
知覧茶畑の新緑が眩しい…武家屋敷群だけじゃない初夏の知覧
初夏を知らせる一番茶!
手蓑(てみの)峠を登った標高300mほどの山あい、後岳地区は知覧茶発祥の地と言われている。
後岳茶碑は茶畑が美しい山の頂上付近にあり、碑の背景から鹿児島市街地が見わたせる[MAP]。
寒暖差があり、霧深い環境が甘く芳醇(ほうじゅん)な茶に仕上げるそう。整列した茶の木は勢いよく新芽を伸ばし、若緑色に山並みを染めていた。
茶畑の中、店を構えるのは農林水産大臣賞受賞歴のある宮原光製茶。昔から変わらない「茶いっぺ(一杯)」のおもてなしで心をときほぐす。
3代目社長の宮原耕一さんは、鍛えた味覚、嗅覚、視覚で常連客の厳しい声に応える。「品種をブレンドし、毎年同じような味に調整する作業は難しい」。バランスが良い「やぶきた」を基本に、「ゆたかみどり」「あさつゆ」などを加え香りや色を整える。
4月下旬、南九州市内では遅めという一番茶(新茶)の摘採時期がやってきた。家族に親戚、アルバイトを加え、加工まで作業を進める。10時と15時がお茶休憩。にじんだ汗を落ち着かせ、緑茶に合う甘い菓子に笑みがこぼれる。
長男、健(たけし)さんの妻である沙代子さんは、四六時中、親戚と一緒にいる環境に嫁いできた当初は驚いたそう。今ではすっかりなじんだ様子で、「夫はうちのお茶がないとだめで旅行にも持って行くんですよ」とにっこり。
知覧・頴娃・川辺の南九州市で、栽培面積、荒茶生産量とも日本一となった知覧茶だが、「お茶の産地だと知らない人もいます」と耕一さん。茶摘みの光景に初夏を感じる山の中。受け継がれる、こだわりの一杯に会いにきて。
宮原光製茶
- お茶の入れ方(1杯)
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湯は半分ずつ2回に分けて入れるのが水色(すいしょく)をきれいに出すコツ
よかもんのススメ…
髙城庵
たきあん
築90年ほど、風情のある日本家屋に重厚な和家具、窓に映る季節の草花を愛でる日本庭園。畳に腰を下ろし、温かい茶でひと息つけば、和の心地よさに包まれる。
提供するのは膳に並べられた懐石風料理。「地域の人たちやパートさん方とメニューを考えている」と経営する髙城悟志さん。
2年前から始めた知覧茶うどん(660円)も自治体から声をかけられたのがきっかけだ。「小麦はお茶の風味を邪魔しないので相性が良い」。
食後はようかん付きの知覧茶抹茶(540円)で最後まで非日常を堪能したい。