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今話題の「NFT」はエンタメコンテンツにどう活かす?

デジタルコンテンツの著作権等の情報を一元管理する次世代型著作権流通システム「AssetBank(アセットバンク)」の画像

デジタルコンテンツの著作権等の情報を一元管理する次世代型著作権流通システム「AssetBank(アセットバンク)」

 昨今よく耳にする「NFT」。英語のNon-fungible Tokenの頭文字をとった略語で、日本語では「非代替性トークン」として訳されている。この技術を使えば、デジタルの世界で“本物”と証明できるため、コンテンツ産業においても大いに成長が期待できると注目を集めているのだ。とはいえ、NFTでいったい何ができるのか? なかなか理解しづらい概念であることも事実。そこで、NFT事業に本格参入したエイベックス・テクノロジーズ社の山本周人氏(BlockChain事業グループ ゼネラルマネージャー)に、エンタテインメントコンテンツへの活用法について聞いた。

【写真】BABYMETALが1000セット限定販売した初のNFTトレカ

■デジタルコンテンツを限定品として販売することを可能にするNFT

 今年3月、ツイッターの創業者であるジャック・ドーシー氏の“史上最初のツイート”が競売にかけられ、日本円にして3億円を超える金額で落札された。また、エイフェックス・ツインの音楽が盛り込まれた1点もののデジタルアートがオークションに出品され、約1400万円で取引された。日本国内でも、結成10周年を記念したBABYMETALのデジタルトレーディングカードが発売され、限定1000セットが即完した。

 容易にコピーできるデジタルコンテンツに、なぜこれほどの高値がつき、瞬時に即完したのか。これらの商品は、デジタル資産を管理できる新たな認証技術「NFT」によって、“本物”かつ“唯一(あるいは数量限定)の物”という保証が担保されたことにより、希少価値が高まりマニア心をくすぐったからだ。

 NFTとは、情報の改ざんがほぼ不可能なブロックチェーン技術を応用した、いわばデジタルコンテンツの証明書である。これを付帯させれば、リアルな絵画と同じように、音楽や画像、キャラクターといったデジタルコンテンツを限定品として販売することが可能で、万が一、コンテンツがコピーされたとしても、コンテンツが「本物」であることを証明できる。なお、ブロックチェーンというワードから連想されやすい仮想通貨(暗号資産)とNFTは、共に兄弟関係と言える技術だ。

 この技術を使い、エイベックス・テクノロジーズは、デジタルコンテンツに唯一性や限定性を持たせるデジタル証明書サービス「A trust(エートラスト)」を提供しており、このほど、デジタルコンテンツ著作権などを一元管理する次世代型著作権流通システム「AssetBank(アセットバンク)」を開発。電通や朝日新聞社など11社からなるコンソーシアム型企業連合団体JCBI(Japan Contents Blockchain Initiative)のブロックチェーン上にプレローンチした。

■NFTがクリエイターやIPホルダーにもたらすメリット

 では一体、これらサービスで何ができるようになるのだろうか。デジタルコンテンツを創作したクリエイターやIPホルダー(知的財産保有者)に、どんなメリットがあるのだろうか。

 アイドルのミュージックビデオ(MV)を例に考えてみると、出演者(アーティスト)、衣装、ヘアメイク、ダンス振付、カメラワーク演出、セット、照明等、さまざまな構成要素により成立している。このMVを販売・配信した際、現状ではコンテンツとしての著作権の範囲は動画や楽曲、歌詞など限定的なものとなっているが、NFT技術を使えば、それらの構成要素そのものの権利を守りながら、新たな商材へと変えていくことが可能になるかもしれない。

「衣装やダンスモーションなどコンテンツを細分化し、それぞれを、コンテンツを形成する最小単位であるデジタルアセット(デジタルデータの資産)と定義します。つまり、コンテンツはデジタルアセットの集合体だという考え方で、各々のデジタルアセットを登録し、トレーサビリティ(追跡可能性)に優れたブロックチェーン上で管理しようというのが、AssetBankの根本的な考え方です。ダンスの振付をデジタルアセットとして登録しておけば、第三者がそのデジタルアセットを利用し、別のアニメキャラクターで躍らせるUGCが作られても、振付の権利を管理でき、同時に健全な二次創作など“n次創作”マーケットを作ることができるのです」(エイベックス・テクノロジーズ BlockChain事業グループ ゼネラルマネージャー・山本周人氏/以下同)

 より一般的なコンテンツビジネスの例として、Aさんがデジタルフィギュアを独自開発したとしよう。それを販売しようと公開すると、現状ではいくらでもコピーされてしまう。しかし、AssetBankに登録すれば、権利の所在を明確にでき、そのデジタルフィギュアを販売したいECショップやゲームに使いたいアプリメーカーと当事者同士で契約を結ぶことで、収益も適正にAさんに還元される。もちろん、販売・活用する事業者側も、正規コンテンツとしてデジタルフィギュアのビジネスが行える。

 この登録と契約を行う場が「AssetBank」であり、そのブロックチェーンシステムの運営や権利管理をJCBIが行うという仕組みだ。なお、契約内容はブロックチェーン上に刻まれ、改変・修正される度に“DNA”という形で管理されるため、常に契約内容を追える状況となる。

