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オーディションは多様化 数年先を見据えたソニーミュージック新人開発の今 

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SME SDグループが手掛ける主なオーディション・プロジェクト

 新型コロナウイルスの感染拡大はエンターテインメントのあり方に大きな影響を及ぼしたが、来たる次代を見据えて、新たな才能を開発する動きに拍車がかかってきているようだ。ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下SME)の新人発掘・開発セクションであるSDグループでは、昨年から今年にかけてこれまで以上に多彩なオーディションを開催している。

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■自社の単体企画からパートナー企業との大型プロジェクトまで複数のオーディションが進行中

「コロナ禍で夢を諦めかけている人にもう一度トライする勇気をもってもらいたい。その思いはエンタメ業界に共通していると思います。当社でもSME単体の新人発掘企画のほか、パートナー企業との共同プロジェクトなど複数の案件が進行中です」(SDグループ 副本部長・谷澤嘉信氏/以下同)

 その代表的な事例が、7月に始動した韓国の大手事務所・JYPエンターテインメントと共催の「Nizi Project Season2 Global Boys Audition」だ。2019~2020年にかけて行われ、ガールズグループ・NiziUの結成に至った大人気企画の第2弾で、今回はボーイズグループを開発する。

 「Nizi Project」は「日本に軸足を置きながら世界市場を見据えたグループ」の結成を目指すプロジェクトであり、そこにはK-POPの育成メソッドが大きく関わっている。特にダンス&ボーカルグループジャンルにおいて、韓国エンタメはグローバル進出での成功事例が多い。そうした意味で「Nizi Project」の経験値はSMEの新人開発にも存分に活かされていくことだろう。

 また現在進行中のグローバルアーティスト育成プロジェクト「TORA PROJECT~Talents of Rokubancho Academy~」では、合格者は数多くのK-POPグループを指導するボーカルトレーナーのシン・ユミや、BTSの振付制作にも参加したSota Kawashima、韓国を代表するダンススタジオ・1MILLION DANCE STUDIOなど日韓の一流トレーナーによるレッスンのほか、SMEの費用負担による海外合宿・留学なども計画されている。

「グローバルに活躍していくためにはダンスや歌の高いスキルや語学力、リアル・デジタル両面のコミュニケーション能力など、あらゆるスキルが必要となります。また、タフな精神力と強い意志がないと世界では通用しないでしょう。コロナの状況を鑑みながらになりますが、才能が認められた練習生には、一度は海外生活を経験してもらいたいと考えています」

 この「TORA PROJECT」はあくまで育成プロジェクトのため、いつまでにデビュー、といった明確なゴールは今のところ設定されてはいない。本気で世界を目指して努力ができる人に、SMEがスキルアップの場を全面バックアップするのがこのプロジェクトの全容だ。

「来年デビューする人がいるかもしれないし、数年後に素晴らしいアーティストになっている人がいるかもしれない。いずれにしても世界市場を狙うには、デビューの時点でよほど高いレベルに達していないと難しいと思っています」

■マッチングとソリューションを提供する新人育成の新たな形

 欧米で大人気を博した『アメリカン・アイドル』や『Xファクター』といったオーディション番組の影響で、アジアでも2000年代後半から同様の番組が盛んだ。韓国でも、そういった番組を通して多くの人気アーティストがデビューを飾ってきた。国内に目を向けると、90年代にリアリティ番組『ASAYAN』(95年~02年)からモーニング娘。やCHEMISTRYといった人気アーティストが輩出されたが、長らく社会現象となるオーディション番組は生まれていなかった。しかし、19年に視聴者参加型のオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』が話題を呼び、前出の社会現象となった『Nizi Project』(20年)、アーティスト・SKY-HI主催の『THE FIRST』(21年)など、人々の関心を集めるオーディション番組が次々に開催されるようになった。これらが共通する点は、コロナ禍で一気に利用が進んだ動画配信サービスで配信されている点である。

