プレゼント・クーポンPRESENT COUPON

フェリアSNSSOCIAL

音楽

「それが大事」大ヒットから30年…人生経験を経て導き出した「負けてもいい、投げ出してもいい」こと

30周年を迎えた「それが大事」について語った大事MANブラザーズのボーカル・立川俊之 (C)oricon ME inc.の画像

30周年を迎えた「それが大事」について語った大事MANブラザーズのボーカル・立川俊之 (C)oricon ME inc.

 1991年8月にリリースされ、「オリコン週間シングルランキング」5週連続1位、推定累積売上枚数160.3万枚を記録した大事MANブラザーズバンドの大ヒット曲「それが大事」。その後もCMでの起用や多くのアーティストがカバーするなど、時代を越えて愛されてきたこの歌が、コロナ禍に見舞われて1年半、「今、本当に響く歌」「つらくなったらこの歌に元気をもらっています」「ずっと伝承していきたい名曲」とSNS上で熱いコメントを集めている。“国民的応援ソング”としての地位を確立して30年、生みの親である大事MANブラザーズのボーカル・立川俊之がこの歌の誕生秘話から、今「大事」なものについて語った。

【動画】今聞き直すと歌詞が心に響く…「それが大事30th Anniversary Special Edition」 キャイーンに真鍋かおり、総勢46名の著名人が参加

■「音楽が続けられなくなる」窮地に立たされ出た叫びと自戒の念から誕生

――大事MANブラザーズバンドの3枚目のシングルとしてリリースされた「それが大事」は、所属事務所から契約解除をほのめかされる中、背水の陣で制作されたそうですね。

【立川俊之】メジャーデビューして、アルバム1枚とシングル2枚をリリースしていたんですけど、どれも箸にも棒にも引っかからなくて。なかなか世の中には受け入れていただけなかったんですね。それなりの結果を出さないと、このままでは違う仕事を考えなければいけなくなるというプレッシャーと焦りがある中、プロのミュージシャンとして存続するために、キャッチーな曲を作らないといけないのではという思いで制作しました。

――サビの「負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じぬくこと」はリスナーから「ストレートな歌詞が心に響く」など多くの共感を得ています。5分弱の曲の中で8回繰り返されるこの歌詞はどのように生まれたのですか?

【立川俊之】(窮地に立たされた)自分たちのそのときの状態とシンクロしていて、そこから出た叫びであり、自戒の念に基づいて生まれたものです。ただ、よくストレートって言われるけど、自分の中では変化球を投げたつもりだったんですよ。自分の好みを突き詰めると、大衆には受け入れられない可能性が高いので、そんなに凝っちゃまずいだろうということで、あの形になったので。歌詞とメロディーが同時に、ふっと浮かんだんですよね。

――バンドの命運をかけて投げた立川さんの“変化球”に対して、メンバーや関係者はどのような反応でしたか?

【立川俊之】ほかにも候補を何曲か作っていて、当初、事務所の意向としてはバラードだったんです。ところがひとりのディレクターがものすごい熱量で「それが大事」を推してきて。まだ新人のディレクターだったんだけど、彼自身が「それが大事」みたいなメンタリティの人で、みんな根負け(笑)。ただ、その後、日頃、ジェフ・ベックだの、レッド・ツェッペリンだの、ジミー・ヘンドリックスだのって言っているうちのギターやバンドマンの友達に、デモテープを聞かせたら「いい曲だな」って言うんですよ。ビックリしちゃって。あの曲は大衆に迎合するような音楽にアレルギーがある連中の普遍的な琴線にも触れたんでしょう。ヒット曲ってそういうものなのかもしれませんね。

■ヒットの背景に格差社会「労働者に寄り添ってくれる歌は、耳障りが良かった」

――今、コロナ禍で大変な状況が続いていますが、「それが大事」がヒットした1991年から92年もバブル経済が崩壊し、社会は混乱、先行き不透明な不安の中、人々の生活が大きく変わった年でした。

【立川俊之】それまでの「一億総ブルジョア」今で言うなら「セレブリティ」なんて言ってる時代じゃなくなって、格差社会が始まった時でした。だから「それが大事」のような労働者に寄り添ってくれる歌は、耳障りが良かったんじゃないですかね。ただ、当時はなんだって根性で「頑張ろう」の時代だったけど、今は世の中の風潮が「『頑張れ』っていうのはよしなさい」になっていますよね。「~ハラスメント」が多すぎて、逆に「ハラスメント・ハラスメント」ですよ。みんな戦々恐々として言葉を選ぶあまり、まわりくどい、ソフトなボヤッとして言葉ばかりになっている。「それが大事」が歌っていることは、ある種“精神的体罰”みたいな歌だけど、愛情持って言えば、行き過ぎがあったにしても、どんなことでも伝わると思うんですけどね。

――この30年の間には、「それが大事」を歌うことがキツかった時期もあったとか?

