
過失割合が交通事故をめぐる紛争での争点…
交通事故においては加害者と被害者が存在し、加害者は被害者の損害について損害賠償金を支払わなければなりません。しかし、加害者には、常に損害賠償金の全額を支払う義務があるとは限りません。被害者にも落ち度がある場合がありますから、その落ち度の大きさに応じて損害賠償額が割合的に減額されます。これを過失相殺といいます。
そうすると、どの程度減額するかという過失割合が問題となり、これが交通事故をめぐる多くの紛争で争点となっています。当事者間の話し合いで解決できない場合、最終的には訴訟手続きで裁判所が過失割合を決定します。裁判所は、当事者双方にどのような落ち度があり、それが事故や損害の発生にどれくらい影響したかを考慮して、具体的な割合を決定することになります。
過失割合には基準がある
しかし、ある程度の基準がなければ、個々の裁判所ごとにバラツキが出てくることは避けられません。そこで実務上は、事故類型ごと(例えば「交差点での出合い頭の事故」など)の基準が作られています。裁判所は、この基準に基づいて基本的な過失割合を決め、そこから個々の特殊事情(加害者が飲酒していたなど)を加味して過失割合を決定します。法律上、裁判所がこの基準に従う義務はありませんが、多くのケースでは基準に従った判断がなされています。
このように裁判所が広く採用している基準があるため、訴訟前の示談交渉の段階でも、弁護士や損害保険会社は、同じ基準を参考にして話し合いをすることになります。当事者本人としてはどうしても自分の過失割合に納得ができず、交渉が難航するケースもありますが、この基準から大きくかけ離れた割合が認められるケースは少ないといえるでしょう。

画:弁護士 中村 真
過失割合の基準は、かなり細かく作られています。例えば、「交差点での出会い頭の事故」の場合、信号機や停止線の有無などで、20を超える類型ごとに過失割合が決められています。しかし、実際の交通事故ではぴったり当てはまる基準があるとは限らないため、どの基準を使うべきかを決めるのは、実はそれほど簡単ではありません。
さらに、「交差点での出会い頭の事故」などでは、お互いが「相手が信号無視をした」などと主張する場合もあります。そうなると、「どちらに信号無視があったか」という前提問題を解決しなければ、そもそも基本的な過失割合を決めることはできません。しかし、この点を証明することは、一般的には困難です。
そのため、最近では、交通事故に備えてドライブレコーダー(車載カメラ)を搭載している車を見かけることが多くなりました。事故の状況を客観的に記録することができるので、証拠としての価値は高いといえます。常に自分に有利な証拠になるとは限りませんが、紛争の長期化を防ぐ効果は高く、広く普及することが期待されます。
解説してくれた人

弁護士法人あさひ法律事務所鹿児島事務所
牧瀬 祥一郎 先生
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