
桜島に夕日が沈む…錦江湾に浮かぶ新島からの眺望
鹿児島市街地から約1時間で行ける離島…
新島(しんじま)。周囲2.3km、面積0.13km2のこの島は、桜島の安永噴火(1779~82年)で海底が隆起してできた。このとき真っ赤なマグマが燃えるように島を囲んでいたことから地元の人たちからは「燃島(もえじま)」とも呼ばれる。
記録によると、1951年は約250人が暮らしていた。80年に海底ケーブルがつながれ、電気、電話が開通。83年に水道も使えるように。
2013年に無人島となったが、19年9月、島出身の佐々木和子さんが夫の直行さんとともに北九州市から移住した。

「すぐそこにある、島時間」
桜島・浦之前港から行政連絡船(詳細はコチラ)に乗って約10分。新島が近づくと待ち合わせていた佐々木直行さん・和子さん夫妻の姿が見えた。
夫妻が北九州市から移住して1年が経つ。移住のきっかけは、小学校卒業まで島で暮らした和子さんの姉、東ひろ子さんが「新島が無人になった」という話を耳にしたこと。
2013年、休日のたびに北九州市から新島を訪れ、荒れ果てた五社神社の再建に着手した。
「ここに住んで島を守ることが使命と思うようになった」

直行さんの案内で島内を歩く。
道路脇にはアコウの木、ダンチク、クズがうっそうと茂る。
「来たばかりの頃は、火山灰や投棄されたごみ、雑木で道路が埋まっていた」。
やぶを払い、ようやく島内一周ができるようになった(大雨による土砂崩れで、2020年11月現在では一周できない)。
現在も、ご夫婦で島内の道を安全に保全するため、整備に努めている。
島内にはかつての面影があちこちに遺る。
発電所跡の周りはアコウの木に囲まれ、深い緑が神々しい。5,000~6,000年前の貝殻を残す地層は世界の地質学者が注目する貴重な資料なのだとか。
他にも1983年頃まで島民が生活用水に使っていた井戸も。塩分が含まれることもあり「しょっぱいときは砂糖を入れて飲んでいた」との話も。

島の暮らしは「サバイバルのよう」と笑う。北九州では自宅近くに何でもそろっていたが、ここではちょっとした買い物にも船がいる。
「何かに使えるから物が大切。生活だけで毎日2万歩ほど歩く」という日々だ。
一方で、波音しか聞こえない静かな時間が流れ、夜は美しい星空が広がる。
「こんな素晴らしい場所があることを、多くの人に知ってほしい」。
4月に民泊を始め、カフェも構想中という。
約5時間の滞在だったが、帰りの船に乗ると島との別れに寂しさがこみ上げた。
近いけれどちょっと遠い鹿児島市の離島。心を満たす時間がここにある。

新島情報
民泊
- 素泊まり
■大人:5,000円~
■小学生以下:2,500円~
浦之前港の片道送迎込み、食事は要相談
海上タクシー
- 新島港~浦之前港:1,000円、
- 新島港~隼人港:2,500円 など
以上の予約は佐々木さん携帯へ
TEL:090-3607-0120
電話番号のかけ間違いにご注意ください。
2019.05.05ドローン空撮動画
行政連絡船
桜島(浦之前港[MAP])と新島(新島港)をつなぐ行政連絡船が運航している。
運航スケジュール
日・水・金曜のみ/取材日現在のスケジュール
- 浦之前港発=10:05/11:35/15:05
- 新島港発=10:20/11:50/15:20
所要時間
- 約10分
運賃
- 大人:100円、小学生:50円、70歳以上:30円、未就学児は無料
取材協力/鹿児島市桜島支所
TEL︎:099-293-2346

もっと「錦江湾」を知りたいっ…と思ったアナタは
フェリアの錦江湾探検シリーズVol.1知っとこ!錦江湾。東川隆太郎さんと『よりみちクルーズ』乗ってみた
フェリアの錦江湾探検シリーズVol.2早朝の鹿児島市魚類市場を探検してみた。お魚いっぱい、グルメも発見