
左から時計周りに「しょうゆ」「きなこ黒糖」「みそ」
歴史と思い出が刻まれた味、両棒餅。
こはく色に輝くたれから漂う、しょうゆの香ばしい匂い。たれをこぼさないよう慎重に口に運べば、もっちりとした餅の食感と広がる甘さに、うっとりしてしまう。子どもの頃に家族で食べた記憶もよみがってくるようだ。
両棒餅が「ぢゃんぼもち」へと…
鹿児島県民にとっておなじみの郷土菓子・両棒(ぢゃんぼ)餅。名前の由来は、2本の竹串が刺さったその姿だ。
中国語読みで「りゃんぼう」と呼ばれていたものが少しずつなまり、「ぢゃんぼ」となったという。両棒餅の歴史を教えてくれた仙巌園の学芸員・岩川拓夫さんによると、
「当時の鹿児島の人は『らりるれろ』の発音がうまくなく、『だぢづでど』になってしまっていた」
のだそう。
鹿児島で愛される名物へ
もともと江戸時代に鹿児島市の慈眼寺地区で作られ始めた両棒餅。明治になり、島津家に仕えていた人が磯で店をはじめたことをきっかけに、磯の名物となった。
国道10号が開通し、姶良まで歩いていた人たちが休憩する際は、お茶菓子として人気を集めたそうだ。令和の現在でも磯海岸近くの道路沿いには両棒餅店が数店舗並び、鹿児島県民の思い出の味を守っている。
仙巌園内「両棒餅屋」では、両棒餅をより身近に感じてもらおうと2022年3月から両棒餅を焼く体験を始めた。
店員にアドバイスをもらいながら餅を焼き、体験のみの味付けといういそべ餅風でも食べることができる。友だち同士やカップルで、孫と一緒に、など楽しみながら作った両棒餅のおいしさは格別。鹿児島の歴史に触れる機会としてもうってつけだ。
両棒餅屋[仙巌園内]

よかもんのススメ…
仙巌園
歴史や文化を肌で感じられ、鹿児島の代表的な観光スポットである仙巌園。学芸員の岩川さんは「コロナ禍以降は、改めて地元を知りたいという県内からのお客さまが多くなった」と話す。ただ観光するだけではなく、思い出を作りたいという人におすすめなのが、伝統工芸品の制作などの文化体験だ。
薩摩切子のカット体験のほか、切子のかけらを使ったストラップ作りは、お土産にもなると好評。珍しいものでは、畳の上で正座し弓矢を射る「四半的(しはんまと)」の体験もある。戦国時代の武将の気分を味わってみよう。
仙巌園
- 鹿児島市吉野町9700-1[MAP]
- TEL:099-247-1551
- 営/9:00~17:00
- 入場料/大人・高校生以上=1,000円~、小中学生=500円~
- 休/なし
- HP/仙巌園
- /@SHIMADZUsenganen
- /@senganen
- /sengan_en
