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「加熱式たばこ」は本当に普及したのか? 非喫煙者との共存もたらすデバイスの可能性

各社から発売されている加熱式たばこの画像

各社から発売されている加熱式たばこ

 「たばこは体に悪い」「たばこを吸っている人は臭い」――煙やにおい、副流煙による受動喫煙への意識が年々高まる昨今。それらを少しでも軽減させようと、加熱式たばこに移行する喫煙者が増加している。だが、厚生労働省の調査(2020年12月)によると「習慣的に喫煙している者」が使用しているたばこ製品の種類は、紙巻たばこの割合が男性79.0%、女性77.8%。加熱式たばこの割合は、男女ともに未だ3割に満たないのが現状だ。紙巻ユーザーに風当たりの強い昨今、徐々に移行が始まっているとはいえ、加熱式たばこユーザーが爆発的に増えないのはなぜか。市場動向とともに検証する。

【写真】「これが、たばこ⁉」ボタンもなくてツル~ン、おしゃれモバイルグッズのようなプルーム・エックス

■加熱式たばこ=『アイコス』、この風潮を生んだ『アメトーーク!』の影響力

 そもそも加熱式たばことは何か。簡単に言えば、火を使わないたばこのことだ。燃焼させることなくたばこ葉を加熱し、そこからニコチンを含むエアロゾル(微粒子の浮かぶ気体)を作る。燃焼させないためにタールは生まれず、匂いも紙巻きより格段に抑えられる。健康懸念物質も、かなり低減していると言われている。

 日本では米フィリップ・モリス・インターナショナルの『アイコス』がもっとも有名で、国内シェアは7割を誇る。次に英ブリティッシュ・アメリカン・タバコの『グロー』が2割、JTの『プルーム』が1割のシェアという推計だ。

 これほど『アイコス』のシェアが伸びたのは「『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の『アイコス芸人』の影響が強い」と分析するのは、日本最大級の加熱式たばこマガジン『モクログ』運営者のゲンキ氏。「実は、最初に加熱式たばこを発売したのはJTで、2013年の12月です。その後、2014年秋に『アイコス』が発売。しかし、当初はどちらも売れませんでした。ですが、『アメトーーク!』で取り上げられたことで『アイコス』は一気に知名度を上げた。さらに、iPhoneなどと同様にユーザーのブランド嗜好も手伝い、加熱式たばこと言えば『アイコス』と、アイコンになったという歴史があります」。

 そのフィリップ・モリス・インターナショナルは今年5月、10年以内に日本での紙巻たばこ販売から撤退すると発表。一方で、9月には新型アイコス『IQOS ILUMA』を一般発売と、加熱式により力を入れている。この背景には「国内の7割を占める紙巻たばこのシェアを獲得したいというビジネス的思惑もあるのでは」とゲンキ氏。そのためにも『IQOS ILUMA』は、これまでの弱点を克服した画期的な商品として、同社としても自信を持っているのではと分析する。

 一方で、デバイスの安さでユーザー拡大を目指すのが、480円から本体を購入できるブリティッシュ・アメリカン・タバコの『グロー』だ。ある意味、戦略を価格に全振りしている状態だが、「同社は“デバイスを売るメーカーではなく、あくまでもたばこを売る会社”という意識があるようだ」というとおり、たばこ会社としての強い信念を感じる。ただ、かつてジッポをコレクションするブーム、デュポンやカルティエのライターの流行があったように、たばこにまつわるアイテムには文化的、コレクターアイテム的な側面もある。「数多くのブランド商品もそうですが、値段はアイテムの価値。果たして480円のデバイスが“お気に入りアイテム”となるか。その点は課題ではないでしょうか」。

 そして、上記2社の後塵を拝する形になっているのがJTだ。JTによる海外での販売本数はすでに国内販売を大幅に上回っているものの、加熱式たばこには乗り遅れ、国内シェア1割にとどまる。この明暗を分けた一つが先述の『アメトーーク!』であり、もう一つは「先行商品『プルーム・テック』の吸いごたえの物足りなさ」だという。「『プルーム・テック』は低温加熱式で、たばこ感を打ち出す高温加熱式とは用途が違います。にもかかわらず、当時の印象がいまだ引きずられており、デバイスの乗り換えに至らないのではないか」とゲンキ氏は語る。

