
白薩摩のボタンには繊細な技と小宇宙が見える
小さなボタンに託す無限の世界…
直径わずか数cmの薩摩焼・白薩摩。ぷっくりと膨らんだ陶器生地に、色鮮やかな花や鳥が描かれる。
江戸時代末期、ジャポニズム文化がブームとなったヨーロッパで人気を博した薩摩ボタン。制作作業の繊細さゆえ一度は途絶えたものの、2005年に白薩摩の絵付け師だった室田志保さんが復活させた。現在は弟子とともに作業にいそしむ。
垂水市の山あいにあるアトリエで、草木や虫を眺めながらデザインの構想を練る。「何を描こうかと集中している時ほどぼーっとしていると思われる」と、笑いを誘う室田さん。
ボタンの中に描かれた生き物たちは明るく愛らしい雰囲気だ。「自然のものは造形がきれい。いつの時代の作家も追い求める美しさだと思う」
国内ではお祝いや贈り物にとアクセサリーなどへ加工を希望する注文が多い一方、海外で求める人の多くは“ボタンコレクター”なる70、80代の女性たちだ。1個何十万円もするボタンを絵画などと同じように芸術作品としてコレクションしたり、投資目的で集めたりするのだという。
2022年8月、コロナ禍を経て3年ぶりにアメリカでの展示会に、中学2年の長男・青杜(あおと)さんと共に参加した。渡航できなかった間に作品紹介文の翻訳に取り組み、英文を掲載したカードを持参したところ大変喜ばれた。
一つ一つのボタンに込められた物語に目を輝かす人々を前に、「伝統を受け継ぎ、求められるものへ進化させたい。楽しんでもらえるよう、楽しんで描きたいですね」。
絵付ヶ舎 薩摩志史(さつましし)
- 垂水市田神3718[MAP]
- TEL:0994-32-7209
- HP/薩摩志史
- /shiho_satsumabuttons_official
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よかもんのススメ…
磯工芸館
国の登録有形文化財に指定される洋館を利用した、島津薩摩切子の直営店。レトロな雰囲気で、仙巌園などに立ち寄った観光客も多く訪れる。赤や紫、黄色などきらきらと輝く薩摩切子にうっとり。冷酒グラスや花瓶、アクセサリーが人気だ。
店長の泊玲子さんは「薩摩ボタンは細やかな手描きの絵付けに感動して購入される。ネックレスにしたいという女性や、男性からカフスの問い合わせがあることも」と、話した。
ガラス、錫(すず)、屋久杉などの工芸品もそろう。鹿児島の伝統工芸の魅力に触れてみて。
磯工芸館
- 鹿児島市吉野町9688-24[MAP]
- TEL:099-247-8490
- 営/9:00~17:00
- 休/なし
- P/あり
- HP/島津薩摩切子ギャラリーショップ 磯工芸館
記載されている情報・金額などはすべて取材時のものです。
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