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専門誌創刊に地上波テレビ放送も…韓国の次はタイ“BL”ドラマに熱視線、人気の背景は?

日本初の専門誌『タイドラマガイド「D」vol.2』の画像

日本初の専門誌『タイドラマガイド「D」vol.2』

 昨年3月頃より突如として起こったタイドラマブーム。なかでもBL(ボーイズラブ)ドラマがアジア圏を中心に旋風を巻き起こしており、Twitter世界トレンド1位を獲得した作品もある。日本でも「韓ドラ・華ドラに次ぐアジア発エンタメ」として注目を集めているが、そもそもBLは日本発祥のコンテンツ文化だった。目の肥えた日本のファンがタイBLを愛してやまない理由とは? 日本初の専門誌『タイドラマガイド「D」』編集長で東京ニュース通信社の田中美里さんに話を聞いた。

【写真】ブライト&ウィンがキス寸前!? ブームの火付け役となった『2gether』

◆日本の有志が日本語字幕を作成…SNSでの“布教”が国内ブームに火を付けた

 タイの人気俳優をフィーチャーした日本初の展覧会『GMMTV EXHIBITION in JAPAN』主催のテレビ朝日は、2015年よりタイとビジネス交流をしており、昨年11月にタイの大手エンタメ会社であるGMMグラミー社の関連会社「GMMTV」と業務提携したことを発表している。タイのドラマジャンルのなかでも現在、日本をはじめとしたアジアを中心に圧倒的に人気を博しているのが男性同士の恋愛模様を描いたBLドラマで、その多くの名作を制作しているのがGMMTVだ。

 昨年9月に創刊された日本初の専門誌『タイドラマガイド「D」』編集長の田中さんもタイドラマにすっかりハマった1人だ。

「ただ、実は私もタイドラマの魅力をもっと以前に発見していた方々を後追いした形なんです。昨年3月、Twitterを閲覧していたところタイBLドラマの布教シート(作品の魅力をわかりやすく説明した画像)が目に止まりました。そのままドラマが視聴できるというYouTubeに飛び、その後、約1週間で数々の名作をイッキ見するぐらいハマってしまい…。3月末にはタイドラマ専門誌の企画書を上司に提出していました」

 タイのドラマは近年、英語字幕付きの公式動画がYouTubeにアップされることが増えたそう。そこへ日本のファンの有志が日本語字幕を付け、さらにSNSで“布教”したことが国内におけるブームに火を付けたとされる。

「布教シートの拡散がステイホーム時期と重なったこともあり、同時期に私と同じ体験をした方は多かったと思います。ドラマ『2gether』主演のブライト&ウィンのインスタグラムフォロワーも昨年3月頃はブライトくん200万人、ウィンくん100万人程度でしたが、いまやブライトくんは700万人超え、ウィンくんは500万人超えと、この1年で爆発的に増えています」

◆新人俳優の登竜門であるタイBLドラマ、フィクションとは思えないキャスティング

 タイでBLドラマは「Yシリーズ」と呼ばれ、若者を中心に人気を博している。“Y”とは日本語の「やおい」(男性同士の恋愛を題材にしたコンテンツの俗称)の頭文字。つまりBLは日本発祥の文化であり、日本にも優れた作品は数多ある。それでもなお、日本のBLファンを布教に走らせるほど魅了している要素はどこにあるのだろうか?

「たくさんあるのですが、個人的に“タイドラマのここがすごい”と思うのは、やはりキャスティングの絶妙さでしょうか。弊誌でインタビューしたドラマ『I Told Sunset About You』のボス監督によると、『恋愛ドラマで最も重要なのは俳優同士の相性。単に人気のイケメン俳優を組み合わせればいい、というわけではないんですね。もちろんプロですから“演じる”ことはできます。それでも俳優同士の関係性が本当にいいものでないと良作にならないし、視聴者を作品に没入させることはできない』とおっしゃっていました」

 また、俳優が決まった上でドラマを制作するのではなく、多くが人気小説の実写化であることからも役やストーリーありきで配役されるのが一般的だという。BLドラマへの抜擢をきっかけに人気をつかんでいく新人俳優や若手俳優も多く、日本で例えるなら戦隊もののような登竜門になっているようだ。

