
全国鰹節類品評会で農林水産大臣賞を受賞したかつお節
伝統の技に工夫をプラス…
枕崎市のかつお節は生産量日本一を誇る。
7月下旬、伝統製法を続ける金七商店の作業場を訪ねると、カツオをさばく7人の大人に交じって、瀨﨑稜空君の姿があった。金七商店の5代目。細長い包丁を使ってカツオの背皮を懸命に切り離す。2時間ほどの作業を終えると「腕がパンパン」。
工程には、カツオをさばき、煮て骨を抜き、いぶし、カビを付け、天日干しを繰り返すなど多いが「中でも体力を使うのが身さばき」と父の祐介さん。見事なチームワークで、カツオが四つに切り分けられた。
4歳から家業を手伝う稜空君が憧れるのが、祖父・秀信さんと祐介さんだけが持つ包丁さばき。かつお節の品質を決める重要な技だという。
最高級と呼ばれる本枯れ節は、贈答用やプロの料理人に使われる。美しいカーブを描く形が好まれ、さばき方はもちろん、カツオが曲がらないよう鮮度によってゆでる温度を調整したり、取り除いた骨の跡にすり身をつけたりして形を整える。
背側の身はふくよかな形をした「雄節」、腹側の身はやや小ぶりで脂が多い「雌節」と呼び、二つ並べると寄り添うような理想的な形が出来上がる。2016年、4年に一度開かれる全国鰹節類品評会で最高賞の農林水産大臣賞に選ばれた。
本枯れ節「クラシック節」の名は、カビ付けの工程で流す音楽が由来だが「伝統の意味も込め伝えていきたい」。技を担う父の背中を、頼もしい5代目が追う。
金七商店
よかもんのススメ…
枕崎市文化資料センター 南溟館
漁業の町として知られる枕崎市には、“芸術の町”の一面も。「アートストリート」と呼ばれる中心地の歩道などで立体作品を目にすることができる。
南溟館は、小高い丘に建つ木造の美術館。独特のデザインは、船のいかりがモチーフだ。
館長の中嶋章浩さんに「ここからの景色が最高」と推されて館外に出ると、市街地が一望でき、かつお節工場から白煙が立ち上っていた。東シナ海に突き出る立神岩も見渡せ、市の見どころをまとめて楽しめるスポットだ。
枕崎市文化資料センター 南溟館
なんめいかん
- 枕崎市山手町175[MAP]
- TEL:0993-72-9998
- 営/9:00~17:00
- 休/月曜 ※「枕崎国際芸術賞展」の開催期間中(7/21~9/16)は無休
- 入場料/無料 ※特別企画展は有料の場合あり