
西郷隆盛逗留記念碑の横に立つ石像
人里離れ、心休めた地。指宿鰻温泉…
明治6(1873)年、朝鮮への使節派遣を巡る論争に敗れた西郷隆盛は、新政府の参議職を辞めて鹿児島に戻った。その後、約1カ月間滞在したのが、指宿市山川の鰻温泉。
オオウナギが農業のための取水口をふさいだ伝説があり、平成の初期までウナギなどを養殖していた周囲約4.2kmの鰻池の畔にある温泉地で、現在は40世帯(2018年9月現在)が生活している。
集落の中心にあるのは単純硫黄泉の公衆浴場「区営鰻温泉」。西郷を癒やした湯に浸かって在りし日をしのびたい。
区営鰻温泉
- 指宿市山川成川6517[MAP]
- TEL:0993-35-0814
- 入浴料/大人:200円
★
集落を歩くと至る所で白い蒸気が立ち上る。温泉もあるが、高温の蒸気を利用したかまど「スメ」も名物のひとつで、「揚げ物以外は調理ができると聞きます。ほとんどの家庭にスメがありますよ」と、いぶすき西郷どん館の濵田裕一さん。
この恵みをもたらす噴気孔が地中にあるため、アスファルトの地面を触ると床暖房のように温かい。しとしと降り続いていた秋雨が止むと、地面や電柱がすぐに乾いた。
スメ広場[MAP]にあるスメは、観光客も利用できる。野菜や卵、ザルを持参して体験しよう!
★
温泉とウナギが好きだったからか。西郷は13匹の犬を連れて訪れ、福村市左衛門宅に滞在。このときの様子が薩摩藩士・樺山資紀の文書にある。西郷は開聞岳へウサギ狩りに出掛け、温泉に入り、鰻池の湖畔で運動したという。
西郷が滞在した福村市左衛門の宅地跡。現在は福村氏の子孫が住んでいる。すぐ近くには鰻温泉の西郷隆盛石像(=トップ写真)と逗留記念碑[MAP]も。
集落内には西郷が大切にしていた“13匹の犬”の石像が点在していて、観光スポットを案内してくれる。
いぶすき西郷どんガイドの池上幸一さんは、当時の西郷の心境は二つあったとして、「しがらみから解放されて自由に過ごそうとした」「新政府への不平不満」を挙げた。四方を山で囲まれた、かくれ里のような場所。西郷は心を休め、未来を見据えたのかもしれない。
いぶすき西郷どんガイド
- 料金/大人:500円・小中学生:300円(スメ体験・記念品込み)
- TEL:0993-22-3257[指宿市観光協会]
- HP/いぶすき西郷どんガイド
★
今回のbreakスポットは…
ぱどる食堂
鰻温泉から車で20分ほど。池田湖畔に2017年にオープンした「ぱどる食堂」は、定食、ラーメン、カレーなどを味わえる。
1日10食限定の「西郷丼」は、指宿産のごはんに、黒豚とんかつ、なんこつ煮込み、エビフライがのる“がっつり飯”。「安くてお腹いっぱいになる食堂を作るのが夢だった」と、指宿駅近くで居酒屋も営むオーナーの遠藤聡さん。
店の外観や箸袋にあるキャラクターは鰻温泉にアトリエを構えるイラストレーター・ocoboさんがデザイン。幻獣イッシーに乗った西郷どんの表情が、なんともユニークだ。
ぱどる食堂
- 指宿市池田5475[MAP]
- TEL:080-5246-5018
- 営/11:00~14:00
- 休/日曜
★