 この考え方に基づけば、将来的には個人クリエイターの権利も適正に管理できるようになるだろう。例えば、JASRACやNexToneといった著作権集中管理団体に登録していない個人クリエイターの楽曲を第三者が使用した場合、現状では楽曲の著作権は管理されない。だが、ブロックチェーンによる分散型個別許諾システムを用いることで、当事者同士で許諾を管理することが可能になるというわけだ。

 そしてAssetBankでの契約を大前提とし、コンテンツが紛れもない本物であるという証明、すなわちNFTを発行するのが、前出のサービス「A trust」となる。ただし、同社がA trustで実現しようとしていることは、冒頭で紹介したような、今、話題を集めているNFTビジネスとは方向性が異なるようだ。

■NFTが切り拓くファンファースト、コンテンツファーストな世界

 NFT最大の強みは、「本物の価値」の証明だ。それ以外にも、唯一性が担保されるため使用が限定されず、さまざまな対応アプリと連携させて使用できる。また、コンテンツを売却する際も、NFTの証明書を安全に移転でき、二次流通時にも著作者に還元される。こういったNFTの特性を最大現に活かそうというのが、山本氏の考えだ。

「確かに昨今、NFTというワードが賑わっていますが、我々がやろうとしていることは、あくまでもファン目線。A trust証明書付きのデジタルコンテンツなら、間違いなく本物で、一度購入すれば“Atrust ID”対応のいろんなアプリで使え、いらなくなったら人に売ることができ、『便利な世の中になったね』と感じてもらえる市場を作ることです。その実現のための技術がNFTだったということで、極論を言えば、ファンの方はNFTという言葉を理解する必要はありません。例えるなら、“ブラウザ”という言葉や仕組みを知らなくても、みなさんパソコンやスマートフォンで、日々ブラウザを使ってネットを見ている。NFTもそれと同じでいいと思っています」

 他にも、現在のNFTコンテンツ市場では取引に仮想通貨が必要で、ウォレットを持ち、秘密キーを管理しなければいけないといったハードルがあるが、A trustは、日本円などの法定通貨で決済でき、ウォレットを必要とせず、一般的なECショップでコンテンツを購入できるといった新たな仕組みを構築中だ。

 このファンファーストの考え方と同時に、プラットホームに支配されない自由さと、しっかりとした権利をコンテンツに持たせるといったコンテンツファーストという側面も、同社の姿勢から感じ取れる。

「これからは、いろんな個人クリエイターが集まって作品を生み出すクラウド協業的なコンテンツが増えていくと考えています。その時に、NFTに限らずブロックチェーンを使えば、各クリエイターが貢献度合いに応じて配分される権利を持つことが可能です。さらに、そのコンテンツを形成する個々のデジタルアセットにNFTを発行しておくことで、別のモノと組み合わせて新たなコンテンツを適正に作ることもできるようになります」

■エンタメコンテンツはリアルで存在するアイテムのDX化が第一段階

 では現状、エンタメ関連ではどのような商品がNFTコンテンツとして適しているのだろうか。山本氏によれば、「まず、リアルな世界で存在しているアイテムのDX化が第一段階」と言う。

「トレーディングカードはリアルな世界で人気となり、それをデジタル化して、さらに所有権が担保されることで日の目を見るようになりました。フィギュアも同様で、我々も既に事業としてバーチャルフィギュアに取り組んでいます。そういった、リアルにある体験をデジタルで遜色なく実現し、さらにデジタルならではのもの、例えばトレーディングカードに特殊なエフェクトを加えるなど、よりインタラクティブなリッチ体験へと導くことがファーストフェーズと考えています。このほか、イラストを描く際に、その制作プロセス自体をNFT化して販売することも可能になるかもしれません。そこで当社の別プロダクトである、誰でも簡単にアニメが作れる“AniCast Maker”にも、制作プロセスを保存できる仕組みを取り入れています。ただ音楽に関しては、リスナーを限定せずに多くの人に聴いて欲しいという場合が多くハードルがいくつもあるため、いろんな工夫が必要だと考えています」

 こうしたユニークなアイデアを披露しながらも、「ただ安易にNFTビジネスを始めることが正しいとは考えていない」と山本氏は付け加えた。

 実際に海外では、正規のライセンスを持たない偽物(コピー)が勝手にブロックチェーン上に登録され、NFTが発行されてしまう事例もあり、デジタルコンテンツを流通させていくうえでの課題が存在していることも確かだ。そのリスクを軽視してNFTビジネスに走ってしまうと、コンテンツ業界のマーケットとして成熟する前に、一過性のものとしてしぼんでしまう危険性も十分に考えられる。だが一方で、AssetBankを通してオリジナルコンテンツのライセンスを明確にしつつ、AtrustでNFT化しておくことで、コピーが広まることを防ぐと共に、偽物を許さないという企業姿勢を示すこともできる。これは今の時代のブランディングという観点でも重要なことだろう。

 ここ数ヶ月で耳にする機会が増えたNFT。これもまた、急速に変化・進化していくさまざまなシステムと同様に、加速度を増して発展していくに違いない。NFTを取り巻く動向は、エンターテインメント、コンテンツ業界がもっとも注目すべきものの1つであることは、間違いないだろう。

(文・布施雄一郎)

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