 SMEでもオーディション「ONE in a Billion」の審査のプロセスをYouTubeで配信。現在は清水翔太を審査委員長に迎え、候補メンバー23人によるドキュメンタリー番組を配信している。
 
「主催側にとってのオーディション番組のメリットは、視聴者の共感と視線を浴びることによって、候補者の輝きがビジュアルも含めてどんどん増してアーティストとしても人間としても成長していくことです。オーディション番組は決して新しいコンテンツではありませんが、今後も形を変えながらあり続けると思います」

■「顔出しなし」希望者が増加 応募者の意識の変化

 一方、近年は「ビジュアル非公開」のまま人気を博していくネット系アーティストも多い。そうしたカルチャーの影響から、オーディション応募者の中にもエントリーの段階から「顔出しなし」を希望する人が増えているようだ。

「ビジュアルや属性とは違うところでジャッジしてほしいという思いを持った人は、確実に増えています。またそうした人たちにとって、従来の“レコード会社主催のオーディション”は魅力を感じられないものだったかもしれません。VTuberやボカロPといったネット系アーティスト、あるいはシンガーソングライターであっても『顔出しを一切せずに活動していきたい』という意思を持っているのであれば、極端な話ではありますが『最終段階まで対面なし』のオーディションがあってもいいでしょう。今はオンライン審査ができる環境もありますからね。応募者の意識の変化と共に、審査する側も変わっていかないといけないと思っています」

 ボカロPをはじめインターネットを通じて作品を発表しているアーティストを随時募集している「Puzzle Project」では、公式サイトに選出された10組のアーティストが紹介されているが、その全員がイラストのビジュアルとハンドルネームである。また、TikTokとの共催により音楽やアニメ、映像制作、ダンス、イラストなどさまざまな才能を募集する「#アトリエプロジェクト」でも、選ばれた15人のクリエイターの中には、一部顔出ししている人もいるが、多くはイラストのビジュアルで本名も公開されていない。
 
 この「Puzzle Project」と「#アトリエプロジェクト」の共通点は、「才能と才能のマッチングの場」の提供を行っていること。SMEは選出されたメンバー間や外部とのコラボレーションによる創作活動をサポートしていく立場で、そういう意味では従来の「ソニーミュージックからのデビューを目指す」オーディションとは大きく異なる。

■新人開発セクションに重要なのは「数年後を見据えた取り組み」

「ネット系クリエイターの中には、オーディション自体を『レコード会社やテレビ局、広告代理店によって都合よく消費される場』というように懐疑的に受け止めている人も少なからずいます。とはいうものの、1人で活動していると壁にぶつかることもあります。たとえば歌い手と組みたい、MVを作りたい、いい機材でレコーディングしたい、権利について学びたい──。契約するしない以前に、そうした彼らの求めるソリューションを提供し、丁寧にアーティストと向き合って信頼関係を築いていくことが今の時代はとても大切なことだと思っています。その点はもちろん当社もこれまで重視してきましたが、今の若い人はもっと繊細に思いを汲み取る必要があると感じています」

 ところでSMEといえば昔からバンドに強いイメージがあるが、現在開催中のオーディション企画にはバンド募集が見当たらない。と思いきや、常時募集を行っているという。

「現在、各メーカーではネット系クリエイターの大争奪戦が繰り広げられています。これはコロナ禍で、リアルなエンタメ活動が制限されたことも大きく影響しています。当社も彼らとのいい出会いを求めていますが、一方でバンドやシンガーソングライターといった既存のスタイルのアーティストもこれまで通りしっかりと育成していくことはとても大切だと考えています。アーティストの活動形態が多様化する中でオーディションのバリエーションも広がっていますが、数年後を見据えた取り組みは新人開発セクションにとっていつの時代も最も重要な活動です」

 バンドに限らずあらゆるジャンルに門戸を開く一方、新たなジャンルにも意欲的に取り組むSDグループは、多様なアーティストを、その特性に沿ったかたちでバックアップすることで、次代のアーティストを生み出す場を拡げている。

(文・児玉澄子)

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