
嘉例川駅に到着する特急「はやとの風」
レトロな木造駅舎・嘉例川駅
駅に隣接する「かれい川ふれあい館」館長の山木由美子さんの案内で、素朴な木造駅舎が刻んだ歴史と魅力に浸ることができました。そして嘉例川駅といえば駅弁「かれい川」。JRの特急「はやとの風(=写真上)」で行くもよし、同列車の停車時刻に合わせてドライブもよし。駅の風情とともに味わって。
百年の旅物語かれい川
九州駅弁グランプリ3連覇のうまさ
全ておいしいが、中でも記者のお気に入りは「嘉例川コロッケ」。ほろっとしたジャガイモ、地元特産のシイタケの風味がたまらない。
本当に野菜だけ? と驚くうまさ!!
かれい川の湯
お食事処 嘉好
全国から観光客が訪れる嘉例川駅で最終回を迎えた“おでかけスケッチ帳”。これまでご覧いただき、ありがとうございました。
引き続き、スケッチでほんのりとお楽しみください。
100年超 時を刻む木造駅舎に華やかひな飾り

イラスト:張 佐和子
静かな山あいにたたずむJR肥薩線の無人駅、嘉例川駅。レトロな木造駅舎が人気で、観光特急「はやとの風」が停車し、平日も見学に訪れる人の姿が絶えない。2月から3月末までは、駅舎内に恒例のひな飾りが展示され、春の彩りを添えている。

ホーム上部の看板に「営業開始明治36年1月15日~」と記されていた。現存する木造駅舎としては九州最古級で、国登録有形文化財。事務室跡には駅名や行先を表示する木製の看板や古めかしい金庫が残り、110年を超える歴史を物語る。戦前、戦後にかけて沿線の農林産物が運ばれ、多くの出征者や就職者を見送った駅。近くの温泉場の湯治客でもにぎわったという。
待合室に鎮座する重厚な木のベンチは、腰かける部分が自然なカーブを描き、座る人に優しい造り。ひさしや棚の受け板のデザインもしゃれていて見飽きない。「昔からそのままの姿なんです」と、駅を拠点に地域づくりに取り組む山木由美子さん。駅前のJA跡を活用した農産物販売所「かれい川ふれあい館」、古い農機具など展示する「かれい川小さな博物館」を、ともに日曜の朝9時から夕方4時までオープンする。ふれあい館では住民手づくりの「かれい川山里弁当」(550円)など並べ、訪れる人を出迎えている。
嘉例川駅
- 霧島市隼人町嘉例川2174[MAP]
- 【問】0995-45-5111(霧島市観光課)
- 見学自由
- 【P】駅前約20台、約150メートルの遊歩道でつながる見学者用駐車場約30台
寄り道グルメ
駅弁「かれい川」

「百年の旅物語かれい川」は、JR九州の九州駅弁グランプリを3度制した嘉例川駅の名物駅弁だ。嘉例川産のシイタケとタケノコの炊き込みご飯の上にごろんと載ったガネ(サツマイモの天ぷら)―。野菜だけを使った素朴な郷土の味わいが、観光客に受けている。
手がける「森の弁当やまだ屋」の山田まゆみさんは「ご飯は竹林に囲まれた嘉例川駅をイメージ。散らしたキヌサヤはササの葉に見立てているんです」と一品一品にこだわりを込める。
2004年運行開始した「はやとの風」を地域振興に生かそう、と妙見温泉観光協会が駅弁づくりを呼びかけたのが誕生のきっかけ。女性向けの第2段「花の待つ駅かれい川」は手作りさつま揚げやシイタケの肉詰め入り。デザートのけせんだんごは安納イモと紫イモ、二つの味が寄り添う。同駅近くの塩浸温泉に“新婚旅行”に訪れたという坂本龍馬、お龍夫妻にちなんだ。駅弁は「はやとの風」車内(JR九州窓口で要予約)のほか、土日祝日に嘉例川駅で販売する。

「弁当は1,080円。土日祝日、嘉例川駅ではガネも販売しています」と、山田まゆみさん
森の弁当やまだ屋
- 霧島市隼人町小田1672-2
- 【TEL】090-2085-0020
- 【休】月曜
嘉例川駅では土日祝日(午前10時すぎ~)のみ販売
ちょこっと寄り道【spot】
かれい川の湯

天降川沿いに立つ日帰り家族湯。露天ぶろ付きなど趣向を凝らした全18室でせせらぎと鳥のさえずりを聞きながら、かけ流しの湯に浸れる。地元の精密金具製造マイクロカットが母体で、地域貢献のため2010年開業。シャンプー類、赤ちゃん用バスチェアやおもちゃの無料貸し出しなど心遣いがうれしい。平日お一人様向け割引も。
ちょこっと寄り道【gourmet】
お食事処「嘉好」

嘉例川駅から「ランチ」ののぼりを頼りに車なら3分ほど、ゆっくりとくつろげる自宅開放型の食事処だ。席からは、肥薩線や周囲ののどかな田園風景を望むことができる。自家米を使用するランチのお勧めは、松花堂弁当(1,100円)やエビフライ定食(950円)。駅の見学客のほか、住民の法事などにも利用されている。
嘉好(かこう)
- 霧島市隼人町嘉例川2871[MAP]
- 【TEL】0995-43-9071
- 【営】11:00~14:00、夜は予約制
- 【休】月曜、年末年始
- 【P】10台
- memo
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「100年前のクモの巣があったいか知れんで、きれいにしすぎんでよか―」。嘉例川駅の名誉駅長として知られ昨年亡くなった福本平さんは掃除の際などにそう場を和ませては、古いものを残す大切さを伝えていたという。改札口の木柵は、下部に渡した木が大きくすり減っている。子どもたちが、足を乗せて遊ぶ光景が目に浮かぶ。素朴な駅舎で、積み重なった時の流れに触れた。(里)