
露天風呂からは加久藤盆地が眼下に広がる
癒やしを与えたこの地は、激戦の舞台へと…
西郷隆盛はえびの市の吉田温泉と白鳥温泉に湯治に訪れている。吉田温泉の鹿の湯は万病に効くと伝えられ、かつてこの地を治めた島津義弘も愛用した[MAP]。
西郷が訪れたのは戊辰戦争の状況を函館まで確認して帰った直後の1869(明治2)年6月。湯あたりして発熱や下痢に悩まされ、「大変な思いをしたが、悪いものが全部体内から放出されたようで心地よい」と盟友・桂久武への手紙に書いた。
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西郷隆盛が「霊境の温泉は世縁を洗う」と漢詩に詠んだ白鳥温泉。
白鳥山の中腹に上湯と下湯があり、1874(明治7)年7月から3カ月もの間、上湯に滞在した。
巨大噴火で生まれたえびの盆地を一望できる露天風呂(=トップ写真)に「これほど見晴らしのいい湯は他に知らない」と常連客ら。
西郷も絶景の湯で心を空っぽにし、再び国の未来を思索する原動力に変えたのか。滞在中も西郷を慕い訪れた若者に指導する姿があったという。
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山道を少し下ると959(天徳3)年創建の白鳥神社[MAP]がある。鳥居前に立つ阿吽(あうん)の仁王像は、体の悪い部分に触れると癒えると伝えられる。
西郷に癒やしを与えたこの地は、西南戦争の激戦の舞台となり、遂には敗走路へと姿を変えた。
1877(明治10)年6~7月、長江川と川内川を挟み薩軍と官軍が交戦。多くの人家や学校、文化財が焼失した。
今は平和そのものの盆地に、薩軍が弾薬を製造したとされる硝石場(しょせっば)跡や官軍墓地がひっそりと戦禍を伝える。
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今回のbreakスポットは…
古民家カフェ田の神さぁ
南九州特有の古墳時代の墓が点在する島内古墳(島内地下式横穴墓群)。
横穴式石室系板石積石棺墓は、建物の中に実物が展示されている[MAP]。
そんな島内古墳のほど近く、5年前に名古屋から移住した各務(かがみ)元春さん、順子さん夫婦が営む「古民家カフェ田の神さぁ」がある。
2人の趣味の骨董(こっとう)に囲まれたテーブル席で、特製ランチや名古屋名物みそカツ定食など心尽くしの料理が食べられる。
広い敷地には元競走馬のサラブレッドやシカ、トカラヤギなどがのんびり暮らす。
ここは順子さんの故郷。移住3年目で「回り田の神」の当番に指名された。元春さんは「最高の仲間に出会えた」と、気持ちよく受け入れてくれた地域に感謝する。
古民家カフェ田の神さぁ
- 宮崎県えびの市島内1462[MAP]
- TEL:090-3383-3751
- 営/11:00~15:00
- 休/月・金曜
- HP/古民家喫茶 田の神さぁ
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