「ストーリーありきのはずなのに、まるで当て書きのようなキャスティングがされるので、登場人物の誰もがハマり役なんです。だからフィクションとはわかっていながらも『どこからどこまでが演技なの?』とモヤモヤ妄想させてくれる。個人的には、そこもファンにはたまらない魅力です」

 さらにドラマが放送終了しても、長らく“カップル同士”で活動を続けるケースが多いのがタイBLドラマの特徴だ。

「日本ではドラマの放送が終了すると、出演者同士の表立った交流は減ります。一方タイでは、一緒にライブ配信をやったり、バラエティ番組に出演したりはもちろん、片方がSNSに何かをアップすると、もう片方が即“いいね”をすることも多いんです。そんなところにも2人の相性の良さが現れていて、いつまでも“沼”から抜け出せない要素の1つですね(笑)」

◆YouTubeがドラマを世界に広げ、SNSが俳優への愛を増幅させブームとなったタイドラマ

 これはタイのSNS文化が発達しているからだと思うが、タイの人たちはSNSへの抵抗感があまりなく、「なんでもとにかく投稿」する傾向があるという。

「エンタテインメントの商習慣の違いなのか、“公式の情報解禁”があまり厳密ではないのか、SNSで『○○は来週からオンエアします』と制作会社が突然発表することもあります。事前に聞いていた解禁日と違うことも多々ありますね(笑)。制作会社や俳優たちのSNSの更新頻度も非常に高く、ありがたいことにとにかくなんでも投稿してくれるので、SNSから目が離せないんですよ」

 SNSの使い方にも国民性が現れると言うべきか。いずれにせよYouTubeがドラマを世界に広げ、SNSが俳優への愛を増幅させたことは事実で、タイドラマが国境を越えた決め手としてデジタル媒体が効果的に作用したことは間違いない。

 近年、タイBLドラマのクオリティはますます高くなっている。6月からWOWOWで放送されるBLドラマ『I Told Sunset About You~僕の愛を君の心で訳して~』は、全編プーケットで撮影された芸術ともいえる映像美や俳優の繊細な演技、豊かな音楽で世界的に評価が高い。なかでもBL発祥の地である日本のファンは目が肥えている。男性同士の恋愛が描かれてさえいれば、納得するということではないはずだ。視聴者の期待に応えるように、タイの制作会社は切磋琢磨して良作を生みだし続けている。

 また、かつてコア層に支えられていたBLコンテンツだが、近年は日本でもドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)や『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)などのヒットを受けて、これまでBLに触れたことがなかった新たなファンが増加。日本でもBLドラマや映画は徐々に増えているが、多様な性のあり方に比較的寛容なタイのコンテンツ数は圧倒的だ。

 前述のようにYouTubeの無料視聴から起こったタイのドラマブームだが、昨年夏頃よりCSや日本の配信サービスが力を入れ始めている。当然、有料コンテンツも増えるわけだが、田中さんは「できれば応援を続けていきたい」と話す。

「個人的には、日本の配給会社がドラマの権利を購入し、現地の制作会社に資金が回ることでさらに良質なドラマが制作されるのが理想的なあり方だと思うんです。タイの制作会社も、コロナ禍でイベントや撮影などが中止・延期になり、予想外の支出も多いはず。今はまだ、エンタメ界におけるタイと日本の関係を構築している途中で、まだまだお互いに手探りなことばかり。タイドラマというムーブメントも起こり始めたばかりで日本に根付いておらず、まだ不安定で大きいとは言えないジャンルです。俳優たちもコロナ禍が明けたら日本でファンミーティングをしたいと熱望してくれていますし、これからファンはもっともっと増えていくと信じています。現在、さまざまな企業がこの火を絶やさず盛り上げていきたいと尽力されています。タイと日本では紙媒体に対する考え方がまったく違うので、正直、思うようにいかないことばかりですが(苦笑)、弊誌もその一端を担えたらうれしいです」

 『タイドラマガイド「D」vol.2』の表紙にはタイBLの金字塔と言われるドラマ『SOTUS』シリーズの主演カップル、クリス&シントーがフィーチャーされ、日本のファンを歓喜させただけでなく、タイはもちろん、国外から翻訳出版の要望が届いているという。タイドラマのブームはまだまだ始まったばかり。これからどのように発展していくのか注目したい。

(文/児玉澄子)

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