プレゼント・クーポンPRESENT COUPON

フェリアSNSSOCIAL

音楽

「届ける」から「共有」コロナ禍で変わる音楽プロダクションのカタチ

スキマスイッチ振替公演&生配信ライブ(今年2月 熊本城ホールで開催)の画像

スキマスイッチ振替公演&生配信ライブ(今年2月 熊本城ホールで開催)

 来年、創立30周年を迎えるオフィスオーガスタ。同社がこれまで数々の才能やヒット曲を送り出してきたのは周知の通り。前職のレコード会社を経て2002年にオーガスタに入社し、このほど代表取締役社長に就任した齋藤由典氏は「オーガスタのDNA」を直系で受け継ぐ3代目だ。コロナ禍でアーティストの志向もリスナーの聴き方も大きく変わる最中、大変な舵取りを任されたことになる。就任の抱負を「100年企業を目指す」と語る齋藤氏に、オフィスオーガスタがこれから進む方向について聞いた。

【写真】今年デビュー15周年を迎えるオフィスオーガスタ所属の秦基博

■今後も「アーティストに選ばれる会社」になるためのコロナ禍施策

 オフィスオーガスタが30年の歴史を通して培ってきたアイデンティティ。それは「自分たちが信じる才能と音楽を研ぎ澄まし、1人でも多くのリスナーに届ける」ことだったと齋藤氏は言う。山崎まさよしの「One more time, One more chance」や、元ちとせの「ワダツミの木」、スキマスイッチの「奏(かなで)」、秦基博「ひまわりの約束」といったエバーグリーンなヒット曲を振り返れば納得できる言葉だ。

「自分たちが信じる音楽と才能。オーガスタの軸であるその部分は変わりません。ただ、もはや『届ける』という言い方ではなく、音楽を通したコミュニケーションが完全に双方向なものへとシフトした今は、『1人でも多くのリスナーと共有したい』というほうが正しいのかもしれません」

 その実感はこのコロナ禍を通してより強くなったという。世界中の誰もが行動を制限される中、同社所属アーティストたちも次々とツアーの中止・延期に追い込まれた。中でも屋台骨を支えるベテラン勢のライブ中止の痛手は大きかったはずだ。

「最初に中止を決断したのが2月28日、熊本で予定されていたスキマスイッチのツアーファイナルでした。あの時は急だったし、ライブ配信の手法もよくわかっていなかった。彼らも衣装を着ることもなく、携帯端末から公式YouTubeチャンネルや各SNSの公式アカウントを通じて無料配信をしたんですよね」

 3年後くらいに来るはずだった未来が、一足飛びに目の前に現れた。コロナ禍が音楽業界に降りかかってきた感覚を、齋藤氏はそう振り返る。
 
「本来ならトライアンドエラーを繰り返しながら経験値を積み上げることができた時間が一気になくなりました。状況に順応するために、私もスタッフも外部でのセミナーや他社事例の勉強会など積極的に受講して多くを学び、いち早く実践することに必死でした。そうやって、自分たちが進化することで、音楽活動を止めずに前に進もうとしていたのが2020年のオフィスオーガスタの姿でした」

 恒例の野外フェス「Augusta Camp」は配信による開催となり、所属アーティストによるユニット・福耳の新曲や配信番組などを軸とした「Augusta HAND × HAND」プロジェクトなど、オウンドメディアやライブ配信プラットフォームを通じたリスナーとのコミュニケーションを強化した。

「それらはコロナ禍の中で音楽活動を止めないためであるのと同時に、今後もオーガスタが『アーティストに選ばれる会社』であるために積み重ねている実践でもありました」

■プロダクションのあるべき姿「オーガスタはユニオン」

 アーティストが自己発信し、リスナーと直接繋がることでヒットを生み出す例は今や珍しくない。音源制作のコストも安価になった。もはやプロダクションやレコード会社と「手を組む」価値を見出せないアーティストが増えているのも無理のない話だ。

「ただ、若いアーティストが『なぜプロダクションやレコード会社が必要なんですか?』と聞いてきたら、僕は『オフィスオーガスタは唯一無二の素晴らしい才能が集まるユニオン』だと答えるようにしています」

 現在の所属アーティストは21組。その中には多くのヒット曲を放ってきたベテラン勢のほか、今年大学を卒業したばかりのメンバーを含むガールズ・スリーピースバンド・リーガルリリーや、21歳のメンバーからなるFAITH、同じく21歳のL.A.在住シンガーソングライター・DedachiKentaといった近年所属した新人もいる。ベテラン勢が生み出すビジネスが新人の活動を支え、やがて新人たちも中堅~ベテランへと育っていく循環。ベテランの活動の間隔が空いたりするときには、やがて成長した新人が支える。コロナ禍のような大きなリスクの際には”オールオーガスタ”で支え合う。長年、事業を継続させてきたレコード会社やプロダクションには、そうしたユニオン(協同組合)のような適正なエコシステムが必ず存在する。
 
「自分たちが信じたアーティストが、音楽活動を一生の生業にできるように末長くサポートすること。それが、オーガスタが今後も続けていくことです。しかし、音楽とリスナーを結ぶ動線はこれまでとは確実に変わっている。そこに対応できず、ヒットを生み出せなくなったらたちまち『アーティストに選ばれない会社』になってしまいます。だから僕たちは学びを止めてはいけないんです」

■30周年通じ「100年先も愛され続ける礎を作る」

 新人発掘についてもオーガスタはアーティストを「迎えに行く」立場。所属の選択権はあくまでアーティストにあるという姿勢で取り組んでおり、5月にはオフィスオーガスタとの契約を前提としない新人発掘ライブ「CANVAS Vol.1」を行う。

「主にウェブで見つけた新しい才能5-6組を迎えてのキュレーションライブで、シリーズ化していくことを目指しています。有観客と配信を同時に行うので、全国のメディアやレーベルなどの方々にもぜひ観ていただきたいですね。このイベントは30年にわたってオーガスタを支えてきてくれた”音楽そのもの”への恩返しの意味が大きいんです。ですから、このイベントをきっかけに他社に所属することを選択するアーティストがいても構いません。もちろんオーガスタを選んでくれたら嬉しいですが(笑)」

 オーガスタが100年先にもリスナーに愛され続ける音楽制作プロダクションであるための礎を作ること。それが30周年を通した取り組みに一貫することだと齋藤氏は語る。揺るぎないアイデンティティを未来に継承しながら、時代の変化にも柔軟に対応し歩み続ける。その両面を持ち合わせた同社から、今後も新たに生まれてくるであろう才能や音楽に期待したい。
(文・児玉澄子)

ORICON NEWSは、オリコン株式会社から提供を受けています。著作権は同社に帰属しており、記事、写真などの無断転用を禁じます。

こちらの記事もどうぞ