
2020年初出荷を待つマルス津貫蒸溜所のマルスウイスキー
受け継ぐ技。原点で熟す…
山々に囲まれた津貫は本坊酒造発祥の地。良質な蔵多山の湧水は酒造りと相性が良い。
長野に続き、この地にウイスキー蒸溜所を新設したのは3年前。「この地から蒸留酒とともに歩み発展してきた」と案内の田中教文さんは語る。
1945年、国産ウイスキーの創世に携わった岩井喜一郎氏が顧問に加わり、蒸留工場設計と製造を指導。60年に山梨で本格的な製造を開始し、本物のウイスキー造りに情熱を注ぐ。
その後、一時は蒸留を休止したこともあったが、訪れたウイスキーブームにより2011年に長野で蒸留を再開した。
原料である麦芽は、糖化(仕込み)、発酵を経て蒸留される。糖化された甘い麦汁は、職人の感覚で細かく管理されながら4日ほどかけて発酵していく。「あえて対流を抑えることで、複雑で重厚な味が表現できる」と、蒸溜釜はオニオン型のオリジナルを使い、津貫らしい味わいを目指す。
13年、「マルスモルテージ3プラス25 28年」が「ワールド・ウイスキー・アワード2013」で世界最高賞を受賞した。鹿児島と山梨で生まれた3年熟成のモルト原酒を、長野で再び25年間たる熟成したものだ。
マルス津貫蒸溜所のウイスキーもいよいよ初出荷を来年に控える。「一つ一つのたるは生き物。呼吸して外気を出し入れする」。職人の手を離れた原酒は、たるの中で香りや色、味を複雑に変えながら、熟成の時を待つ。
本坊酒造 マルス津貫蒸溜所
- 熟成中の変化
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たるの中で少しずつ色や香りが変わり、角の取れた味へと変化する。
たるに入る前の原酒
熟成して408日目
熟成して664日目
よかもんのススメ…
本坊家旧邸「寶常」
ほうじょう
趣のある日本家屋に、モダンな欄間や洋家具が調和する、蒸溜所に隣接する本坊家旧邸「寶常」。
キラキラとボトルが輝くバーカウンターでは、マルスウイスキーの試飲(200円~)を楽しむことができ、初心者から上級者向けまで、詳しいスタッフがお勧めをアドバイスしてくれる。
応接間でいただく特製重箱を使ったランチ(2,800円~)は、3日前までの要予約。地元食材を使う料理は、地域の料理店が作る優しい味付け。庭園の草花を愛でながら、ぜいたくな時間を過ごしたい。
本坊家旧邸「寶常」
- 南さつま市加世田津貫6594[MAP]
- TEL:0993-55-2121