
復元され職人の技で磨かれ輝き続ける薩摩切子
美しさの裏には職人のたゆまぬ努力が…
幕末から明治の初め、淡い紅、藍、紫、緑色に染まったガラスは薩摩ビードロとして称賛されていた。薩摩切子として復元されてから32年。
「薩摩びーどろ工芸」では、魅せられた若手らがひたむきに技術を磨いていた。一人前の職人になるには、早くても吹き師は10年、切り師で5年かかるという。
小さな杯だと1日に80個以上形成できるが、不純物が入るため、作品になるのはその中の6割ほどである。
カット作業で仕上げられるのは1日に約3個。目安の線を光で透かし見ながら、ホイールの上で緻密に動かす。中でも黒色は光を通さないので難易度が上がる。切り師の腕の見せ所だ。
「県内外から表札や照明などの依頼が増えている。暮らしの中に溶け込むような作品にも挑戦したい」と意気込む野村さん。
館内では桜島をモチーフにした香炉や、「薩摩ブラウン」と名付けた器など、年齢や役割を問わず、絞り出したアイデアと技を結集させた目新しい作品も販売する。
年ごとに限定作品を作っており、写真は2019年度作品の杯「朔(さく)」。繊細な線を際立たせる漆黒が美しい「薩摩黒切子」だ。
どこに飾ろうか、何を盛り付けようかと、想像するだけで心ときめく。伝統に新たな魅力を加え、再び薩摩切子の名を全国に轟(とどろ)かす。
薩摩びーどろ工芸
- 薩摩切子の制作工程
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工程は全部で20。完成までの工程の一部。
一部工程の目安線を入れる割り付け
ダイヤモンドホイールによる荒彫り
研石による細かいカット
磨き
検査をクリアした完成品
よかもんのススメ…
NexTram KIRIKO
ネクストトラム キリコ
薩摩切子をモチーフにしたエンブレムやロールブラインドをあしらう電車。さっそうと町の中を走れば、藍と金色の凜とした佇まいで通行人の目を引く。
「運転士も誇らしい」と話すのは、企画から完成まで携わった電車事業課の相良長浩さん。「乗れた人はラッキーと喜んでくれる。日常の中にちょっとした幸せを感じてもらえたら」。
鹿児島市交通局