
辻氏華織さん
(MinSkat/鹿児島市)
美容専門学校卒業後、福岡では美容師、帰郷した鹿児島ではブライダルサロンでメイクなどの支度担当として働いた。忙しい日々の中で膨らんだのは、かねてより描いていた「海外で仕事をする」という夢。30歳を過ぎ、「後悔したくない」とチャレンジを決めた。
夢をかなえ腕を磨く
最初の土地に選んだのはモルディブだった。インド洋に浮かぶ島々からなる熱帯の国で、リゾート地として人気が高い。日本人カップルの結婚式や海外セレブ客のディナータイムなどを、メイクやヘアセットで彩った。
3年半を経て、拠点をシンガポールに移した。世界中からビジネスパーソンが集まり、トレンドにも敏感な都会の美容室で、久しぶりに美容師として再出発。職場の理解に恵まれ、メイクの仕事にも取り組みながら、腕を磨いた。
はじめ、「聞き取れても返せない」程度だった英語は、日本人同士でも英語を使ったり、外国人の友人をつくったりして身に付けた。自分の考えをはっきりと伝えることが求められる海外で、「昔より小さいことを気にしなくなったかも」と振り返る。
逆境から始まった道
2019年にデンマーク人のパートナーとの間に長男をもうけた。日本で出産し、落ち着いたらシンガポールへ戻る予定が、コロナ禍で世界は一変。婚礼やメイクの仕事がなくなった。「対面しなくてもできる仕事を」と、美容商品の企画・販売を手掛ける「MinSkat」を起業。デンマーク語で「私の宝物」を意味するブランドの第一弾には、世界自然遺産・屋久島の間伐杉から抽出した精油を含ませた美容液シートマスクを製作した。
海外での信頼性の高さを実感してきたメイド・イン・ジャパンの技術と、故郷・鹿児島が育む豊かな資源との融合で、「心を潤わせ、きれいになってほしい」という思いを伝える。
現在、子育ての真っ最中。「今が一番頑張っているかも」と笑いつつ、口にするのは周りへの感謝の言葉だ。「屋久島へ泊まり込みで行けるのは、子どもを見てくれる実家の家族や在籍中の職場のおかげ」。海外にいるパートナーとは毎日オンラインでやりとりし、共に息子の成長を見守る。
肌の色や年齢、性別にかかわらず、「美しくありたい」と願う誰もが輝ける未来を―。歩みは続く。
辻氏華織(つじうじ・かおり)さん
プロフィール
鹿児島市生まれ。大村美容専門学校(福岡市)卒業後、国内外でウエディングや広告用撮影のヘアメイクを担当、美容師としてもキャリアを積む。帰国中の現在は、美容ブランド「MinSkat」代表、有名メイクアップアーティストのオンラインサポート講師、有名ブランド外部トレーナー、ブライダルサロン従業員として幅広く活動する。
MinSkat=kaori@minskat-boe.com
- 今これに夢中です
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「子育て」
3歳になる長男の子育て奮闘中です。一緒に過ごす時間を大切にしながら、余裕が出てきたら一人映画、温泉旅行、屋久島でトレッキングなど、いろいろ楽しみたいなあと想像しています。
資格について
美容師免許、英語検定準2級、裏千家茶道初級、自動車運転免許
今後の目標
「MinSkat」の商品販路を拡大させて、将来的には海外でも販売したいです。