
指導するジュニアオーケストラのホームシアター「ティアラこうとう」での練習風景
いい音楽をつくり上げるために真摯に努力し続け、後進の活躍のためにも尽力。
◆ON “音楽と共に育ち、新たな夢も”
母が大学で音楽を教えていて生活の中に常に音楽があり、幼い頃からピアノ、バイオリン、クラリネットを学びましたが、中学・高校時代は音楽から離れて学業に専念。東大の法学部に進んで弁護士になろうと思っていました。
しかし、高校2年でいざ進路を決めようとした時、頭に浮かんだのは楽譜と向き合っている自分で「本当にやりたいのは音楽なんだ」と気付きました。そこから音楽も猛勉強して東京芸大の音楽学部楽理科に進学し、大学院修了後はハンガリーに留学して指揮を学びました。
留学中は小さな田舎町でも歌劇場があって毎日のように音楽や舞台が催され、住民が足しげく通うという芸術と生活が密着したヨーロッパの文化を目の当たりにしました。この経験が、日本にも同じような「私の街のオーケストラや歌劇場」を作りたいという今の夢につながっています。
指揮者とオーケストラが音楽を奏でる空間は一期一会で、タクトの振り方一つで同じメンバーから違う音が引き出せます。現在はプロとしてその空間をいかにしていいものにつくり上げるか、常に自問自答しています。
海老原 光(えびはら・ひかる)さん
- 指揮者
1974年生まれ、鹿児島市出身。鹿児島ラ・サール中・高校、東京芸術大学を経て同大学院修了後、ハンガリー国立歌劇場で研さんを積む。
2007年ロブロ・フォン・マタチッチ国際コンクール3位、09年ニコライ・マルコ国際コンクールで6位、10年アントニオ・ペドロッティ国際コンクールで審査員特別賞を受賞。
同年より東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団アソシエイト・コンダクターに就任。12年4月クロアチア放送交響楽団の定期演奏会でヨーロッパデビュー。
◇OFF “子供たちにも本気で向き合う”
2010年から東京都江東区のジュニアオーケストラの総監督として小学生から大学生まで約60人を指導しており、子供たちのために何ができるかが今の自分の一つのテーマになっています。
オーケストラのメンバーが子供であれプロであれ、いい音楽をつくり上げるために本気で向き合い、指揮者としてやることは全く同じ。子供たちは大人の本気度をよく見ているので、真剣に取り組んでいる姿を見せることが成長の原動力になればと思っています。
今後はこのジュニアオーケストラを都内だけでなく、全国、そして海外に向けて活動を発信できる団体に育て、活躍できる場を広げたいです。そうすれば、おのずと子供たちの意識も変わってきます。プロの指揮者として優れた音楽、環境をつくることが子供たちの未来にどうつながっていくのかを考えるとわくわくします。
10問10答
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Q大事にしているものは?
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A毎年誕生日に父から届く手紙
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Q愛読書は?
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A「こころ」(夏目漱石著)
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Q音楽以外の得意科目は?
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A物理
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Q日常生活で心掛けていることは?
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A腹八分目
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Qこれから挑戦したいことは?
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Aバレエ。指揮をする際のしなやかな動きを維持するため
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Qリフレッシュ方法は?
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A温泉
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Q座右の銘は?
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A敬天愛人
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Q仕事を続ける原動力は?
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A人との出会い
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Q尊敬する人は?
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A指揮者の飯守泰次郎さん
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Qクラシック初心者にお薦めの曲は?
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Aバッハの「マタイ受難曲」