
互いに本気で向き合おう。妊娠と不妊症のはなし…
恥ずかしがらずに、老若男女問わず知ってほしい、妊娠や不妊のはなし。あなたの踏み出す一歩が、未来の新しい命につながるかもしれません。
不妊症の基礎知識や原因について徳永産婦人科・徳永誠院長に、最新の不妊治療についてあかつきARTクリニック・桑波田暁子院長に話を聞いてきました。
不妊症について聞いてきました

教えてくれた先生
徳永産婦人科
院長:徳永誠先生
不妊症とは
1年間避妊せずに、夫婦(結婚前を含む)が性生活を送っているにもかかわらず、妊娠がない状態のこと。その割合は6組に1組といわれており、年々増加しています。
世界保健機関(WHO)の調査では、不妊症カップルの11%が原因不明です。女性に原因が多いと思われがちですが、不妊症カップルの約半数は男性にも原因が見つかっています。

自分の体と向き合うプレコンセプションケアを
将来の妊娠を考えながら、妊娠可能年齢の女性やカップルが自分たちの生活や健康と向き合うプレコンセプションケア。
たばこはもちろん、ストレスは体にとって大敵。負担になるのであれば、妊活中の基礎体温計測も無理しなくて良いと私は思います。
バランスの良い食事は大切。私は葉酸(サプリメントでOK)の摂取を勧めています。子宮頸がん、乳がん健診も定期的に受けましょう。

プレコンセプションケアを忘れずに
不妊症って主にどんな原因があるの?
芸能人の高齢出産をテレビなどでよく見ますが、今も昔も加齢は大きな不妊原因の一つです。情報に惑わされずに、自分の体の状態を知ることが大事。
一方で若いから大丈夫ということもありません。原因は多種多様です。
さまざまな障害

- 卵子の成長・排卵・卵管・受精の障害や子宮頸管の精子通過障害、子宮着床障害など

- 造精機能障害(乏精子症、無精子症、精子無力症)など
婦人科疾患

- 子宮内膜症、子宮筋腫など
罹患率が増加しているので、若いうちから定期的に検査を。
加齢

- 卵子の減少・質の低下
女性の一生において、原始卵胞は減るのみ。

- 精子を作る機能・男性ホルモンの低下
恥ずかしがらずに検査に行ってみよう

基本的な検査
超音波(エコー)検査
子宮や卵巣の内部を検査。卵巣の腫れや子宮筋腫の有無など調べる。
子宮卵管造影検査
造影剤を注入し、エックス線を当て、卵管の通過性や子宮の形態、癒着などを評価。
ホルモン検査
採血によって、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値を調べ、卵巣内の残存卵胞数を反映する。
精液検査
精液を採取し、3時間以内に検査。精子の数や運動率などを調べる。
取材協力
徳永産婦人科

待合室はホテルのようなラグジュアリー空間
2019年に開院。産婦人科と生殖医療・不妊治療分野で受付や待合室を分け、通院しやすい環境を整えています。最先端の医療体制で、不妊の悩みから妊娠・出産までトータルにサポートします。
- 鹿児島市田上2-27-17[MAP]
- TEL:099-202-0007
- 診察時間/午前=9:00~13:00。午後=15:00~18:00(火・木曜は~19:00)
- 休/水・土曜の午後、日曜、祝日
- HP/徳永産婦人科

院長:徳永誠先生
自分の体のこと、気軽に専門医に相談を♪
男女や夫婦のことは、家族や友人にはなかなか相談できないですよね。恥ずかしがらずに話せる場所が婦人科・産婦人科です。当院では問診を重視しています。2人目不妊や性の悩みなど、専門医のアドバイスや簡単な治療で改善することだってありますよ。

漢方で妊活!バランス整え授かりやすい体に
いま、体のバランスを整えることで子どもが授かりやすい体質をつくる、漢方による妊活が注目を集めています。
そこで、さつま薬局鹿児島店の薬剤師、田之上顕子さんに漢方による妊活について聞きました。

「漢方という選択肢を知って」と呼びかける田之上顕子さん(右)、晃さん夫妻
漢方の妊活とは?
「漢方では体の機能低下が不妊の原因と考えます。そこで相談者に合わせた漢方薬を処方することで、体質や体調を改善し『妊娠しやすい体』を目指します」
どんな方が利用していますか?
「相談者の9割は、既に病院で不妊治療を続けているのに、なかなか子宝に恵まれない方々です。来局後は漢方だけに切り替える方と、通院と漢方を併用する方がいます。
年代は30代後半から40代にかけての方が多く、20代も1割程度います。近年は不妊治療の技術が進み、40代が増えています。2020年に当局の妊活相談を受けて妊娠した方の約2割は40代でした」
読者にひとこと
「妊活のゴールは妊娠ではなく、楽しく子育てする時間を持つこと。妊娠・出産から子育てまで、漢方は全てのステージで関わることができます。お母さんが元気に子育てを楽しむために、漢方という選択肢があることを知ってほしい」
さつま薬局鹿児島店

