
土壌を感じる優しい味わいは「和紅茶」ならでは…
ポットから注がれる鮮やかな琥珀(こはく)色の紅茶。華やかな香りが立ちのぼる。「和紅茶」「地紅茶」と呼ばれる国産紅茶は、宮城県を北限に沖縄県まで各地でつくられている。優しい香りと味わいが特徴。幅広い世代に親しまれている。
「土壌に根付いているのが和紅茶の魅力。産地で味も香りも異なる」と語るのは、薩摩川内市東郷の笹野製茶・取締役の笹野千津子さん。東郷地区は寒暖差と、川内川からの霧でうま味の濃い茶葉ができる。
10年ほど前からべにふうきの若芽を摘んだ「ファーストフラッシュ」と、夏摘みの「セカンドフラッシュ」の2種類の紅茶を生産。より良い紅茶を求め、商品化まで3年を費やした。
和紅茶づくりはとにかく手間がかかる。摘み取りは葉が乾燥した状態を選ばなくてはならない。摘み取った茶葉は、萎(しお)れさせ、香りを引き出す工程・萎凋(いちょう)に一晩。その後、圧力をかけて、もみつぶす。
もんだ茶葉は1時間ほどスチームを送りながら発酵させる。発酵を終えると、乾燥機に入れる。乾燥後は3カ月ほど寝かせる。今年のファーストフラッシュは秋ごろ出荷する。「人の目が欠かせない。ほとんど手作業」と手塩にかけた至高の一杯だ。
茶葉で水色(すいしょく)、味、香りが異なる(上の写真の左からセカンドフラッシュ、ファーストフラッシュ、ファーストフラッシュプレミアム)。ファーストフラッシュはストレート向きなのに対し、セカンドフラッシュは茶葉がしっかりしているため、ミルクティーでも楽しめるとのこと。
「旅に出かけられない今だからこそ、その土地特有の香りや味を楽しんで」と笹野さん。11月13、14日には南九州市知覧で「全国地紅茶サミット」が開催予定(2022年に延期)。各地の土壌が培った、優しい味わいを堪能したい。
笹野製茶
- 薩摩川内市東郷町南瀬606
- HP/SASANO TEA FARMERS
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よかもんのススメ…
茶寮ささの
笹野製茶が2019年、お茶の楽しみ方を伝えようと製茶工場横にオープンした。笹野さんは「自分のためにお茶を入れて、一息つく時間を」と笑みを浮かべる。
店舗は、鹿児島市出身のデザイナー・砂田光紀氏が手がけたモダンな雰囲気。梅雨まっただ中の5月下旬に訪ねたが、雨音すら癒やしのBGMに感じる。
紅茶のほか、緑茶や桑茶も味わえる。「お茶に合うものを」と考え抜かれた自家製の「お茶箱」(煎茶の場合1,100円)には、緑茶を使ったティラミスと、もなか、地元産のブドウを使った干しぶどうが詰められている。
おいしく入れるためのアドバイスを、お茶を知り尽くしたプロから教えてもらえるのもだいご味だ。
茶寮ささの
- 薩摩川内市東郷町南瀬606 笹野製茶工場横[MAP]
- TEL:0996-42-4950
- 営/10:00~17:00
- 休/木・日曜、祝日
- P/あり
- HP/茶寮ささの
- /sasano_tea
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