 さらにJTは、先ごろ本社機能をスイスに移転、海外のたばこ事業と統合することを発表した。これにより、スピード感ある外資系文化が日本の会社に馴染むかどうかという懸念はある。だが翻して言えば、それは革新的、画期的アイディアによる次世代デバイスの開発が行われる可能性もあるということ。既存の紙巻たばこユーザーも大事にしつつ、17日には加熱式たばこの新デバイス『プルーム・エックス』も全国発売。紙巻たばこと加熱式たばこの両輪で巻き返しを図る同社、今後の動向も気になるところだ。

 このように、3社3様、さまざまな考え方や戦略があり、ユーザーの選択肢も広い。もちろん、周囲への配慮や健康への影響をとっても、加熱式たばこは時代に即していると言える。そんな状況にありながら、なぜ加熱式たばこは一気に広まることなく、全体の3割にも満たないままなのか。

 特に年配層や地方層では、紙巻ユーザーの比率がいまだ圧倒的に高い。加熱式の“たばこ感”の弱さによって敬遠する紙巻ユーザーも多く、紙巻たばこの“次”の受け皿になり得ていないというのが現状だ。また、加熱式に変えたところで、とくにメリットが感じられないという実情もある。

 「かつては、『プルーム・テック』なら吸えるというカフェもありましたが、今ではそういった優遇措置も少なくなってきました。やはり、既存のものから乗り換えるには、何かしらメリットが必要。例えば、加熱式たばこの値段、税金を安くするという社会的な変化があってもいいのかもしれません。イギリスでは、『害の多いものから害の少ないものに変えてもらえば、社会全体のメリットに繋がる』という、ハームリダクションという発想で、これを国として推し進めています。たばこも同様で、健康懸念物質の少ない加熱式たばこに優遇処置があれば、シェアは伸びていくのではないか。また、加熱式たばこOKのお店の出店、喫煙所の増設などが進むことで、迷惑な路上喫煙などもなくなり、喫煙者と非喫煙者の共存の道も見えてきます」。

■喫煙者・非喫煙者の共存の行方は? 加熱式たばこ市場のさらなる活性化で劇的な変化も

 では、紙巻たばこユーザーが求める“吸いごたえ”の点ではどうか。それについてゲンキ氏は、「『プルーム・エックス』の登場で国内シェアに変化が起こるかもしれない」と語る。

 前述のとおり、“煙のない社会”を目指すフィリップ・モリスに対し、JTは紙巻ユーザーも見捨てず、あくまで“選択肢”を広げるという考え方だ。「実際、『プルーム・エックス』を試したブログ読者からも、『おいしくなった』『吸いごたえが増した』という声が多い。紙巻たばこユーザーもこれなら移行しやすいのではないでしょうか。また、デザイン性にも優れているため、アイテムとしての魅力も高い」とのこと。加熱温度を最適化することで、吸う人の満足感と周囲への配慮の両立も実現しているようだ。「JTは味はもちろん、“におい”にこだわる会社。高温にしたことで少しはにおいが出ますが、バランスをとった結果。喫煙者と非喫煙者の共存を意識している同社ならではでしょう」。

 吸いごたえが求められながらも、周囲への配慮、健康懸念物質の低減が課せられた加熱式たばこ。だが、各社の開発努力により、さまざまな問題がクリアされようとしており、実際に調査が進められているという。「実は、厚労省も加熱式たばこの健康懸念物質9割減に関する科学的知見を発表していて、主流煙のニコチン濃度は紙巻きたばこの3分の2程度。同一条件下(換気のない狭い室内で喫煙した場合)で室内のニコチン濃度を測定したところ、紙巻きたばこが1,000~2,420 マイクログラム/立方メートルなのに比べ、加熱式たばこは26~257 マイクログラム/立方メートルです(国立がん研究センター委託事業費「たばこ情報収集・分析事業」による調査)。『たばこだから』と一概に禁止して歪みが出るよりも、こうした正しい情報をもとに、配慮し、共存できる社会になればと思います」。

各社が切磋琢磨し、盛り上げようとしている加熱式たばこ市場。10月からの値上げの影響とともに、紙巻派がどれだけ加熱式たばこへとスライドするかが注目される。喫煙者と非喫煙者の共存のためにも、今年が大切な節目と言えるだろう。

(文:衣輪晋一)

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