知っておきたい不妊治療のこと
不妊治療について、「治療費が高そう」「怖そう」といった疑問を抱えていませんか?
治療の流れや、パートナーとの協力などについて、不妊治療を専門とする、あかつきARTクリニック・桑波田暁子院長に答えてもらいました。

教えてくれた先生
あかつきARTクリニック
院長:桑波田暁子先生
治療の流れを教えてください
まず、性交後に女性の子宮頸管粘液を採取し、どれくらい精子が動いているか検査する「フーナーテスト」を実施します。テストが良好だった場合は、排卵日に合わせて性交するよう、タイミングを指導します。
最近ではアプリなどで排卵日予測ができますが、実際に超音波や採血で排卵日を調べると、予測とずれていることが多いです。半年~1年、タイミングを図っても妊娠しなかった場合、子宮内に精子を注入し、卵子に近づける人工授精をします。
さらにステップアップした体外受精は、体内から取り出した卵子に、体外で精子と授精させ、受精卵を子宮内に胚移植するまでが一連の流れです。うまく着床できるかが一番の問題です。
治療が長期化することもあります。どのようにモチベーションを保てばよいでしょう?
当院では、課題も伝えますが、クリアできたことも知らせて、自信を持ってもらえるように背中を押します。
家族の支えも大事。40代でも治療を頑張っている患者さんはいますし、若くても卵子の在庫数を推測するAMH検査で値が低く、治療を始めている人もいます。プレッシャーをかけないようにしてほしいです。
「そのうち授かる」ではなく、気軽に産婦人科を受診したいですね!
若い人ほど質のいい卵を持っています。20代はタイミング法をゆっくり進めることができますが、40歳以降はタイミング法に時間を費やすよりも、体外受精などステップアップした治療で妊娠を目指した方が良いこともあります。生殖年齢は限られます。子どもがいる幸せをぜひ体感してほしいです。
治療はパートナーの協力が欠かせません。男性に協力を得るには?
協力的な人もいれば「自分の仕事ではない」という人もいます。「妊活のために」いうのは逆効果。追い詰めると引いてしまう男性が多いです。前向きに理想を語って、優しく促すようにしましょう。
治療に痛みがあるのではと、不安に感じている人も多そうですが…
当院はタイミング法を中心に、自然周期での妊娠を目指します。不必要な投薬や注射をしないようにしています。治療に抵抗のある人も少なくないでしょう。「治療で足りないものを補う」と理解してもらえるように努めています。
採卵に使うのも、採血に使うような細い針。想像されるような痛みはありません。「子どもがほしい」という思いから、治療へ踏み出す、その一歩が非常に重要です。
経済的な負担はいかがでしょう?
タイミング法は保険診療の対象となります。人工授精は1回15,000円~数万円、体外受精の場合は数十万円かかります。体外受精は高額なイメージがあると思いますが、最近は助成が充実しています。来年度には公的保険適用の拡大も予定されています。
2021年度 鹿児島県 不妊治療費助成制度とは?
鹿児島県は体外受精や顕微授精といった「特定不妊治療」を受ける夫婦に治療費の助成をしています。
対象者
特定不妊治療以外での妊娠を見込めない、または極めて少ないと医師に診断された夫婦で次の全ての要件に該当する人。
- 治療開始日から法律婚および事実婚であること
- 夫もしくは妻のどちらかまたは両方が、鹿児島市を除く県内に居住(鹿児島市の居住者は、市に申請を)
- 治療開始日の妻の年齢が42歳以下
対象となる治療
指定医療機関での次の治療。
- 医療保険が適用されない特定不妊治療(体外受精および顕微授精)
- 特定不妊治療の一環で、精子を精巣または精巣上体から採取するための手術(男性不妊治療)
助成額と助成回数
それぞれ1回の治療につき、申請内容で助成上限額が異なる。2回目以降の申請は、前回申請の治療開始日より後の治療が対象となる。
特定不妊治療
- 治療1回の申請助成上限=30万円
- 採卵を伴わない凍結胚移植や、採卵したが卵が得られなかったなどの理由で中止した治療1回の申請助成上限=10万円
男性不妊治療
- 治療1回の申請助成上限=30万円(特定不妊治療の助成額に加算)
助成回数
初回申請における治療開始日の妻の年齢
- 40歳未満43歳になるまでに1子あたり上限6回
- 40~42歳43歳になるまでに1子あたり上限3回
取材協力
あかつきARTクリニック

JR鹿児島中央駅からのアクセスもよく、子どもを望む夫婦が県内各地からやってくる
2018年2月に開院。排卵周期に合わせたタイミング法を中心とした不妊治療にあたっています。不必要な投薬を避け、体に負担のかからない治療で妊娠を目指します。
- 鹿児島市中央町11 鹿児島中央ターミナルビル2F[MAP]
- TEL:099-296-8177
- 診察時間/午前=9:00~12:30。午後=15:00~18:00
- 休/水・金曜の午後、日曜
- HP/あかつきARTクリニック

院長:桑波田暁子先生
もっと気軽に産婦人科へ!
「若いから大丈夫」とは限りません。自分の体のことを知るためにも、もっと気軽に産婦人科へ足を運んでみてほしいです。