【立川俊之】こちらはいろいろな側面を表現したいと思っているんだけど、ある曲のイメージがつくと、それだけのくくりで見られてしまう。若い頃はそれに対する抵抗がありました。

――その考えが変わったきっかけは?

【立川俊之】ライブやイベントでは「それが大事」を歌わないと許してくれない雰囲気があって。1回だけライブで歌わなかったら、すごく不評で。飲食店の看板メニューみたいなもので、「今日は切らしてます」というわけにはいかないのと一緒かなと。そう考えられたとき「これはもう俺の歌じゃない」と、曲が独り歩きしているということを自覚できましたね。

━━独り歩き?

【立川俊之】ヒット作というのは、リスナーの思いが付随して、どんどん肥大化して、やがてその人のものになって、独り歩きしていくものなんです。僕は最近、スマホに1980年代の洋楽を50~60曲入れてるけど、どれを聞いても、青春時代の自分がよみがえってくる。それと同じで、「それが大事」ももう僕らのバンドのものじゃない。だから、それからは、歌うとき、あのヒット曲を逆輸入して俺が歌えばいいのねって考えるようになりました。

■50歳を超え、コロナ禍も相まって、「当たり前」の大事さを痛感

――2015年1月に出演した『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)では、「『負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じぬくこと』は、どれも大事じゃない」と発言。神回と呼ばれ、話題となりました。

【立川俊之】「それが大事」を書いたのは、まだ社会を知らず、圧倒的に経験値が足りない23~24歳の頃。でも人生を重ねて経験から、価値観や観念が歌詞を超えてくると、リアリズムに即していかなきゃいけないんじゃないかって思ってくるんですよ。

――その境地から2016年に「負けてもいい、投げ出してもいい、信じ抜けないこともあるだろう」という真逆の歌詞のアンサーソング「神様は手を抜かない」を発表されたのですね。

【立川俊之】「三十六計逃げるに如かず」(=窮地に追い込まれたら一回逃げなさいという意味を持つ故事成語)という言葉があるけど、それって正しいと思うんです。なんでもかんでも正面から受け止めればいいわけではなくて、その場をやり過ごすことも大切なこと。逃避してどこかに行ってしまうのではなくて、一度回避して、また戻ればいい。正反対の表現方法だけど、言っていることの根本は「それが大事」と一緒なんですけどね。

――では、今、55歳になられた立川さんにとって「大事なこと」とは?

【立川俊之】この歳になると一番大事なのは笑い話じゃなくて健康なんですよ。50歳を超えるとビックリするくらい若い頃にはなかったいろんなエラーが出てくるから(笑)。健康、空気、家族、友達とか、若い頃はそういう当たり前を差し引いてからの「大事」だったけど、この歳になると、当たり前のことを差し引くと「大事」なものはなくなっちゃう。

――当たり前のことが大事ということは、コロナ禍、多くの人が実感したかもしれません。

【立川俊之】そうですね。あともうひとつ強く思うのは、考えることが「大事」ということです。何事においても熟慮熟考、考察することが大事。無思考、思考停止は一番罪なこと。だから、自分にとって何が大事なのかも考えることが「大事」だと思いますね。

――“国民的応援ソング”としての地位を確立した「それが大事」については、今後、どうなっていってほしいですか?

【立川俊之】もう書き換えられないし、いかようにもしてくださいって気持ちです(笑)。時代の変遷とともに、傍観者のように、この曲が世の中を見ていくんでしょうね。みんながこの曲をきっかけに、何が大事かを考える一助になるならありがたいです。

 今年6月には、「それが大事」発売30周年を記念して、YouTubeにて、新たにアレンジを加えた3本のミュージックビデオを公開。そのスペシャルエディションには、「30年前、無名だったり、子どもだったり、学生だったりした人が、今、誰でも知っている著名人になっている。彼らが歌うことで、30年という時間に説得力を持たせられるんじゃないかと考えました」という立川の思いから、NON STYLEやキャイーンら総勢46名が参加し、リレー形式で同曲を歌いつないでいる。

 なかには、自身の冠番組『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』でエンディングテーマとして起用し、この曲の大ヒットに寄与した山田邦子の姿も。「邦子さんには本当に感謝していて、絶対に出ていただきたかった。ただ邦子さん、いつも『やっぱり、“それが一番大事”いいよね』っていうんです(笑)。サビの最後のフレーズをタイトルだと思っているんですけど、いまだに訂正できないんですよね(笑)」。

取材・文/河上いつ子

ORICON NEWSは、オリコン株式会社から提供を受けています。著作権は同社に帰属しており、記事、写真などの無断転用を禁じます。

こちらの記事もどうぞ