
郷土の味で おもてなし
桜の満開時季を迎えた3月下旬、霧島市隼人にある「森の弁当やまだ屋」を訪ねた。小さな調理場は香ばしい匂いで満たされ、揚げ油のバチバチと跳ねる音が響く。「もっと大きなところで作っていると思われるんですけど、狭いでしょう」。そう言いながら名物の芋天・ガネを揚げていたのは、代表の山田まゆみさん。夫と長女と、注文が多いときは他にも手伝いをもらい、朝4時半からの作業にいそしむ。
嘉例川駅で販売を続ける「百年の旅物語かれい川」は、JR九州が主催する九州駅弁グランプリで3回連続1位を獲得する人気弁当だ。6年ぶりに開催された昨年度の同大会で、やまだ屋のもう一つの弁当「花の待つ駅かれい川」がグランプリに輝いた。

弁当作りの様子。作業は販売当日の早朝4時半から始める
「湿気を外に逃がしてくれる」という竹の皮の弁当箱には、霧島産をはじめ鹿児島県産・国産食材を使ったおかずがぎっしり。黒米とアワを炊き込んだご飯と甘辛いショウガのつくだ煮、有機栽培サツマ芋のガネ、甘めの卵焼き…。黄と紫が美しい2色のけせん団子は、新婚旅行で霧島を訪れたとされる坂本竜馬とおりょうをモチーフにした。「地元農家さんの応援になればいい」。着色料や保存料を使わないシンプルな味付けが、素材のおいしさを引き立てる。

「百年の旅物語かれい川」がずらり。「花の待つ駅かれい川」ともにガネが入る。価格はどちらも1個1500円
霧島市が打ち出す「ゲンセン霧島」の認定を受け、県外から買い求める客がいるなど、もはや特産品。「今年最初のお客さまは福岡から電車で来られた。頑張る力をいただいています」
森の弁当やまだ屋
- 霧島市隼人町小田1672-2MAP
- TEL:090(2085)0020

取材日は販売前から行列ができており、20分で完売。宮崎県小林市から来たという女性は「今日初めて買えた」と喜んでいた
よかもんのススメ…
嘉例川駅

思わずカメラを構えたくなるレトロな佇まい
鹿児島県内で最も古い木造駅舎として知られる、JR肥薩線の無人駅。登録有形文化財に登録されている。1903年の営業開始から、今年は120周年。列車がホームに入るのは多い時間帯でも1時間に1本で、のどかな空気が流れる。柱や梁(はり)の木材や壁のしっくいが味わい深く、壁掛け時計や駅名プレート、線路が続くホームからの眺めなど、思わず撮影したくなるものばかり。
土・日曜や祝日はかれい川弁当目当てに訪れ、購入した弁当を駅前の公園で食べる人も。外で食べる弁当の味は格別だ。
嘉例川駅
- 霧島市隼人町嘉例川2174[MAP]
- TEL:0995(45)5111 (霧島市観光PR課)
- 休/なし
- P/あり