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“原因不明の3つの病”かかえた聖火ランナー、車椅子と自らの足で届けた「サポートへの恩返し」

聖火ランナーを務めた塚本明里さん。病気のため1日20~30分ほどしか起き上がれない(写真:本人提供)の画像

聖火ランナーを務めた塚本明里さん。病気のため1日20~30分ほどしか起き上がれない(写真:本人提供)

 現在、東京五輪・聖火リレーが日本各地を巡っているが、岐阜県でランナーを務めたのが、ご当地タレント・モデルの塚本明里さんだ。彼女は、原因不明の3つの病気を抱え、普段は起き上がることさえままならない。当日は車椅子、そして自らの足で立ち、希望と「病気のことを知ってほしい」という思いを届けた。16歳で発症した彼女が、なぜそこまで奮起できたのか。昨今議論となっている、車椅子ユーザーとサポートについても言及した。

【写真】「週2で40本の痛み止め注射」大変な治療を乗り越え、聖火ランナー務めたキュートな塚本さん

■体を起こしていられるのは1日20~30分、なぜ聖火ランナーに?

 レディー・ガガが闘病中であると公表したことで知られる、全身を激痛が襲う「線維筋痛症」。極度の倦怠感に襲われ、日常生活が困難になる「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」。脳と脊髄の周りを満たす髄液が減少状態となり、頭痛をはじめとする様々な神経症状が現れる「脳脊髄液減少症」。それら3つの病気を抱える塚本明里さんは、岐阜県を中心に活動するご当地タレント・モデルだ。

 現在も、20~30分も体を起こしていると具合が悪くなり、限界を超えると失神してしまう。体中の痛みのために週2回40本もの痛み止めの麻酔注射をする日々を送っている。そんな闘病生活は想像を絶するほどつらいはずだが、話を聞かせてくれた本人は常に笑顔で前向きで、なにより現状を冷静に受け止める精神力に驚かされた。

 「最初に体調が悪くなったのは16歳の春、原因がわからないまま痛みや体調不良で動けない日が続きました。だから、発症から1年半後に病名がわかったとき、普通は落ち込むと思うんですけど、嬉しかったんです。病名がわかれば対処ができるし、どうしたらもっと良くなるのかを考えることができるので悪いこととは捉えませんでした。塚本明里という私の身体に、病気が居候してきた。それなら、私がやりたいことがあるときは身体に我慢してもらうし、身体を休ませる日には私が我慢する。そんなふうに、うまく付き合っていけばいいのかなって」

 その芯の強さの源は、彼女のなかで次から次へと浮かび上がる、“やりたいこと”への貪欲さだ。地元商店街のキャラクターの広報や大学のゲスト講師や病気の啓発をする患者会代表、そしてまちづくりの活動など、今の自分にできることを精力的に行っていく姿が認められ、今年の4月には東京五輪の聖火ランナーを務めた。

 「病気になって、気持ちが下向きになっていた時期もありました。でも、できないことの数を数えるより、今できることの数を数えていこうと思ってからは、すごく前向きになりました。もともと子どもの頃から、やりたいことに貪欲なタイプではありました。病気になってからもそれは変わらない。聖火ランナーも、『周りのサポートを受けながらならできる!』と思えました」

 当日は身体の調子も芳しくなく、前半は車椅子で臨んだが、後半は自分の足で歩き、聖火を次のランナーへと託した。車椅子で出場すること、車椅子を降りて自ら歩くこと。その行動すべてを見てもらえたことで自分の役割が果たせたと思ったという。

 「最初は自分にできることをしようという目標だったんですが、車椅子の私が出る以上、きちんとその想いを伝えなくちゃと思いました。車椅子は歩けない人だけでなく、病気などでいろんな人も使っているということを知ってもらいたい。私は周りの人の手を借りないと日常生活すら送れないけれど、見た目には障害があるとわからない人や病気の人でもサポートがあれば社会に参加できる人がいるんだということ。そういったことを知ってもらいたいという祈りを込めて、最後は歩いてゴールしました。実際、沿道で見ていた子どもたちが『あの人、立てるんだね』と疑問に思っていたようで、私の友だちが病気のことを説明してくれたそうです。そうやって病気を知ってもらう一歩になれたのが、すごく嬉しかったですね」

 「本番当日までは、とにかくイメージトレーニングを重ねて(笑)。同じ重さの手作りトーチを持って、笑顔で手を振る練習をしましたが、やっぱりすごく緊張しました。これまでもいろんな人に支えてもらいながら活動をしてきましたが、五輪という世界的なことに参加できて、ようやくひとつ、サポートしてくれる人たちに恩返しができたかなと思っています」

