
大和桜酒造を招いてのディナー会。客と一緒に楽しめる空間を取り戻すのが、今の目標だ
店名は「グリルダイナー」。「食堂」を意味する。楽しく、気取らず、美味しいものを食べられる洋食屋に…。久しぶりのダイナー式ハンバーグランチをいただいた。

トマトのファルシーサラダ

ダイナー自慢のハンバーグ

食後の烏龍茶
その大事にしてきた空間を、コロナ禍が分断した。「お客さんも、うちのスタッフも、守らなきゃいけない」。4月25日~5月10日、店舗営業を休み、テイクアウトに集中した。売り上げは4月が3割減、5月は「おそらく5~6割減」だという。

グリルダイナーのテイクアウト用メニュー
「鹿児島の食材、焼酎にこだわりたい」
オーナーの清國崇さん(45歳)は「鹿児島には美味しい食材がたくさんある。魚、肉、野菜…。自分で確かめたものしか使わない」と言う。添加物も、うまみ調味料も使わない。妥協を許さないシェフが、さらにこだわるのが、鹿児島焼酎だ。「洋食屋で焼酎って意外と思われるかもですが、相性はいいんですよ」

店内に貼られたグリルダイナーが掲げるポリシー
実は、清國さん。これまでに、中村酒造場(霧島市)や大和桜酒造(いちき串木野市)の杜氏を招いて、フルコースディナーを楽しむ会を開いた。蔵元は自らの蔵の銘柄を持ち込み、前菜からデザートまで、一品ずつに最も相性のいい銘柄、飲み方を提示する。ソーダ割り、ロック、お湯割り…。焼酎蔵と洋食屋の「真剣勝負」がそこにあった。本気の焼酎と、本気の料理が融合する。お客のほころんでいく顔が本当に嬉しかった。

中村酒造場の中村慎弥さん(左)を招いてのディナー会=2017年3月

大和桜酒造の若松徹幹さん(左)を招いてのディナー会=2018年3月


「常連さんと早く乾杯したい」
コロナ禍で店舗への客が減っていく中、一筋の光明になったのが、、数年前から取り組んできた弁当やオードブルのテイクアウトだった。「正直、手間もかかるし、やめようと思った時もあった。でも、今回は本当にテイクアウトに助けられた」と振り返る。そして、助けてくれたのは、やはり、常連さんだった。
「ギブ&テイクと言いますが、本当にたくさんのテイクアウト注文をいただいた。今度は、自分が恩返しをしていく番です」。まだ、夜の営業は自粛している。いま、頭に浮かぶのは、蔵元やお客さんと過ごした、あの楽しかった空間だ。
「なんとしてでも生き残る。そして、店を支えてくださったお客さんと盛大に乾杯したい」
店舗営業を再開した初日。1番目の客は同級生だった。食後、同級生が帰ったテーブルを片付けたら、ランチョンマットの下に一枚のお札がしのばせてあったという。