夢が実現したコラボ(20年)など、番組側の都合ではなく、その組み合わせにストーリーがあることを強く意識しています」

――先ほど「新時代のスターを地上波にフックアップしたい」というお話しがありましたが、テレビに出すタイミングについてはどうお考えですか。

「良い楽曲ができて、ここがブレイクタイミングだ、という時に、その楽曲で出てもらうことがベストだと思うので、そうなるように力を尽くしています。10月6日放送の『2021FNS歌謡祭 秋』では、人気コンテンツ『ウマ娘 プリティーダービー』から“ウマ娘”に初出演してもらいますが、まさに絶好のタイミングだと思います。少しタイミングを計っている場合は、鉄板のヒット曲のカバーや、共演してもらうなど、そのアーティストの魅力を見せる方法をとることもあります。先日の『MUSIC FAIR』ではシンガー・ソングライターの竹内アンナさんにNiziU「Make you happy」をカバーしてもらいました。アコギのアレンジを聴いて、“この人のセンス、すごい”と絶対に伝わると思いましたから。マイナスプロモーションになることは絶対にしないように、勝算が見えるときにぐっと引っ張ることを心がけています」

――コロナの状況がすぐに好転するとは思えませんが、これからの音楽シーン、音楽番組はどのように変化していくと思われますか。

「個人的には、音楽シーンは良い方向に向かっていると思います。リスナーが楽曲に没入して聴いてくれて、そこからヒットが生まれるのはいい流れですから。あとは、ライブ業界とコンサート業界への逆風が、早く解消されることを祈るばかりです。コロナ禍で、これまでライブ中心でテレビに出演されなかった方が、こういう時期だからと、出演してくださったりもしたので、そういう意味では音楽番組にとって悪いことばかりではなかったとも思っています。そういう方たちはコロナ後には、まずは自分たちのファンの前でライブをしたい、となるでしょうから、テレビは二の次になると思うんです。その時にそっぽを向かれないように。そして、テレビに出ないことでブランド価値を高めているアーティストの皆さんに、出たいと思ってもらえる番組を作っていくことが、至上命題ですね」

(文・坂本ゆかり)

【浜崎綾氏プロフィール】
1981年生まれ、北海道出身。慶應義塾大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『堂本兄弟』『僕らの音楽』『FNS歌謡祭』『MUSIC FAIR』と数々の音楽番組を手がける傍ら、14年からはバラエティ番組『KinKi Kidsのブンブブーン』も担当。20年1月に正月特番として2次元・2.5次元コンテンツに焦点を当てた『オダイバ!!超次元音楽祭』を立ち上げ、今年8月には第4弾が放送された。

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