
ハチミツの甘さの陰には、人が大自然と闘う物語がある
豊かな自然映す、黄金の蜜…
児童小説「クマのプーさん」の主人公・プーは、蜂蜜が大好物。手にべっとりと付いた蜂蜜をなめ回す。しかし、本当の“ハニーハント”は自然との闘いだ。
4月中旬、レンゲ蜜の採集が始まったばかりの曽於市末吉に向かった。
地元の新屋養蜂場代表新屋成登さんは、従業員とともにそっと巣箱を開ける。蜂をおとなしくさせるために、燻煙をまく。
巣箱1箱に2~3万匹の蜂がいて、働き蜂は全てメス。女王蜂の寿命は1、2年ほどだという。巣枠には蜂たちが集めた蜜が輝いていた。
レンゲ蜜は、甘い花の香りと濃厚な味わいが特徴。花の蜜の種類によって、色・味・香りは異なる。
西洋ミツバチの行動範囲は4km。春はレンゲの他、山桜などの蜜を集める。近年は気候変動の影響を大きく受ける。新屋さんは「いい蜜を取るには人が手をかけるしかない」。
近年は、各地の養蜂家と農家が協力し、稲刈り後の水田にレンゲの種をまいている。良質なレンゲ蜜づくりにつながるとともに、薄紫色のじゅうたんは農村振興にも一役買う。
新屋養蜂場は、蜂とともに移動する転飼養蜂。5月中旬は新潟、6月中旬は北海道でアカシア蜜を集める。ミツバチは熱に弱く、生かしたまま運ぶのは至難の業。巣箱に風を送り込むため、できるだけ走り続ける。巣箱を氷で冷やすことも。
新屋さんは5カ月もの間、単身で旅に出る。養蜂場役員で妻の明美さんは「幼い頃、子どもたちはいつも泣きながら見送っていた」と懐かしむ。蜂蜜の甘さは、大切な人を思う愛情が隠し味なのかもしれない。
新屋養蜂場
- 曽於市末吉町深川10714-2[MAP]
- TEL:0986-28-0220
- HP/国産純粋はちみつ 新屋養蜂場
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よかもんのススメ…
新屋養蜂直売所
道の駅すえよしにある直売所には、新屋養蜂場が採集したものや、全国から取り寄せた蜂蜜15種類が並ぶ。明美さんは「特徴を知って、お気に入りを見つけて」と話す。
名物は、ゆずはちみつソースをかけたソフトクリーム(360円)。ソースのレシピは、養蜂歴66年になる、新屋さんの父で、初代代表の繁興さんしか知らない。蜂蜜を知り尽くしているからこそ編み出せた、おいしさの秘密が隠されているのかも。
新屋養蜂直売所(道の駅すえよし内)
- 曽於市末吉町深川11051-1[MAP]
- TEL:0986-79-1110
- 営/9:00~18:00
- 休/道の駅に準じる
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