■車椅子ユーザーにまつわる物議、「支え合うなかで相手に感謝することが一番大事」

 国籍や人種、年齢も関係なくスポーツで競い合う五輪の聖火ランナーを務めた塚本さんの姿は、病気や障害があっても社会に出たいと思う人々に、大きな希望を与えたに違いない。もちろん、サポートする人たちにとっても、同じことが言える。

 ところで、周りのサポートといえば昨今、最近車椅子ユーザーの公共交通機関利用について物議が起きている。進んで手伝う人、見て見ぬふりをする人、手伝ってもらって当然だと思う人…様々な感情が入り混じる社会を、彼女はどう捉えているのだろうか。

 「バリアフリーが整えられない場所でも、心のバリアフリーがあればいいなと思います。障害者だからではなく、困っている人がいたら助けようという気持ちだけでいいと思うんです。私自身、人に支えられて生きているし、何ができるかわからないけど、人を支えたいと思いながら生きています。そうやって支え合うなかで、相手に感謝することが一番大事なのかな。“お互い様”の気持ちを持つことで、感謝しあえる社会になればいいなと思います。私の母は、私が病人であろうがなかろうが、感謝を忘れたら叱ってくれる人。母から教わったことを私なりの解釈で発信していきたいし、自分もサポートできる人になりたいと思っています」

 高校生で病気を発症し、大学は入学した途端に休学。写真誌『岐阜美少女図鑑』でモデルに挑戦し採用されたものの他のモデル達と同じようなイベント活動はできなかった。だが、それでも『ミス・ユニバース』、広報、ご当地タレント、メディア出演など、普通なら「病気だからできない」と諦めてしまいそうなことにもすべてトライしてきた。そこには、タレント活動によって病気への認知を広めたいという明確な目的がある。

 「私の抱えている3つの病気はどれも余り知られておらず、見た目には病気があるように見えません。そのため“怠け”“詐病”と誤解を受けて悲しい思いをする患者さんがいます。発病当時は医師にも知られていませんでした。だから病気の正しい理解を広めることや、ヘルプマーク普及の活動をしていかなければと思っています」

 「いつもサポートしてくれる母も、私がやりたいと思うことを何でも挑戦させてくれて。事務所の社長さんも、今の私にやれる仕事を探してくれています。『こんな私で申し訳ない』と思うよりも、『ありがとう』という気持ちを返したい。そうやって、前向きに活動をしていきたいと思っています」

 とはいえ、SNSなどで不特定多数と接点が持ててしまう今の時代。啓発活動の一環としてメディアに登場するだけで、誹謗中傷を受けることもあるという。

 「DMで『死ね』と言われたこともあります。でも、数人からの悪口よりも、応援してくれる人が与えてくれるパワーのほうが、何倍も大きい。だから、そんな小さな声には負けません(笑)。私にとってSNSは、人との関わりが持てる大切な場所。誹謗中傷に対しては、『こんな人もいるんだな、寂しいな』と社会勉強のつもりで対応しています」

■コロナ禍のなかでの光明、「寝たままの私にもリモート出演ならできる」

 何事も前向きに、建設的に考え、さまざまな挑戦をしてきた塚本さん。現在はコロナ禍の影響でタレント活動にも支障が出ているかと思えば、「また新たにやりたいことが見つかった」のだと言う。

 「今、テレビのニュースや情報番組でも、リモートで出演されるコメンテーターの方が増えていますよね。それを見て、『これなら、寝たままの私にもできるんじゃない!?』と思ったんです。たとえ寝ながらでも、リモート出演してきちんとコメントすることで、『この人はなんで寝ているんだろう?』と疑問を持ってもらえる。そうしたら、病気のことも知ってもらえるかもしれない。また、ドラマなどに“車椅子の人”として出演できたら、だんだんと見慣れてきて『そういう人もいる』ということが当たり前の世の中になるかもしれない。そんな希望を持っています」

 そして、もう一つ。プライベートの目標は、「結婚です!」とはにかみながら笑顔で答えた塚本さん。

 「内緒ですけど、私と結婚してくれる人は絶対にいい人のはずですから! 運命の出会いを待っています(笑)」

 やりたいことをやる=楽しくなるという自分なりの図式で、苦痛や苦悩を乗り越えていく塚本さん。その姿は、闘病する人だけでなく、悩みやコンプレックスを持つ人すべての人の心に明かりをともしてくれるはずだ。

 「とにかく、一人じゃないよと伝えたいです。私自身、誰にも会えないときにSNSで同じ病気の人とつながって励まされたし、いろんな方がサポートしてくれるから活動ができています。病気や悩みを抱えて孤独を感じてしまっても、同じ思いをしている人や支えてくれる人は必ずいます。一人で一歩を踏み出すのは大変。みんなで一歩踏み出す世の中になってほしいと思います」

(文:川上きくえ)

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