
栗野岳温泉 南洲館
西南の役の前年、秘湯で過ごしたひと時…
霧島連山の最も西に位置する栗野岳は標高1,102mの緩やかな山。山々の恩恵、湧水町の各所ではミネラル豊富な水が湧き出し、広がる田畑を潤す。
栗野岳の中腹には、枕木7,000本を使用した「日本一の枕木階段」なるスポットも存在する。
栗野岳周遊ルートについては、こちらの記事から。
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1873(明治6)年、職を辞して鹿児島に戻った西郷隆盛は、鹿児島市に吉野開墾社や私学校を設立した後、湧水町の栗野岳を訪れている。知人に宛てた手紙の中で「仙人が住むようなところ」と感想をつづり、1カ月ほど過ごしたという。
JR肥薩線栗野駅から美しい杉並木を車でぐんぐん登ると、次第に山の冷たさが体の芯まで染みてくる。くねくねと曲がった道の先、開けた場所に「栗野岳温泉 南洲館(=トップ写真)」がある。こちらでは3カ所の源泉が楽しめ、昔から湯治場として親しまれてきた。
建物の裏手にある「八幡大地獄」からは、もくもくと蒸気が噴き上がり、まわりは蒸気で真っ白。強い硫黄臭に包まれる、まさに“秘湯”。遊歩道は整備されているが、岩場も多いので足元には気をつけたい。
「西郷さんが入ったのは源泉に近いお湯だと思います」と、オーナーの永峯周作さん。類似するという竹の湯はひりひりとした熱さが心地良い。西郷が患っていたという持病にも効いたのだろうか、通称ドロ湯と呼ばれるこちら、寒い時季には泥が沈殿する日もあり、腕などを泥パックして楽しむ客もいるそうだ。
湧き出す自然の蒸気を利用した蒸し風呂もあり、永峯さんいわく、『湯巡りをする際は「竹の湯」と「さくら湯」の真ん中に「蒸し湯」を持ってくるのが通』だとか…。
敷地内には「南洲翁遊猟之地」碑が建つ。宿に残る資料からは、気軽な鹿児島弁で地域の人たちと交わる、大らかな西郷の人柄が伝わってくる。
しかもこの日は看板ネコ「ぶーちゃん」も、わざわざ顔を出してくれた。
山の中腹、遠くの山々を眺めながら、凍るような冷たい空気を大きく吸い込むと、体中が浄化されるようだ。この仙境のような地を、西郷も狩りをしながら走り回ったのだろうか。
滞在したのは西南戦争の前年。西郷のひとときの休息に寄り添う。
栗野岳温泉 南洲館
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今回のbreakスポットは…
かくれの里 あら木
「アーモンドの町にしたい」。地域おこしの先頭に立ち、「アーモンドラーメン」を生み出した「あら木」店主の荒木國光さん。
「妻の実家である、駅前にあった昔のラーメン屋の味を再現しました」。ラーメンは全部で7種類。おにぎりには湧水米を使用する。
思い出の味にアーモンドを加えた一杯は、KADOKAWA発行のラーメン情報誌で県内ランキング1位を獲得。「憩いの場になれば」と、お店は女性でも入りやすい古民家カフェ風だ。
のれんのかかった粋な店構えで、席からは栗野岳も望める。栗野岳の中腹、町のみんなで育む「アーモンドの丘」は1年半後に実りを迎える予定だ。
かくれの里-里山の麺処と和布あそび- あら木
- 姶良郡湧水町川西1280-3[MAP]
- TEL:0995-75-4102
- 営/11:00~15:00
- 休/月、火曜
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